■FRクーペとして愛され続けた歴史に幕を下ろした「シルビア」
2002(平成14)年1月24日、日産自動車は2ドアクーペ「シルビア」を、2000年度排出ガス規制の生産猶予期限が切れる8月初旬に生産中止する、と発表しました。
1965年初代デビューから始まったシルビア。1988年にデビューした5代目シルビアでは、デートカーとして若者から圧倒的な人気を獲得してもいました。代々が展開してきた、若者たちに憧れを抱かせる存在感のアピールも、この時の7代目で終わりを迎えます。
●シルビア7世代37年の歴史を振り返る
シルビアは、1965年に高級スペシャリティカーとしてデビュー、その後1980年代後半のバブル期にはデートカー、1990年代後半には希少となった走り自慢のFRクーペとして、若者から熱い支持を受けました。
37年に渡る歴代シルビアの歴史を簡単に振り返ってみましょう。
・初代CSP311型(1965年~1968年):走る宝石と称された流麗なスタイリング
初代シルビアは、最先端の流体力学を取り入れた、鋭角的に削ぎ落した多面で形成された“クリスプカット”の美しいボディラインが特徴でした。
一方で、その流麗なスタイリングを実現するために、ボディの多くの部分を熟練工による手叩きで仕上げたために高額となり、販売台数は約4年で554台にとどまりました。
・2代目S10型(1975年~1979年):北米重視のアメ車風フォルム
7年のブランクを経て登場した2代目は、直線的なフォルムの初代に対して、曲線を多用した躍動感のある米国を意識したアメ車風フォルムに変貌。
外観の大胆な変貌の割には、メカニズムに先進性が感じられず、際立った特徴がアピールできず、元祖スペシャルティカーの対抗馬になれず、僅か3年半でモデルチェンジしました。
・3代目S110型(1979年~1983年):流行りの角型4灯ヘッドライトとセンターピラーレス
3代目シルビアは、走りを重視したスペシャルティカーに相応しい、直線基調のウェッジシェイプを採用。低いノーズラインと角目4灯のフロントマスク、傾斜したフロントウインドウ、リアのオペラウインドウが特徴的でした。
デートの際に女性からも好まれる“デートカー”の元祖的なモデルとして人気を獲得しました。
・4代目S12型(1983年~1988年):リトラクタブルヘッドライトの白い稲妻
4代目は、低いノーズにハイデッキのウェッジスタイルは先代を継承しましたが、フロントマスクは先代の角型4灯からリトラクタブルヘッドライトに変更。
パワフルな走りは若者から人気を獲得しましたが、当時はライバルも多く、やや高額であったこともあり、販売は伸び悩みました。
・5代目S13型(1988年~1993年):美しさと走りで魅了して大ヒット、歴代最多販売台数を記録
シルビアの中で最も人気を獲得した5代目は、先代までの直線基調のイメージから一転、リトラクタブルヘッドランプを止め、曲線を取り入れたワイド&ローの流麗なスタイリングに変更。4WSなどの先進技術を搭載し、ハイパワーのエンジンを搭載したFRスポーツの走りは、FFが主流になりつつある中、際立つ存在感がありました。
5代目は、デートカーを代表する車として、またそのスポーティな走りから大ヒット、走り好きの人たちからは令和の今現在でも人気があり、中古車市場では500万円超の個体もあるそうです。
・6代目S14型(1993年~1998年):シルビア史上、唯一の全車3ナンバーボディに
6代目の特徴は、シルビア史上初めて「3ナンバーボディ」となったこと。1989年の税制改正によって、自動車税の税額が排気量のみで決まるようになったこと。また、バブル経済の勢いもあり、シルビアもその流れに乗った形となったのです。ただし、市場ではRVブームが到来し、先代のようなヒットモデルとはいきませんでした。
・7代目S15型(1999年~2002年):走りのシルビアをアピールした最後のシルビア
最後のシルビアとなった7代目の特徴は、再び5ナンバーボディとなり、シャープなスタイリングとともに、FRの楽しさを徹底的に追求したことです。エレガントさよりもスポーティであることを重視し、本格派の走りのスポーツクーペを印象付けた最後のシルビア。
これにてシルビアの歴史は終焉を迎えたのです。
2000年に入ると、若者の車離れが顕著になり、特にスポーツモデルは冬の時代に突入。大ヒットした5代目以降も「走りのシルビア」の真価を見せましたが、結局時代の波に翻弄されてしまったのかもしれません。
そんなシルビアですが、もしかすると年内(2024年)あるいは来年に、EVシルビアとして復活、との噂も流れています。楽しみに待ちましょう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)