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■ホイールベースはヴェゼルよりも長い
ホンダの新型SUV「WR-V」が2024年春に発売されます。200万円台前半からという同社のエントリーSUVになります。ZR-Vを頂点に、ヴェゼル、そしてWR-Vという位置づけです。
とはいえ、WR-Vは、ヴェゼルよりもコンパクトなサイズではないのがポイント。ZR-V、ヴェゼルとボディサイズを比べてみます。
・ZR-V:全長4570×全幅1840×全高1620mm、ホイールベース2655mm
・ヴェゼル:全長4330×全幅1790×全高1580mm、ホイールベース2610mm
・WR-V:全長4325×全幅1790×全高1650mm、ホイールベース2650mm
注目なのは、ヴェゼルと全長はほとんど同じで、全幅は同値であること。ホイールベースはむしろ40mm長くなっています。また、全高が70mm高いというSUVらしいディメンションとなっています。
ヴェゼルは、初代からクロスオーバーSUVという位置づけでリリースされ、センタータンクレイアウトによる広い後席や荷室、後席座面のチップアップなど、多彩なシートアレンジが特徴となっています。
一方のWR-Vは、SUVらしい背の高さとダイナミックで力強いフォルムを付与。都会だけでなく、オフタイムにはアウトドアや各種アクティビティも楽しめるラゲッジスペースを用意。
なお、ヴェゼルとWR-Vのエクステリアパーツで共通するのは、ドアミラーのみ。日本の法規に対応するため、ヴェゼル用のドアミラーが日本仕様に用意されます。
全高が高くなっただけでなく、最低地上高は195mmで、ヴェゼルの170〜195mm(16インチは185mm)よりも少し高く設定。その分、高めのアイポイントによる良好な視界が得られるそうです。
●SUVらしい逞しさを感じさせるフォルムと高めの全高が特徴
エクステリアは、分厚いノーズがそのまま後方まで続くような筋肉質なシルエットで、高めのベルトラインと力強いサイドビューが目を惹きます。リヤは、水平基調のリヤコンビランプがワイド感を演出し、SUVらしい重心の高さを抱かせる造形が与えられています。
ヘッドライトやリヤコンビランプも凝っています。フルLEDヘッドライトは、デイタイムランニングライト、ポジションライト、ターンライトのLEDトリプルファンクションとして、上にターンライト、下側外側寄りにロービーム、下側の中央寄りにハイビームを配置。リヤビューを印象づけるリヤコンビランプは、上からテールランプ/ストップランプ、中央外側にターンライト、下側中央寄りにバックライトが配されています。
グレードは「X」「Z」「Z+」というバリエーションがあり、「Z」には17インチアルミホイールの他、LEDフォグライトなどを標準装備。
「Z+」は、「Z」の装備に加えて、ベルリナブラックのフロントグリル、シャープシルバー塗装ルーフレールガーニッシュ、シャープシルバー塗装ドアロアーガーニッシュ、クロームメッキのアウタードアハンドル、シルバーのドアモールディングなどが用意され、キリッとしたスポーティなデザインが与えられています。
足元のアルミホイールは、エントリーの「X」グレードが16インチスチールホイール(フルホイールキャップ/シルバー塗装)で、「Z」と「Z+」がベルリナブラック+切削の17インチアルミホイールとなります。
水平基調のインテリアは、黒をベースにシルバー加飾やピアノブラック調加飾、ソフトなパッドを配することで、質感向上と包まれ感を演出。ホンダ車の美点である視界の良さ、取り回しのしやすさに配慮されたデザインやウインドウスクリーンの設計になっています。
「Z」「Z+」インパネまわりは、7インチTFTメーター、本革巻ステアリングホイールや本革巻セレクトレバーのほか、プライムスムースのドアライニングを用意。
ポケッテリアは、ドアのスマートフォンスタンドや1Lのペットボトルホルダーなど、必要な収納があるべき場所に配置されているだけでなく、間口の広さなど、使い勝手にも配慮されています。
ラゲッジスペースは、通常時458Lで、25インチのスーツケースが2つ、21インチのスーツケースが2つ入ります。ゴルフバッグは、9.5インチが2セット積載可能。なお、後席の拡大は、シンプルに背もたれを前倒しするタイプで、後席背もたれ前倒し時は、荷室とやや大きめの段差が残ります。
●ライバルとのボディサイズの違いは?
WR-Vは、クロスオーバーSUVであるヴェゼルに対して、こうしたSUVらしいパッケージとしつつ、先述したように、SUVのエントリークラスを狙う200万円台前半もカバーする価格設定(エントリーグレード)になるそうです。ライバルとボディサイズを比べてみます。
・ホンダWR-V:全長4325×全幅1790×全高1650mm、ホイールベース2650mm
・トヨタ・ヤリスクロス:全長4180×全幅1765×全高1590mm、ホイールベース2560mm
・トヨタ・カローラクロス:全長4490×全幅1825×全高1620mm、ホイールベース2640mm
・マツダCX-30:全長4395×全幅1795×全高1540mm、ホイールベース2655mm
全長はCX-30に比較的近く、ヤリスクロスとカローラクロスの中間を埋める全長と全幅であり、全高の高さが印象的です。
ヴェゼルと全高以外は大差がないWR-Vを導入する狙いは、価格面でのエントリークラスのフォローであり、クロスオーバーSUVではなく、さらに室内高や荷室に余裕のあるSUVを求めるニーズをつかむためです。
ホンダでは、200〜250万円クラスのSUVラインナップの不在という課題を抱えていると分析していて、価格面では、BセグメントとCセグメントの両方を狙う構え。
ホンダによると、250万円以下では、7割超がガソリン車になっていて、WR-Vは、広い室内や荷室、コンビシート(本革・合皮インテリア)、LEDフォグライトなどを備えながら、高いコストパフォーマンスを追求すると説明しています。つまり、WR-Vも純ガソリンエンジン仕様のみのラインナップになると予想されます。
エントリーSUVも担うとはいえ、外観や内装の仕立て、質感は事前に披露された屋内のスタジオ内ではチープさはまったく感じられませんでした。後席に座ると気がつくのは、前席座面下が高くなっている点で、この下に燃料タンクを配置するセンタータンクレイアウトの採用と思いきや、センタータンクレイアウトではないそうです。
なお、プラットフォームは、タイを皮切りに東南アジアなどに投入されているシティがベース。現行シティは、4.5m中盤の全長、2.6mというホイールベースにまで大きくなっています。
ヴェゼルと比べると、頭上まわりに余裕があるのはもちろん、後席の足元スペースはホイールベースが少し長いにもかかわらず、若干狭くなっているそう。プラットフォームの違いもありますが、荷室の広さを重視した設計となっています。なお、前席下の足入れ性も含めて身長171cmの筆者が座っても後席足元には十分な余裕があり、4人家族でもゆったり座れる広さ、快適性が確保されています。
コロナ禍の2021年に開発がスタートし、タイ、インド、日本にプロジェクトチームを結成し、移動に制約がある中、開発されたWR-V。戦略的な価格でSUVシェア拡大を狙う役割を担っています。
なお、WR-Vは「Winsome Runabout Vehicle(ウィンサム ランナバウト ビークル)」の頭文字から命名されています。楽しさや快活さといった意味のある「Winsome」から、WR-Vのある「生き生きとした生活」を送って欲しいという想いから車名が決められたそうです。
(文・写真:塚田 勝弘)