ホンダ「NSX タイプR」デビュー。NSXにレーシングスピリットを注入した究極のミッドシップスポーツ【今日は何の日?11月26日】

■ホンダのスポーツモデルを象徴するタイプRがNSXで初登場

1992年にデビューしたホンダのレーシングスピリットが注入されたNSXタイプR
1992年にデビューしたホンダのレーシングスピリットが注入されたNSXタイプR

1992(平成4)年11月26日、1990年に鮮烈なデビューを飾ったスーパースポーツ「NSX」に、さらに高次元の走りを極めた新たなモデル「NSXタイプR」が追加されました。軽量化をさらに推進し、レーシングカーのチューニングを施した究極のピュアスポーツです。


●鮮烈なデビューを飾ったNSX

NSXがデビューしたのは、日本がバブル景気に沸きあがっていた1990年2月のこと。新時代を象徴するスーパースポーツとして開発されたホンダ渾身のミッドシップ(MR)スポーツカーでした。

1990年に鮮烈なデビューを飾ったミッドシップスポーツNSX
1990年に鮮烈なデビューを飾ったミッドシップスポーツNSX

リトラクタブルヘッドライトやグリルレスのフロント周り、スポイラー一体テールエンドなど、空力性能に優れた華麗なスタイリングを採用。革新的なのは、世界初のオールアルミ・モノコックボディなど車全体の90%をアルミ化によって軽量化したことです。

さらに、最高出力280PSを発揮する3.0L V6 DOHC VTECエンジンを運転席の背後に搭載するMRレイアウトで、別次元の動力性能とハンドリング性能が実現されました。

ただし、扱いにくいスパルタンなスポーツカーでなく、誰でも乗りこなせるスポーツカーとして、オートエアコン、電動パワステ、BOSE社製のサウンドシステムなどを採用し、さらに5速MTだけでなく4速ATが用意されている点もドライバーへの配慮の表れです。

価格は、800.3万円(5速MT)/860.3万円(4速AT)でしたが、外国産のスポーツカーに比べればお得と言えました。

●徹底した軽量化とレーシングカーの技術を適用した「タイプR」

2年後に追加されたNSXタイプRは、より高次元な運動性能を実現するため、さらなる材料置換を進め、レーシングカーのチューニングが施されました。

1992年発売のNSXタイプRのインテリア、レカロ製フルバケットシート、MOMO製ステアリングホイール
1992年発売のNSXタイプRのインテリア、レカロ製フルバケットシート、MOMO製ステアリングホイール

軽量化については、ただ軽量化するのではなく、車の重心を車体の中心へ移動させることで、ヨーモーメントや荷重移動の低減化を図り、運動性能を向上。具体的な軽量化として、バンパービームのアルミ化、リアスポイラー素材見直し、リアパーテンションガラスの1枚化、レカロ製の超軽量フルバケットシート、ENKEI製超軽量アルミホイールなどで、軽量化の合計は120kgにもおよびました。

足回りはレーシング仕様でまとめられ、ダンパーやスプリングの強化はもちろんのこと、車高を10mm下げ、分離加圧式高応答ダンパーやキャンバー角/キャスター角などのアライメントの見直しなどを実施。エンジンのスペックは同じですが、レーシングエンジンと同じチューンニング手法を施し、トランスミッションは9速デュアルクラッチに変更されました。

高次元のスーパースポーツとなったタイプRの車両価格は、970.7万円、ちなみに当時の大卒の初任給は18万円(現在は約23万円)程度。ベースNSXに比べると約100万円高く、販売台数は3年間で480台でした。

●NSXで始まったタイプRを次々と展開

ホンダのスポーツスピリットを象徴する「タイプR」シリーズは、NSXタイプRから始まりましたが、以降次々と他のモデルへ展開されました。

2022年9月2日にデビューした6代目シビック・タイプR
2022年9月2日にデビューした6代目シビック タイプR

1995年の「初代インテグラ タイプR」、1997年「初代シビック タイプR」、1998年「アコード タイプR(欧州専用車)」、2001年「2代目インテグラ タイプR」「2代目シビック タイプR」、2007年「3代目シビック タイプR」、2010年「4代目シビック タイプR」、2015年「5代目シビック タイプR」、2022年9月にデビューしたばかりの「6代目シビック タイプR」と続きました。

タイプRで現存するのはFF最速の誉れ高いシビック タイプRのみで、新型シビックタイプRはオーダーが想定を上回ったためか、一時的に受注停止するほどの人気を獲得しています。


スーパースポーツNSXに、レーシング技術を随所に応用し唯一無二のピュアスポーツとなったタイプR。中古車市場で姿を見せることも稀で、例えお金に糸目は付けないと言っても入手できなくなってしまったようです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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