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■歴代スイフトのデザインの進化を振り返る
スズキのコンパクトハッチであるスイフトがフルモデルチェンジされ、2023年11月6日に発表されました。新型もスイフトらしいスポーティなデザインがすでに話題ですが、その「らしさ」とは一体何なのでしょうか?
今回は歴代のうち、2代目以降のデザインをあらためて振り返ってみたいと思います。
●日本車離れした超凝縮スタイル:2代目スイフト
2004年に登場した2代目スイフトは軽自動車をベースとして登場した初代に対し、新たな世界戦略車として登録車専用のプラットホームを採用しました。ですので2代目は、今回の5代目の新型へと続く実質的な「初代」に当たるのです。
「見て力強さを感じ、乗って力強く走るダイナミックコンパクト」という開発コンセプトのとおり、2代目は初代とは全く異なった凝縮感に溢れるスタイルが特徴。フロントランプから始まる大きな流れがそのままショルダーを抜け、リアランプが受け取るという「整理された造形」が特徴なのです。
コンパクトながらパンっと張った面によるカタマリ感は、担当デザイナーがトリノなど欧州に滞在しながら磨き上げたもの。筆者も、初見で「これってどこかカロッツェリアの作?」などと思い込んでしまった記憶があります。この完成度の高さが、歴代の成功を約束させたと言えそうです。
●進化ならぬ深化でユーザーのニーズに応える:3代目スイフト
6年後の2010年に発売された3代目の開発キーワードは「もっと、スイフトに」。2代目のスタイルの評判が極めて高かったこともあり、基本造形は変えず、細部を熟成させようという判断がなされたのでした。
「カッコいいけどチョット狭い」という声に応え、全長を155mm、ホイールベースを40mm延長。見た目にも伸びやかさを感じるよう、前後のランプ形状を引き延ばしたのが印象的でした。また、リアハッチのハンドルを格納式にするなど、ボディパネルの滑らかさも追求していました。
一見「ほとんど同じ」に見えるのですが、前後左右に拡大されたことによって、2代目の凝縮感は若干緩くなったとは言えそうです。これを後退と見るか、立派になったと見るかは難しいところです。
●整合性ではなく、もっとエモーショナルに:4代目スイフト
2016年登場の4代目は、デザインコンセプトを「エモーショナル」とした点が従来と大きく異なるところです。つまり、先代までの「整った」スタイルからの脱却ということで、実際にも、チーフデザイナー氏は当時の取材で「整合性から情緒へ」と語っていたのです。
端正だったグリルは大きな口を開け、これを低い位置に配することで重心の低さをアピール。スパッとストレートに走っていたショルダーラインは大きな波を打ったようにカーブし、サイド面全体が筋肉質な抑揚に溢れることとなりました。
一部だけをブラックアウトしたリアピラーも「情緒的」の好例で、ある意味不安定さを感じさせるもの。その元気っぷりが分かりやすいスポーティさに繋がっていたのが4代目のキモなのです。
●異なる要素を融合させた新しい提案:新型5代目スイフト
さて、5代目となる新型のデザインコンセプトは「一目見たら印象に残るデザイン」です。従前のスイフトにとらわれないスタイリングとはどんなモノなのでしょうか?
非常に大雑把に言いますと、グリルや前後ランプの形状など、基本は4代目のイメージを残しつつ、まったく新しい要素を与えたのがポイント。そのひとつが、クラムシェルタイプのボンネットフードからショルダーライン、リアパネルまで繋がる大きな流れです。つまり、単純明快な形状と情緒の融合なのです。
完全にブラックアウトさせたリアピラーも明快さのひとつですし、スッキリさせたサイド面の抑揚も同じ。逆に、リアランプの下部をナナメにカットしたのは情緒面の表現です。
唯一の不安は、その新しい融合がユーザーの目に「中途半端」と映ってしまわないかということでしょう。これから新型が街を走り出せば、その正否はハッキリする筈です。