軽クロスオーバーSUVのパイオニアとなったスズキ「ハスラー」発表。4WDでも比較的安価な116.7万~157.6万円を設定【今日は何の日?12月24日】

■東京モーターショーで衝撃的なデビューを飾ったハスラー

2013年の東京モーターショーで発表されたハスラー。丸目のキュートなスタイリングが人気となったクロスオーバーSUV
2013年の東京モーターショーで発表されたハスラー。丸目のキュートなスタイリングが人気となったクロスオーバーSUV

2013(平成25)年12月24日、スズキが東京モーターショーで新型車「ハスラー」を発表、発売は翌年の1月8日から始まりました。

ハスラーは、「ジムニー」のオフロード走破性と「ワゴンR」の居住性を融合した軽のクロスオーバーSUVとして、大ヒットモデルとなりました。

●「ジムニー」のオフロード性能と「ワゴンR」の居住性を融合したハスラー

ハスラーのコンセプトは、「ジムニー」のオフロード性能と「ワゴンR」の居住性を融合させ、どこでも気軽に楽しく走れる実用性の高い軽自動車とすることでした。

1970年にデビューした初代ジムニー
1970年にデビューした初代ジムニー

1970年にデビューしたジムニーは、ラダーフレームや頑丈な前後リジットアクスルを備えた本格的な4輪駆動システムを採用。軽自動車ながら本格的なオフロード走破性を実現した唯一無二の軽クロカン車として、長く人気を誇っています。

1993年にデビュー、ハイトワゴンの元祖初代ワゴンR
1993年にデビュー、ハイトワゴンの元祖初代ワゴンR

一方、1993年にデビューしたワゴンRは、狭い軽自動車というイメージを払拭する背の高いハイトワゴンという新しいジャンルを開拓。現在もハイトワゴンとさらに車高を上げたスーパーハイトワゴンは、軽乗用車の大半を占め、軽自動車のスタンダードになっています。

この2つの人気モデルの特徴を融合させることで、さらに新しいジャンルとしてハスラーが誕生したのです。

●軽クロスオーバーという新しい市場を開拓して大ヒット

東京モーターショーでお披露目されたハスラーは、軽のクロスオーバーSUVとして大きな注目を集め、発売前から大人気となります。

オレンジで統一された曲線基調のハスラーの運転席まわり
オレンジで統一された曲線基調のハスラーの運転席まわり

ベースのワゴンRよりもルーフが長いため、ミニバンとSUVの両方の雰囲気を併せ持つ、まさしくクロスオーバーです。インテリアも、ボディカラーに対応して、オレンジと白の2色が用意され、エアコンの吹き出し口やメーターなども視覚的に楽しいデザインが採用されました。

パワートレインは、660cc直3 DOHCのNA(無過給)エンジンおよびターボエンジンの2種と、CVTおよび5MTの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDを用意。また、スズキが展開している減速エネルギー回生システム“エネチャージ”と“アイドルストップ”が装備され、優れた燃費性能もアピールポイントでした。

車両価格104.895万~145.32万円(2WD)/116.655万~157.605万円(4WD)と比較的安価に設定されたハスラーは、ファミリー層だけでなく、若者からも支持され、販売開始から1年経たず累計台数は10万台を超える大ヒットになりました。

●ハスラーの前に存在した軽のクロスオーバーSUVライクなモデル

1998年にデビューした2代目Z。ミッドシップ4WDが話題に
1998年にデビューした2代目Z。ミッドシップ4WDが話題に

軽のクロスオーバーSUV市場を開拓したのはハスラーですが、それ以前にクロスオーバーSUVのようなモデルがありました。1998年にデビューした2代目「ホンダZ」と同年のスズキの「Kei」です。

2つのモデルとも、マッチョなボディに大型タイヤを履き、十分な最低地上高を確保しているのが特徴。2代目ホンダZは、軽らしからぬミッドシップ4WDで話題になり、Keiは街並みもオフロードも似合う、2台ともクロスオーバーSUVライクなモデルでした。

1998年にデビューしたKei、軽のクロスオーバー
1998年にデビューしたKei、軽のクロスオーバー

しかし、両モデルともヒットには至りませんでした。当時は、ハイトワゴンブームの真っ只中で軽のクロスオーバーSUVを受け入れる土壌がなかったこともありますが、ハイトワゴンのパッケージングを流用したハスラーに対して、両モデルは居住性、実用面で劣っていたことが、人気が限定的だった理由と思われます。


ハスラーの登場以降、ダイハツ「タフト」や三菱自動車「ekクロススペース」、スズキ「スペーシアギア」などが続き、乗用車と同じように軽自動車でもクロスオーバーSUVブームが起こっています。多様化するライフスタイルとともに、軽でも居住性だけでなく、マルチユースな車が求められているのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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