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■インフィニティ「QX50」に初搭載されたVCターボが機械振興協会会長賞
日産自動車は、2019(平成31)年12月20日に発表された一般財団法人機械振興協会主催の第54回機械振興賞において、世界初となる量産型可変圧縮比エンジン「VC(Variable Compression)ターボ」の開発が“機械振興協会会長賞”を受賞したことを発表しました。
VCターボエンジンは、リンク機構によって圧縮比を8~12まで自動的に可変化できる画期的なエンジンです。
●ガソリンエンジンにとって可変圧縮比が効果的な理由
エンジンの圧縮比は、高いほど熱効率が向上するので、基本的には燃費と出力が向上します。したがって、ガソリンエンジンでは、圧縮比を高めることが古くから重要テーマとして追求されてきました。
しかし、ガソリンエンジンでは圧縮比を上げると、アクセルを深く踏むような高負荷運転ではノッキングが発生するので、通常はノックしない範囲でできるだけ高い圧縮比に設定します。一方で、一般路走行のようなアクセルを深く踏み込まない部分負荷運転ではノックしにくいので、高負荷運転条件で設定した圧縮比よりもっと高い圧縮比に設定するのが理想です。
高負荷ではノッキングが発生しない程度の高圧縮比、部分付加域ではさらに圧縮比を高めるという理想的な圧縮比を実現するのが、可変圧縮比です。しかし、過去にいくつかのVC機構が提案されましたが、機構の複雑さや耐久性の問題から実用化された例はありませんでした。
●複合リンク方式によって可変圧縮比を実現
実用化された日産のVC機構は、圧縮比の変更をピストンの上死点高さの変化で行います。上死点とは、上下運動するピストンの最上点のことで、圧縮行程中のピストンがより高い位置まで圧縮することで圧縮比は上昇します。この機構を実現するのが、日産が独自に開発した複合リンク方式です。
ピストンを支持し、クランクの回転運動をピストンの上下運動に変えるコンロッドの代わりに、3本のリンクをモーターによって巧妙に動かし、ピストンの上死点高さを連続的に変更します。これにより、運転条件に応じた最適な圧縮比に設定できるVCを実現したのです。
一方で、複雑なリンク機構なのでフリクションが増える、耐久的に不利などの課題が懸念されますが、日産は20年以上の歳月をかけてこれらの課題を克服しました。
●ターボと組み合わせてインフィニティ「QX50」に搭載
日産のVCは2018年3月、北米向けインフィニティのクロスオーバーSUV「QX50」の2.0L直4 DOHCターボエンジンに初めて採用されました。ターボエンジンと組み合わせているので、日産ではVCターボと呼んでいます。
ターボエンジンは過給している分、ノックしやすいため、NA(無過給エンジン)に比べて圧縮比を下げる必要があります。これが、ターボエンジンがNAエンジンより燃費が悪い理由ですが、ターボエンジンにVCを組み合わせることでより大きな効果が期待できるのです。
ノックしない一般路走行などの低~中負荷運転では燃費を良くするため高圧縮比を14に、ノックが発生しやすい高負荷運転ではノックが発生しないように圧縮比を8に下げ、その間の領域では圧縮比を8~14の間をシームレスに変化させます。
この効果によって、QX50の熱効率は40%に達し、従来エンジンに比べて燃費が27%、出力が10%向上したとされています。
VCターボは多くの課題を克服して実用化されましたが、複雑な機構であるだけにコストが高くなることは避けられません。したがって、当面はフルライン展開が難しく、高級車への展開に限られると予想されます。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)