アプリリアの冒険バイク「トゥアレグ660」が過酷な砂漠ラリー「アフリカ・エコレース」でデビューウィン!

■「パリダカ」を彷彿とさせる過酷なラリーで勝利

イタリアのバイクブランド「アプリリア」のレース部門、アプリリアレーシングは、アフリカの広大な砂漠地帯を約6000km走破する過酷なラリー競技「アフリカ・エコレース」の2024年大会に初挑戦。

デビューウインを果たしたアプリリアのワークスチーム
デビューウインを果たしたアプリリアのワークスチーム

アドベンチャーモデルの「トゥアレグ660」を駆るヤコポ・チェルッティ選手が、15日間のレースで常にトップを快走し、見事に総合優勝を果たしたことを明かにしました。

アフリカを舞台とするラリー競技には、1970年代から現在も続く「ダカールラリー」が有名。それに対し、このアフリカ・エコレースでは、かつてダカールラリーが行っていた伝説のルートに近い行程を走ることが特徴です。

まさに、世界一過酷なイベントとして名高いダカールラリーと同様のハードなレースを、トゥアレグ660とチェルッティ選手はデビュー戦にも関わらず見事に制したのです。

●アフリカ・エコレースとは?

今回、アプリリアが初参戦したアフリカ・エコレースは、2009年より毎年開催されているラリーレイド大会です。

由来は、「パリダカ」の愛称で親しまれていた「パリ・ダカール・ラリー(現在のダカールラリー)」。フランスのパリをスタート後、アフリカ大陸のサハラ砂漠を走破し、セネガル共和国の⾸都ダカールでゴール。砂漠から泥濘(でいねい)地、山岳地帯まで、あらゆる路面を走破することで、世界一過酷なイベントといわれた競技です。

1990年代初頭には、日本でも民放テレビなどで放映されていたので、当時を知るモータースポーツファンには、懐かしく思う人も多いでしょう。

2024年アフリカ・エコ・レースで総合優勝を果たしたアプリリア・トゥアレグ660
2024年アフリカ・エコ・レースで総合優勝を果たしたアプリリア・トゥアレグ660

そんなパリダカですが、2008年には開催国の政情不安により開催中止に。しかも、その後、南米に開催地を変更(現在は中東・サウジアラビアで開催)。これに対し「パリダカ」ファンやかつてのラリー開催国からは復活を望む声が続出。それらに応えて始まったのが、アフリカ・エコレースだといいます。

2024年大会の走行ルートは、2023年12月30日に欧州のモナコをスタートし、その後アフリカ大陸へ移動。モロッコ、西サハラ、モーリタニアを経由し、2024年1月14日にセネガルのダカールでゴールするというもの。かつてのパリダカを彷彿とさせるルートを使い、15日間で約6000kmを走破するという意味では、こちらも相当に過酷なラリーだといえます。

ちなみに、大会名に「エコ」という名称がありますが、これは、「環境面と安全面に対して配慮する」という意味。燃費を競う競技とは違うので念のため。

●トゥアレグ660は最新のアドベンチャーモデル

そんなアフリカ・エコレースの2輪クラスに初参戦し、見事に総合優勝を果たしたのが、トゥアレグ660をベースとしたレーシングマシンと、ファクトリーライダーのヤコポ・チェルッティ選手です。

アリーマシンのベースとなった市販モデルのトゥアレグ660
ラリーマシンのベースとなった市販モデルのトゥアレグ660

日本では、2022年にデビューしたアドベンチャーモデルがトゥアレグ660。アプリリアが1985年に発表し、オフロード分野で伝説となったバイク「トゥアレグ」の名前を継承したモデルです。

名前の由来は、サハラ砂漠の住人であるトゥアレグ族。「自由」を愛する彼らの文化を投影したモデルとして、当時高い評価を受けたといいます。

そうした伝統のバイクが持つコンセプトを受け継ぎつつ、現代のテクノロジーを投入したのがトゥアレグ660です。

心臓部となるエンジンには、スーパースポーツ「RS660」などにも採用されている排気量659ccの2気筒エンジンを搭載。最高出力はRS660の100PS/1万500rpmに対し、80PS/9250rpmとやや抑えていますが、その分、トルクを増大。RS660の67.0N・m(6.83kgf-m)/8500rpmに対し、6500rpmという、より低い回転数で70N・m(7.13kgf-m)を発揮します。

659ccの2気筒エンジンを搭載(写真は市販モデル)
659ccの2気筒エンジンを搭載(写真は市販モデル)

これにより、低速域から扱いやすく、中〜高速域での心地よい加速感も実現。車両重量204kgという軽い車体と相まって、オンロードからオフロードまで幅広いシーンで走りを楽しめるバイクに仕上がっているといいます。

また、独自の電子制御パッケージ「APRC(アプリリア パフォーマンス ライド コントロール)」を搭載していることも注目です。

4段階に調整可能な「ATC(アプリリア トラクションコントロール)」や、スロットルを閉じた際のエンジンブレーキを制御する「AEB(アプリリア エンジンブレーキ)」などを採用。高速道路などでアクセル操作なしで設定速度を維持する「ACC(アプリリア クルーズコントロール)」なども装備することで、長距離走行での高い安定性や快適性を実現しています。

●約6000km・15日間のレースで完全勝利

そんなトゥアレグ660をベースに、アプリリア レーシングのファクトリーで開発を行ったのが、今回の参戦マシン。

左がチェルッティ選手、右はモンタナ―リ選手
左がチェルッティ選手、右はモンタナ―リ選手

市販車からどのようなモディファイが施されたのかは明らかになっていませんが、前述の通り、今回のラリーでは、チェルッティ選手が初日から常にトップを快走。

ライダーの技量に加え、マシンのポテンシャルや信頼性もかなり高いことがうかがえます。

ちなみに、今回のアフリカ・エコレースでアプリリアは、総合優勝を果たしたチェルッティ選手のほかに、フランチェスコ・モンタナーリ選手も投入。同じくトゥアレグ660を駆り、総合8位に入る活躍をみせています。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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