新型ヤマハPAS CRAIG(パス・クレイグ)はクロスバイクで街乗り重視。例えるなら初代RAV4だ!

■ヤマハが世界初の電動アシスト自転車を発売して30年目に出たクレイグ

●PASとYPJのいいとこ取りを狙った?

PAS CRAIG
PAS CRAIG

世界初の電動アシスト自転車「ヤマハPAS」を発売したヤマハ発動機(以下、ヤマハ)から、その発売30年目に当たる今年2023年、新たな電動アシスト自転車「PAS CRAIG(パス・クレイグ)」をリリースしました。

ヤマハの電動アシスト自転車シリーズは大きく分けて、主婦層はもちろん、学生の通学や、高齢者も楽に漕ぐことができるなど、幅広いユーザーをターゲットに、主に街乗り重視とした30年の歴史を持つPASシリーズと、マウンテンバイク、クロスバイク、ロードバイクなど走りを目的にしたスポーツ電動アシスト自転車(eバイク)のYPJシリーズの2種類があります。

そのYPJシリーズは「こだわりのヤマハ」らしく、走り方面に徹底したモデルが多く、カッコいいけどそこまで本格的に自転車をスポーツとして乗るんじゃなく、普段の街乗りに使いたいんだけどなぁ、といったユーザーの声に応えたのが今回のPASシリーズの「クレイグ」。つまり、PASとYPJのいいとこ取りなわけです。

PASシリーズの中でも街乗りスペックにスポーティなデザインを取り入れたニーズがありそうでした
PASシリーズの中でも街乗りスペックにスポーティなデザインを取り入れたニーズがありそうでした

PASシリーズにはスポーツ走りもできちゃうYPJに近いPAS Braceというのがありますが、そちらは街乗り重視より、もう少しスポーツ性能重視となっているのです。

なので、スタイルはクロスバイク風でスタイリッシュ。イメージするユーザー像は30代くらいの男性で、普段からものにはこだわりがあるけどシンプルでミニマルな生活を送っているような人なのだそう。

●シンプルかつスタイリッシュにこだわったデザイン

PAS CRAIG、カラーは「マットグレイッシュベージュ」
PAS CRAIG、カラーは「マットグレイッシュベージュ」

そういったユーザーはおしゃれにも気を配るので、クレイグはデザインにもこだわっています。

3色から選べるカラーはすべて艶消しのマットカラーを用意し、シンプルで機能的ななダイヤモンドフレーム形状としています。

また、フレーム素材にはあえてスチールを選ぶことで、フレーム径を細くすることができ、よりスタイリッシュなイメージに仕上がっていると言います。

スタリッシュにシンプルにするための工夫は、チェーンガードのデザインや、車体一体のキーでなくワイヤー錠を標準装備としたり、泥除けをリヤにバッテリー保護のための最小限のものがだけにするなどに表されています。なお、泥除けが必要な人はオプションで装着可能です。

●価格12万9000円は高いのか?安いのか?

気になるお値段はメーカー希望小売価格で12万9000円。

入社3年目、タイ出身のインさん
入社4年目、タイ出身のインさん

正直言って、このお値段が高いのか安いのか、そもそも電動アシスト自転車の相場感みたいなのがわかりませんでしたので、クレイグのコスト担当だというヤマハ発動機のインさんにお話をお聞きすると、大体電動アシスト自転車のマーケットで売れ筋は13万円代くらいの車両が多く売れるのだそうで、その中で12万9000円というのはむしろ少し低く抑えられた価格とのこと。

ちなみにインさんはタイの出身で、バンコクの大学3年ののとき日本に1年間留学し、そのときにヤマハ発動機に就活して入社が決まったのだそう。

地元バンコクでもヤマハのバイクは人気で、特にデザインが優れているのだとか。家族が「YAMAHA FINN」に乗っているんだそうです。

ヤマハに入社してからは、みんなで色んな意見を出し合って活発な会議が行われて、とても楽しいそうです。海外のかたが日本の企業で楽しく仕事してくれてるって、とても嬉しいですね。

●思い出したのはトヨタのRAV4の発表会です

PAS CRAIG、カラーは「マットジェットブラック」
PAS CRAIG、カラーは「マットジェットブラック」

さて、そんなインさんも加わってリーズナブルな価格に決まったクレイグを見たときに思い出したのは、ヤマハPASが発売された約半年後の翌年1994年5月に発表されたトヨタの初代RAV4です。その頃は空前のクロカン4駆ブーム。スキーやアウトドアブームと相まって「どんなところでも走れそうなタフさ」みたいなRV車が売れまくっていました。ランクル、パジェロ、ハイラックス、テラノなどですね。

そこへ来て、街乗り重視のシティコミューターであり、なんちゃってクロカン4駆のようなRAV4が出てきたのです。こんな中途半端な車を誰が買うんだろう?と思ったボクがトヨタの説明員のかたにお聞きしたら、「ロードスターなど、ちょっと他人と違う車を欲しがる人です」という答えに「へー、そうですか」と表っ面ではいいつつも内心「んなわけないっしょ、車高が違いすぎる!」と鼻で笑ってました。が、しかし、RAV4はキムタクこと木村拓哉さんのCMの影響もあって、大ヒット。自分にはヒット商品を予感する才能がないのだろうと落ち込んだものです。

と、思い出話に例えたように、クロスバイク風で街乗り重視のPAS CRAIGもその生い立ちに共通点がある気がします。

そもそも2輪のメーカーであり、電動アシスト自転車の先駆者であり、eバイクの世界でもラインアップを充実させてきたヤマハが送り出す、スポーツもできそうな街乗り実用重視したクレイグ。ヒットの予感がします。ボクの予想、今度は間違ってない、かもしれませんよ!

●PAS CRAIGスペック

・名称〈機種名〉 PAS CRAIG〈PA70C〉
・寸法
全長 1,860mm
全幅 595mm
サドル高 815-945mm
軸間距離 1,163mm
タイヤサイズ 700×38C
タイヤ幅 約3.5cm
適応身長のめやす 156cm以上
車両重量 21.6kg(ワイヤー錠含む)

・性能
補助速度範囲(変速機「8」) 比例補助 0km/h以上10km/h未満
逓減補助 10km/h以上24km/h未満
一充電走行距離(注1) 強モード 36km
スマートパワーモード 40km
オートエコモード
プラス 70km

・電動機
形式 ブラシレスDCモーター
定格出力 240W
補助力制御方式 踏力比例制御方式
変速方式 リヤハブ内装3段式

・電池
種類 リチウムイオン電池
電圧/容量 25.5V 8.9Ah(注2)

・充電器
形式 スイッチング・レギュレータ式
充電時間 約2.5時間
(バッテリー残量がほぼ無い状態から、満充電までの時間を指します。環境や条件によって充電時間が異なる場合があります。)

駆動方式 チェーン式
照明装置 LEDバッテリーランプ
盗難抑止装置 ワイヤー錠/内溝キー

・カラー
マットラベンダー(ツヤ消しカラー)
マットジェットブラック(ツヤ消しカラー)
マットグレイッシュベージュ(ツヤ消しカラー)

(文・写真:クリッカー編集長 小林和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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