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■ディーゼルエンジンによる発電でモーター走行する電気式気動車
2020(令和2)年12月12日、JR東日本は「キハ40系」に代わる新型気動車「GV-E400系」を五能線へ投入しました。
GV-E400系は、ディーゼルエンジンによる発電でモーターを駆動させて走行する「電気式」と呼ばれる気動車です。
●蒸気機関から内燃機関(ディーゼル)へと変わった気動車
気動車という表現は、通常使わない言い方ですが、ディーゼルエンジンなどの熱機関を動力源として自力走行する鉄道車両を指します。一般的には、曖昧な面もありますが、蒸気機関も気動車に含むとされています。
鉄道の歴史は、蒸気動車(蒸気機関車)から始まりましたが、昭和を迎える頃には廃れて、代わりに小型で効率の良いディーゼルエンジンを動力とする内燃動車(ディーゼルカー)が主流となりました。通常、気動車は床下に搭載されたエンジンが生み出す動力を変速機と推進軸を介して車輪に伝えて走行します。そして、戦後になって都市部を中心に電車が普及していきました。
気動車は、燃料タンクを搭載し、電車と違い外部から電気エネルギーを供給しなくても自力走行できることから、電路や変電所などの大掛かりな設備を必要としません。そのため、比較的輸送量の少ない閑散路線で多用されており、現在もJRのローカル線や第三セクターの一部、地方の民営鉄道で気動車が運行されています。
ちなみに電車は、架線からパンタグラフなどを介して電力を得て、車両に搭載されたモーターで走行します。
●ハイブリッド気動車と電気式気動車の登場
電車が普及する中、閑散路線で運行される気動車も、車と同じように電動化が進んでいます。その代表が、ハイブリッド気動車と電気式気動車です。
ハイブリッド電気式気動車は、ディーゼルエンジンで発電機を回して発電させた電気を使用し、モーターで走行するだけでなく、回生ブレーキ(制動エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換するブレーキ)で発生した電気を蓄電池に充電することも行う方式。車のシリーズ式ハイブリッドと同じ方式です。
一方の電気式気動車は、ディーゼルエンジンで発電機を回し、その電力でモーターを動かすというハイブリッド気動車から蓄電池を抜いた構造です。現在、ディーゼルエンジンやモーター/発電機は、小型・軽量化され、効率も向上しているので、蓄電池がなくてもそれほど大きなデメリットにはなりません。
電気式気動車は、ハイブリッド気動車よりも効率の低い技術ですが、構造が簡単で軽量で低コストというメリットがあり、コスト重視の閑散路線では目的に適っているのです。
●閑散路線で投入が進む電気式気動車
秋田県と青森県を繋ぐ五能線は、電気式気動車「GV-E400系」投入までは、「キハ40系」気動車(ディーゼルカー)が運行していました。国鉄が製造したキハ40系気動車は、1977年以降、全国各地に投入されましたが、2000年に入ると新型気動車への置き換えが進み、徐々に主力路線から私鉄や第三セクターのみで運用されるようになりました。
そして五能線も、キハ40系から電気式気動車GV-E400系への置き換えを、2020年のこの日に実行したのです。GV-E400系は、2018年1月に量産先行車3両が新潟地区でデビューし、JR北海道ではGV-E400系の酷寒地タイプH100形気動車を、2020年3月に函館本線・長万部~小樽間に投入しています。
秋田支社管内でのGV-E400系投入は、五能線の他に津軽線や奥羽本線の一路線でも進められました。
鉄道車両も車も、蒸気機関から内燃機関へ、そして電動化へと向かう方向や、その採用される技術は似たものであり、まだ進化する可能性があるように思われます。閑散路線で電車を走らせることが難しいなら、ハイブリッド気動車や電気式気動車で生き残るのかもしれません。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)