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■2030年の電動二輪販売は400万台が目標
若干旧聞に付す話題となりますが、2023年11月にホンダが「電動二輪事業」のロードマップ説明会を開催しています。
ご存知のように、ホンダは「2050年カーボンニュートラル達成」を目指しています。これはホンダのリリースするモビリティに限った話ではなく、工場を含めた全社的な目標です。
すなわち、2050年より前の段階でホンダの主力商品である陸上モビリティの電動化・ゼロエミッション化は完了していなければいけません。
四輪については、2040年までにEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)の比率をグローバルで100%にするという目標を掲げています。
では、ホンダの主力事業といえる二輪部門の電動化は、どのような目標を掲げているのでしょうか。2022年9月の発表では「2030年におけるグローバルで電動二輪車350万台を販売する」という目標でした。しかし、冒頭で記した2023年11月の電動二輪事業説明会では、2030年のグローバル販売目標を400万台(年間)へと大きく引き上げました。
目標の引き上げは、電動二輪車を大量生産する目途が立ったことを意味しています。
●10年で5000億円を投資、車体コストを半分にする
2030年に電動二輪車を400万台販売するためには「売れるモデル」を作らなければいけません。顧客目線でいえば「買える価格帯の電動二輪」がリリースされなければ、買いたくても買えないのです。
そのために、ホンダは現在ラインナップしているバッテリー交換タイプの電動二輪車と比べて製造コストを半減することを目指していくということです。そのためのキーワードが「モジュール化」です。
今回発表された『モジュールプラットフォーム』という考え方は、バッテリー・パワーユニット・車体という機能単位によって設計を分割することで、容易に組み合わせられるようにするというもの。これにより、電動二輪車の開発コストを抑えながら、豊富なバリエーションが期待できるというわけです。
従来のエンジンで走る二輪車においても、ホンダはプラットフォームを上手に共用することで様々なバリエーションのモデルを展開するノウハウに長けていますが、電動二輪車においてはそうした知見をより活かすことでコストダウンを図るということも、2030年400万台という目標実現の手法となるでしょう。
2027年以降に稼働予定という電動二輪専用工場は、もちろんモジュールプラットフォーム技術を前提としてのもので、一工場あたりの投資額は約500億円、生産能力は100万台/年を想定しています。
2021年から二輪電動化に向けた大型投資は始まっていますが、2030年までの累計投資額は約5000億円に達する見込みということです。投資額がすべて生産設備向けというわけではありませんが、2030年までには累計30モデルの電動二輪車を市場投入するという目標は、現実味のある話なのです。
●バッテリー交換式にこだわらずプラグインタイプも開発
電動モビリティの大量生産においては、バッテリーの調達も重要です。
現時点で、ホンダの電動二輪はバッテリー交換タイプが主であり、バッテリーには三元系リチウムイオン電池を採用していますが、それ以外の選択肢がないわけではありません。
バッテリーについては、リン酸鉄リチウムイオン電池も進み、2025年には量産モデルに搭載される予定です。高いエネルギー密度や優れた安全性が期待される全個体電池の開発も進んでいます。
さらに、バッテリー交換型にこだわることなく、車体に充電ケーブルをつなぐプラグイン方式の採用も視野に入れているといいます。
ファン領域のスポーツモデルでは、バッテリーを最適配置してパフォーマンスにつなげるための設計自由度も、プラグイン充電であれば高めることができるでしょう。近距離ユースメインのモビリティであれば、交換式バッテリーよりも小さい電力量のバッテリーとすることで車体の小型化も可能になるかもしれません。
2020年代後半に向け、電動化を加速させるホンダの二輪ラインナップの変化に注目です。