ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功、動力はガソリンエンジンだった【今日は何の日?12月17日】

■ガソリンエンジンを搭載したライトフライヤーが初飛行

エイムズ研究センターの風洞での複製機の試験 (C)Creative Commons
エイムズ研究センターの風洞での複製機の試験 (C)Creative Commons

1903(明治36)年12月17日、米国ノースカロライナ州キティホークの海岸で、ライト兄弟が人類初となる動力飛行機の飛行に成功しました。

12HP(12.17PS)の水冷4気筒ガソリンエンジンを搭載した「ライトフライヤー」1号機は、滞空時間59秒/飛行距離260mを記録したのです。


●操縦可能なライトフライヤーは、滞空時間59秒/飛行距離260mを記録

米国オハイオ州で自転車製造業を営んでいたライト兄弟(兄:ウィルバー、弟:オーヴィル)が、1903年のこの日、ガソリンエンジンを搭載したライトフライヤー1号機による初飛行に挑戦しました。

ライトフライヤーは、全長6.4m/全幅12.3m/全高2.7m、重量274kgの複葉型主翼飛行機で、ライト兄弟が自ら製作した水冷直列4気筒ガソリンエンジンを動力にして、両翼に直径2.6mの木製二翅プロペラ2基を装備して、ローラーチェーンによって駆動する方式を採用しました。

ライト兄弟(ウィルバー&オーヴィル) (C)Creative Commons
ライト兄弟(ウィルバー&オーヴィル) (C)Creative Commons

画期的だったのは、ただ飛行するだけでなく操縦系を備えていたことで、機体前方に昇降舵、機体後部に方向舵を備え、ワイヤーによって動翼を制御。パイロットは、機体へ腹ばいに搭乗し、主翼のたわみは腰を左右に動かすことで操作できました。飛行自体は不安定でしたが、ライト兄弟は事前にグライダーで訓練していたので、操縦技術に長けていたようです。

最初の飛行では、弟のオーヴィルが滞空時間12秒/飛行距離36m、続いた4回目に兄のウィルバーが59秒/260mの飛行に成功しました。

●自動車用エンジンベースの水冷4気筒ガソリンエンジンを搭載

ライト兄弟は、ライトフライヤーの製作前の3年間は、飛行機の模型や有人グライダーなどの製作を通して、本格的な飛行機作りに向けて着々と準備を進めました。その中で最大の課題は、動力源となる適当なエンジンがないことでした。やむを得ず、ライト兄弟は自らエンジンを製作することにしたのです。

エンジンは、当時の自動車用エンジンをベースにした、シリンダー横置きの直列4気筒の水冷4ストロークエンジンで、排気量は3296cc(ボア/ストローク:102mm/102mm)、出力は12HPでした。クランクケースは、当時としては画期的なアルミ鋳造で、シリンダーは鋳鉄の削り出し、クランクシャフトとカムシャフトは鋼鉄の削り出しで製作され、エンジン本体重量は70kg程度とされています。

エンジンの始動は、燃料コックを開いてサポート者がプロペラを回し、同時にバッテリーとコイルによって火花を飛ばして行います。エンジンの回転が始まれば、直流発電機により電源が確保され、もう一つの燃料コックを開いて最適な燃料量と火花によって、安定した回転が維持できました。

T型フォードの販売が始まったのが1908年ですから、その5年前に飛行機用のガソリンエンジンを自作していたとは驚きです。

●その後のライトフライヤーの進化

その後、ライト兄弟はエンジンの改良を進めてライトフライヤーを進化させました。

エンジンを直立にして冷却性能を改善し、燃料とオイル、冷却水のポンプを装備することによって、信頼性が格段に向上。さらに、簡単な気化器やディストリビューター付の点火装置などを採用し、先進的なエンジンへ変わりました。

1906年には、エンジン排気量を4372ccへ拡大し、出力は30HPへと向上。1908年8月8日に、フランスのル・マン近くの競馬場で2分間程度のデモ飛行を、1909年にはニューヨークで公開飛行を行い、その見事な飛行技術に見物していた人々は興奮し、ライト兄弟とライトフライヤーの名声は極まったのです。


カール・ベンツがガソリン自動車を発明した1986年からわずか17年後に、自動車用エンジンをベースにしたエンジンで空を飛ぶことに成功したライト兄弟。内燃機関の発明が、いかにモビリティや人類の発展に大きな影響を与えたかが、よく分かりますね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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