ホンダがEV時代の新「H」マークを発表。革新の中に伝統も感じる【週刊クルマのミライ】

■EV時代にも低床ミニバンコンセプトは有効だ!

次世代EVコンセプト「SPACE‐HUB」はEVとしては珍しいミニバンフォルム。オデッセイで乗用ミニバン市場を開拓したホンダだからこそ説得力がある。
次世代EVコンセプト「SPACE‐HUB」はEVとしては珍しいミニバンフォルム。オデッセイで乗用ミニバン市場を開拓したホンダだからこそ説得力がある。

年始にラスベガスで開催される「CES」、かつては家電の見本市といった表現をされることも多かったのですが、最近では自動運転やEVなど、自動車関連の重大発表が行われるショーとして認識されているかもしれません。

そんなCES 2024において、ホンダが2026年よりグローバル市場への投入を開始する新たなEVシリーズ「Honda 0(ゼロ)」と、同コンセプトモデルである「SALOON(サルーン)」「SPACE-HUB(スペース ハブ)」を発表しました。

なにより注目したいのは、次世代EV向けの新「Hマーク」を世界初公開したことです。

新しいHマークと次世代EVのコンセプトモデルはラスベガスで開催中のCESにて行われた。
新しいHマークと次世代EVのコンセプトモデルはラスベガスで開催中のCESにて行われた。

Honda 0シリーズは新たな開発アプローチ「Thin, Light, and Wise(シン ライト アンド ワイズ)」を掲げています。日本語で表記すると「薄い、軽い、賢い」となりますが、まさに次世代EVに欠かせないキーワードであることがわかります。

床下にバッテリーを積むことが多いEVは、ボディが厚ぼったくなりがちです。SUVムーブメントは、そうしたネガを隠してくれる点では都合がいいのですが、いつまでもSUVブームが続くとは限りません。未来に向けて薄いEVを作る技術は必要といえます。

また、EVにおいて航続距離を稼ごうと思うと、最終的にはバッテリー搭載量を増やすことになり、車両重量が増加しがちです。重いものを運ぶのは非効率的ですから、電費についても不利になってしまうというジレンマがあります。

●新グローバルEV「Honda 0」は呪縛を解き放つか

自動運転時代を意識させるスペース効率重視のパッケージが印象的だ。
自動運転時代を意識させるスペース効率重視のパッケージが印象的だ。

賢いというキーワードから想像するのは、自動運転テクノロジーでしょう。世界初の自動運転レベル3を量産・市販したホンダには、そうした部分での期待もあります。

実際、2026年からグローバル展開する予定の「Honda 0」シリーズにおいて、2020年代後半には自動運転機能を搭載するということも今回、発表されました。具体的には、現在は高速道路に限定されるハンズオフ機能を、一般道でも使えるよう進化させるということです。

Thin, Light, and Wise(薄・軽・賢)を体現する、Honda 0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。
Thin, Light, and Wise(薄・軽・賢)を体現する、Honda 0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。

次世代EVにおいてはステア・バイ・ワイヤを採用するということですが、ステアリングホイールと操舵メカニズムが機械的に分離しているバイ・ワイヤ化は、自動運転とマニュアル運転を行き来する車には必須といえます。

Honda 0シリーズは、自動運転テクノロジーを搭載したゼロエミッションのEVという未来の車となるだけでなく、従来からの自動車ファンがホンダというブランドに持っている、ドライビングの楽しみというイメージも満足させてくれるEVになることが期待できるのです。

●ヘリテージも感じさせる新HマークはEV専用となる

ブランドの顔である新エンブレムと次世代EVを発表した三部敏弘社長。中興の祖と呼ばれることになるのだろうか。
ブランドの顔である新エンブレムと次世代EVを発表した三部敏弘社長。中興の祖と呼ばれることになるのだろうか。

ただし、筆者個人の印象としては、次世代EVにおいてはホンダが培ってきたイメージを払拭する必要もあると感じています。いつまでもスポーツドライビングやモータースポーツをキーワードに語られるブランドであっては、ゼロエミッションや自動運転の時代において、ある種の足かせになると考えているからです。

今回、ホンダが次世代EVのエンブレムとして新しいHマークを発表したのは、そうした過去の呪縛から解放されることも意識しているのではないでしょうか。

ホンダの四輪事業においては、2040年までに製品ラインナップをEVとFCEV(燃料電池車)だけにするという目標も掲げています。

新しいHマークから、ホンダ初の四輪車であるT360を連想するのは筆者だけだろうか?
新しいHマークから、ホンダ初の四輪車であるT360を連想するのは筆者だけだろうか?

新Hマークは次世代EV専用ということですが、計画通りに進めば2040年までにはエンジン搭載車は消えてしまい、すべてのホンダ車は新Hマークに入れ替わるということになるわけです。EV限定の話ではなく、新生ホンダのシンボルとなるのが新しいHマークなのです。

思えば、ホンダは青山にある(実質的な)本社ビルを2025年に解体、2030年度までにグローバル本社機能を有する新しいビルとして生まれ変わらせることを発表しています。こうしたタイミングでのリブランディングを意識しているのではないでしょうか。

もっとも、新Hマークを見た第一印象は、「どこかで見た気がするぞ」というものでした。これまた筆者の個人的な思い込みかもしれませんが、新しいマークはホンダ四輪車のルーツであるT360とのつながりを感じます。

決して過去と決別するわけではなく、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追い求める…というホンダの企業姿勢を、新しいHマークは示しているというわけです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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