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■新社長はトヨタの中南米本部長
第三者委員会の調査により、型式指定における認証業務において1989年から170を超える不正を働いていたことが明らかとなったダイハツ工業(以下、ダイハツ)。
その後、国土交通省による立入検査で、さらなる不正が発覚するなど、自浄が期待できない状況となっていました。
ご存じのように、ダイハツはトヨタ自動車(以下、トヨタ)の100%子会社です。ダイハツを生まれ変わらせるのは、ある意味でトヨタの責務といえます。
そして2024年2月13日、トヨタの佐藤恒治社長により、ダイハツの新体制が発表されました。
3月1日からの新体制では、これまでのトップだった松林 淳代表取締役会長と奥平総一郎代表取締役社長をはじめ、5名の取締役が退任。新社長として井上雅宏氏が就くことになります。井上氏の現職はトヨタ中南米本部長です。
●「軽自動車」に軸を置いた会社となる
新体制の発表に合わせて、トヨタの佐藤社長はダイハツの未来について以下のように発言しています。
ダイハツの原点は、「国民車」である軽自動車など小型車でお客様の暮らしをお支えすることです。
DNGA(Daihatsu New Global Architecture)の取り組みをはじめ、良品廉価な車づくりは本来のダイハツの強みであり、その原点に立ち戻り、会社をつくり変える覚悟で、ダイハツらしさを取り戻してまいりたいと考えております。
その考えのもと、改めて、ダイハツの事業領域を「軽自動車」に軸を置いた会社と定め、海外事業については、企画・開発・生産をトヨタからの委託に変更する方向で、詳細の検討を進めてまいります。
ダイハツが不正に手を染めた原因として、身の丈を超えた開発量だったという指摘もあります。今後は、軽自動車以外はトヨタが開発を行い、ダイハツは生産委託を受ける立場にすることで正しく再生させるという方針というわけです。
軽自動車に専念するということは、国内向けのドメスティック企業になると捉えることができます。その意味では、トヨタにおいて主に新興国に関する海外事業を担当してきたという井上新社長の知見やリーダーシップがどのように活かされるのか、大いに注目といえるでしょう。国内事業と距離を置いていたからこそ、ダイハツを明るく正しい未来へ導けることが期待されているのかもしれません。
●CJPTからは除名ではなく「脱退」
親会社のトヨタから新社長が送り込まれるという大筋においては、これまでと変わらないという見方もできます。
不正の要因として、親会社から一時的にやって来た管理職とプロパー社員の風通しが悪いことで、情報共有やコミュニケーション不全になっていたのでは?という識者の指摘や報道も多く見かけます。
しかしながら、大手メディアは不正のあった企業において『首のすげ替え』を求めるものです。逆に言えば、代表取締役社長の交代を発表したことで大手メディアは、この問題についての注目度を下げるでしょう。そうして報道ベースではダイハツの不正は風化していくというのが、予想される近未来といえます。
同じトヨタグループの日野自動車が認証関連の不正を行っていた際には、トヨタ・いすゞ・スズキなどと共同出資したCJPT(次世代商用車に関する技術開発などを担う組織)から除名処分となりましたが、ダイハツは自主的に脱退を申し入れ、認められたということです。日野自動車も気がつけばCJPTに復帰していますので、ダイハツから不正のイメージが薄れてきたタイミングで復帰するというのも容易に予想されます。
ちなみに、CJPTを脱退しても、トヨタやスズキと共同で進めていた軽商用EV(ハイゼットカーゴがベース車)プロジェクトについては継続するということですので、こちらも大筋では変わらないといえるのかもしれません。