新型ホンダN-BOX/N-BOXカスタムの走りをチェック。乗り出し200万円から250万円超の価値はある?

■最上級仕様の4WDだと乗り出し300万円級!?

3代目にスイッチしたホンダの新型N-BOXは、プラットフォームやパワートレーンを流用しながらもまさに熟成の極みといえるほどの高い完成度を走りの面で見せてくれます。

新型N-BOXの走行シーン。写真は基準車
新型N-BOXの走行シーン。写真は基準車

N-BOXも含めてホンダは、スズキや日産/三菱勢のようにマイルドハイブリッドを軽自動車には搭載していません。新型になりノーマル(標準)仕様はNAのみとなり、ターボは廃止されています。

ホンダN-BOXカスタムの走行シーン
ホンダN-BOXカスタムの走行シーン

NAエンジンのスペックは、最高出力58PS/7300rpm・最大トルク65Nm/4800rpm。

ホンダ自慢の可変バルブタイミング・リフト機構であるVTECの採用に加えて、制御の見直しによりスムーズな走りが可能になっています。

マイルドハイブリッドがないため、アイドリングストップからのエンジン再始動時には、若干音と振動が高まり、発進もワンテンポ遅れるものの、慣れてしまえば十分に許容範囲といえそう。発進時から力強く、首都高速に場所を移しても容易に流れに乗ることができます。

基準車はNAエンジンのみで、カスタムはNAとターボを設定する
基準車はNAエンジンのみで、カスタムはNAとターボを設定する

64PS/6000rpm・104Nm/2600rpmに達するターボと比べると、NAエンジンは加速時の余力や高速域の伸びではもちろんおよびません。しかし、NAエンジンであっても加速が非力で、高速道路に乗るのが怖いということはありません。

とはいえ、ターボ車と同じ速度域まで加速し、巡航するにはアクセルをより大きく踏み込む必要があるため、エンジン音は大きくなります。

高速道路をより静かに巡航したいのであれば、カスタムに設定されているターボを選びたいところ。高速道路での合流や追い越し時でも余力を持ってこなしてくれます。逆に言えば、一般道が中心で時々、高速道路を使う程度であれば、NAエンジン車を指名しても十分でしょう。

また、新型N-BOXは、天井のルーフライニングの基材構成を変更し、カスタムは防音性を向上。さらに、フロアカーペットの遮音層フィルムを追加することで、高速道路での静粛性を高めています。新型スズキ・スペーシアや三菱デリカミニなどと比べても高速域でのロードノイズ、風切り音などは明らかに抑えられていて、Aセグメントのスモールカーを超えた静かさを、大開口&背高系の軽スーパーハイトワゴンで実現しているのは立派です。

14インチを履く基準車は、よりソフトな足まわり
14インチを履く基準車は、よりソフトな足まわり

さらに、乗り心地も背の高さを感じさせない仕立ての良さで、ライバルと比べてもソフトでしかもフラットライド感を実現しています。タウンスピードでの細かな振動をよくいなしていますし、後席に座って高速道路の目地段差を踏み越える際も音や振動をかなり抑えています。

かつてのホンダ車は、新型のデビュー時は足が硬い車種が多く、マイナーチェンジなどで改善されていくケースもよく見られました。ですが、プラットフォームを流用しつつ熟成を重ねた新型N-BOXは、軽スーパーハイトワゴンでもトップクラスの乗り味を堪能できます。

15インチを履くターボ車は、14インチよりも硬めだが、足はよりしっかりしている
15インチを履くターボ車は、14インチよりも硬めだが、足はよりしっかりしている

それでいながら、操舵に対して車の向きが素直に変わる印象で、少し手応えのあるパワステも含めて操縦安定性の高さもホンダ車に期待するレベルにあります。

155/65R14タイヤを履くNA仕様と、165/55R15を履くターボ車では、後者の方がロールも小さめで、操縦安定性では一歩上。乗り心地もターボ車の方が硬めではありますが、ハンドリングと快適性のバランスの良さが光ります。

ホンダN-BOXのインパネ
ホンダN-BOXのインパネ

走りの面では軽の王者にふさわしい完成度を披露してくれる新型N-BOX。価格設定はライバルよりも強気で、高いと感じる方もいるでしょう。身内のフィットも食いかねない新型N-BOXは、軽規格であってもコンパクトカーを凌駕する中身を与えられ、軽スーパーハイトワゴンのカテゴリーにいながらも、より上級志向に応える戦略をとったと言えそうです。

●N-BOX価格帯:164万8900円~236万2800円

(文・塚田勝弘/写真・小林和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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