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■パワーアップと軽量化でランエボVIIIをブラッシュアップ
2004(平成16)年2月13日、三菱自動車はランサーエボリューションの8代目「ランエボVIII」の高性能バージョン「ランエボVIII MR」の発売を始めました。ランエボVIIIをベースにトルクを上げ、軽量化や4WDの進化によってさらなる走りを極めたのが、ランエボVIII MRです。
●高性能ターボと進化版スーパーAYCで走りを追求したランエボVIII
2001年に、ベースのランサーがモデルチェンジして「ランサーセディア」となったため、ランエボも第3ステージの7代目「ランエボVII」へ移行しました。この頃の三菱は、経営状況が悪化してレースに十分な資金を投入する余裕がなく、新しいホモロゲーションにうまく対応できなかったこともあり、結局ランエボのWRC参戦はランエボVII以降実現しませんでした。
2004年に登場した「ランエボVIII」の特徴は、チューンナップによって最高出力280PS/最大トルク40kgmに向上させた2.0L直4(4G63型)ターボエンジンと、進化版スーパーAYCの採用です。一方、デザインも刷新され、フロント中央に富士山型の突起を設けて三菱マークを配する「ブーレイマスク」が採用されました。
2000年当時、経営不振に陥っていた三菱は、ダイムラー・クライスラーと提携してダイムラーの傘下に収まっていました。その時、デザインのトップに任命されたオリビエ・ブーレイがデザインしたのが、ブーレイマスクだったのです。
●三菱の高性能車の証であるMRを付けたランエボVIII MR登場
ランエボVIII MRの「MR」は、「Mitsubishi Racing」の略で、初代「コルトギャランGTO」や「ランサー」、「GTO」など三菱の高性能スポーツカーのトップモデルに命名してきた名称です。
ランエボVIIIをベースにさらにエンジンのパワーアップを図ったランエボVIII MRは、2.0L直4 DOHCエンジンのタービンノズル径の拡大やウェストゲートバルブの増設などによって、2.0Lトップラスの最大トルク40.8kgm/3500rpmを達成。その他にも、アルミ製ルーフパネルやドアの軽量化によって約10kgの軽量化を実現、足回りについてもビルシュタイン製の専用ショックアブソーバーが採用されました。
車両価格は、RSが327.5万円、トップグレードのGSRが339.8万円、ベースのランエボVIIIより約10万円高く設定。完成度を高めたランエボVIII MRですが、三菱がワークスチームとしてWRCに参戦しなくなったこととともにランエボ自体の人気に陰りが見え始め、またブーレイマスクが不評だったことなどにより、人気の歴代ランエボのなかでは影が薄い存在でした。
●その後のランエボと終焉
その後、2005年に登場した9代目「ランエボIX」は、エンジンにMIVEC(可変動弁機構)を初採用、翌年にはVIII同様MRが設定されました。
そして2007年、ついに最後のランエボXがデビュー。従来の4G63エンジンから新たに4B11エンジンへと換装され、最高出力はついに300PSに到達。組み合わされるミッションも従来の3ペダルMTに加え、2ペダルMTのツインクラッチSSTが採用されました。
2015年には、限定1000台で販売された特別仕様車「ランエボ・ファイナルエディション」が登場。Xと同一エンジンながらNa封入排気弁の採用などのチューニングによって、最高出力313PS/最大トルク43.7kgmにパワーアップ。また外観は、フロントグリルの周囲を取り囲むモールがダーククロムメッキに変更されているのが特徴です。
まさしく最後となったファイナルエディッションは、販売価格約430万円でしたが、あっという間に完売となり、1000万円以上で取引された個体も出現するほどの人気を博しました。
ランエボは、2016年に多くのファンに惜しまれながら、23年の栄光の歴史に幕を下ろしました。スバル「インプレッサ」もWRCから撤退したように、モータースポーツ分野にあてられる資金が充分とは言えない自動車メーカーも少なくはないでしょうけれども、ドラマを創り出すスポーツシーンに登場する車も、もっと増えてもらいたいものです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)