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■エンジンと4WDの進化によって戦闘力を上げた第8世代
2003(平成15)年1月31日、三菱自動車の8代目「ランサーエボリューション(以下、略称ランエボ)VIII」の発売が始まりました。
1992年の「ランエボI」から約10年の時を経て登場したランエボVIIIは、エンジンと4WDの進化によって戦闘力が強化されましたが、残念ながらWRC(世界ラリー選手権)参戦は叶いませんでした。
●ランエボVIII登場までの歴史
ランエボは、1992年9月に初代「ランエボI」が誕生し、最大の武器である高性能の4G63型ターボエンジンと優れた走破性を誇る4WDを搭載。1993年からWRCグループAに参戦し、1995年のスウェディッシュラリーの初優勝を皮切りに、1990年代後半~2000年代初期にはスバル「インプレッサWRX」とともにWRCの舞台で大活躍し、その名を世界に轟かせました。
・第1ステージ(I、II、III)
初代「ランエボI」の搭載エンジンは、最高出力250P/最大トルク31.5kgmを発揮する2.0L直4 DOHC(4G63)インタークーラー付ターボで、トランスミッションは5MT、駆動方式はVCU(ビスカスカップリング)付センターデフ式のフルタイム4WDを装備。1994年に、ホイールベースを100mm拡大した「ランエボII」、1995年には空力性能を向上させた「ランエボIII」に移行。この時点で最高出力は270PSに向上しました。
・第2ステージ(IV、V、VI、TME)
1996年、ベースであるランサーのフルモデルチェンジに対応して「ランエボIV」が登場。エンジンは、パワーアップして自主規制値280PSに達し、エンジンを左右逆転させて搭載、初めてAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を採用。
1999年には、ワイドボディの3ナンバー化した「ランエボV」、1999年には2段リアウイングなど空力特性の改善と冷却性能を向上させた「ランエボVI」に移行。2000年には、4年連続ドライバーズタイトルを獲得したトミー・マキネンの偉業を記念した「トミーマキネンエディション(TME)」も発売されました。
・第3ステージ(VII、VIII、その後もIX、X:第4ステージと続く)
2001年に、ランサーがモデルチェンジして「ランサーセディア」になったため、ランエボも第3ステージの「ランエボVII」へ移行し、翌2002年に初のAT車「GT-A」が追加されました。
そして、2003年に「ランエボVIII」が登場したのです。
●エンジンのハイチューンとスーパーAYCで走りを極めた8代目
ランエボVIIIの特徴は、チューンナップによって最高出力280PS/最大トルク40kgmに向上させた2.0L直4(4G63型)ターボエンジンと、進化版スーパーAYCの採用です。
2000年当時、経営不振に陥っていた三菱は、ダイムラー・クライスラーと提携してダイムラーの傘下に収まっていました。その時、デザインのトップに任命されたのが、オリビエ・ブーレイです。彼は、フロント中央に富士山型の突起を設け、三菱マークを配する通称「ブーレイ顔」をランエボVIIIに採用したのです。
車両価格は、RSが316万円、トップグレードのGSRが329.8万円。ちなみに当時の大卒の初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)でした。
●曲がりにくい4WDの旋回性能を向上させるスーパーAYC
AYCは、デフの油圧を電子制御することで、曲がりにくい4WDの旋回性能とトラクション性能を向上させる電子制御デフです。
最大の特徴は、内輪の駆動力を、外輪側に移すことで外側のタイヤを増速させる機構が組み込まれていること。左右輪に大きな回転差をつけることでヨーを制御し、高いコーナリングスピードが実現できるのです。
そして、ランエボVIIIから採用されたスーパーAYCは、AYCの性能をさらに高めたもの。プロペラシャフトの入力部を一般的なベベルギアデフから遊星ギアに変更し、これによって伝達可能トルクを増大。より大きな駆動力を左右輪に伝達できるため、アンダーステアを低減し、従来のAYC以上に安定した旋回が可能となりました。
当時の三菱は経営再建中だったため、ランエボVII以降はWRCに参戦ですることはなく、戦闘力をアップしたランエボVIIIもWRCの舞台でその実力を発揮することはできませんでした。
その後、ランエボIX、Xと続きましたが、結局10代目をもって多くのファンに惜しまれながら終焉を迎えました。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)