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■CBR1000RRのエンジン搭載の超速ネイキッド
ホンダが、イタリア・ミラノで開催されたEICMA2023(通称:ミラノショー)で、欧州向け2024年モデルとして新型「CB1000ホーネット(CB1000 HORNET)」を発表しました。
英語で「スズメバチ」を意味する車名を持つホーネットといえば、かつて日本でも高い人気を誇ったネイキッドスポーツのシリーズ。250ccや600cc、900ccといった豊富なラインアップを誇り、昔からのバイクファンには、懐かしいと思う人も多いでしょう。
その後継モデルといえる新型は、2017年型CBR1000RRに搭載された1000cc・直列4気筒エンジンを搭載するなどで、高い走力性能を持つことが特徴といえます。
他にもホンダは、1000ccスーパースポーツ「CBR1000RR-Rファイヤーブレード/SP」の2024年モデルもお披露目するなど、全12機種を発表。ここでは、それらのなかで、特に注目のモデルをピックアップして紹介してみましょう。
●CB1000ホーネット
まずは、CB1000ホーネット。国内でホーネット・シリーズは、1986年に登場した250ccモデル「ホーネット」が元祖。最高出力40PSを発揮する249cc・直列4気筒エンジンには、ホンダ独自のカムギア・トレーン(カムシャフトを歯車で駆動する方式)機構を採用し、高回転まで一気に吹け上がる心地良い加速感が魅力でした。
1998年には、600cc・直列4気筒エンジンを搭載した「ホーネット600」も発売。2001年に発売された「CB900ホーネット」では、当時のホンダがリリースしていたスーパースポーツ「CBR900RR」の1998年モデルに搭載していた、900cc・直列4気筒エンジンを採用するなどで、ネイキッドモデルながら高い動力性能も両立したモデルでした。
今回、欧州で発表されたCB1000ホーネットも、2017年型CBR1000RR用のエンジンを搭載しているので、まさに、かつてのCB900ホーネットと同じですね。
なお、新型CB1000ホーネットのエンジンは、110kW(149.6PS)を超える出力と、100Nm(10.19kgf-m)を超えるトルクを発揮するといいますから、かなりの俊足であることが予想できます。
ちなみに欧州では、2022年10月に755cc・並列2気筒エンジンを搭載する「CB750ホーネット(CB750HONET)」が発表され、2023年モデルとして販売されています。かつての名車ホーネットの名前を復活させたという点ではこちらが先ですね。つまり、新型のCB1000ホーネットは、その1000cc版といった位置付けとなるわけです。
新型CB1000ホーネットの外観は、超小型デュアルLEDプロジェクターヘッドライトを採用したフェイスデザインが印象的。また、独特の形状を持つ燃料タンクは、前方は幅が広く、後端は細く絞り込まれていることが特徴で、スポーティなライディングに最適な形状になっているといえます。
車体には、新開発のツイン・スパー・フレームを採用。スチール製ながら、レーシーな雰囲気を醸し出します。また、足まわりでは、圧縮・伸側ともに調整可能なショーワ製41mmSFF-BP(セパレート・ファンクション・フォーク・ビッグ・ピストン)倒立サスペンションを装備。ショーワ製ユニットプロリンク・リヤショックとのマッチングにより、軽快なハンドリングを実現するといいます。
ホンダは、他にも、471ccエンジンを搭載する「CB500ホーネット(CB500 HORNET)」も発表し、欧州におけるホーネット・シリーズのラインナップ強化を図っています。
●CBR1000RR-Rファイヤーブレード/SP
一方、CBR1000RR-Rファイヤーブレードと、その上級グレードであるCBR1000RR-RファイヤーブレードSPの2024年モデル。新型では、エンジンとギアボックスの改良により、中速域の性能を大幅に向上。また、スロットルレスポンスも改善するなどで、さらなる進化を遂げているといいます。
特に、SP仕様では、最高出力160kW(218PS)、最大トルク113Nm(11.5kgf-m)といった出力はそのままに、トップエンドのパワーと同時にコーナー出口での加速を生み出すために、より低いギア比とし、プライマリドライブも大幅に変更。また、ミドルカウルに装備されたウイングレットも新デザインとなり、空力特性も向上しています。
加えて、2モーターのスロットル・バイ・ワイヤー(TBW)の採用により、ハーフ・スロットル制御が向上し、エンジンブレーキの増幅も可能に。
アクラポヴィッチ製マフラーにも変更を加え、排気音量を5dB低減した他、フロントには、オーリンズ製第3世代の新型スマートエレクトロニック43mm S-EC3.0(SV)NPX USDフォークを採用するなどで、走りのグレードをさらにアップしていることなどが特徴です。
●CBR600RR
今回のミラノショーで、ホンダは600ccスーパースポーツの「CBR600RR」の新型も発表しています。こちらは、すでに、2023年8月の鈴鹿8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)などで日本でもお披露目されていますが、欧州では初披露となります。
欧州モデルの主な特徴は、前モデルから大幅な改良を受けた最高出力89kW(121PS)/14,250rpm、最大トルク63Nm(6.42kgf-m)/11,500rpmのエンジンを搭載していること。
また、カウリングにはウイングレットを装備する他、アルミ製スイングアーム付きツインスパー・アルミフレーム、41mm径のショーワ製SFF-BP倒立フォーク、ショーワ製ユニットプロリンク・リアショックなども採用。
また、CBR1000RR-Rファイヤーブレード譲りの6軸慣性計測ユニット(IMU)も装備。TBW(スロットル・バイ・ワイヤー)の制御はもちろん、5つのライディングモード、コーナリングABS、9レベルのHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)、ウイリー・コントロール、リヤ・リフト・コントロール、エマージェンシー・ストップ・シグナルなどを装備しています。
さらに、電子制御ステアリングダンパー、アシスト&スリッパークラッチ、クイックシフターも標準装備するなどで、より走りに磨きを掛けていることもポイントです。
CBRシリーズでは、他にも、欧州など海外専用モデルである500ccスポーツモデル「CBR500R」の新型もお披露目しました。
また、650ccのフルカウルモデル「CBR650R」と、その兄弟車でネイキッド仕様の「CB650R」には、世界初の「ホンダ E-クラッチ(Honda E-Clutch)」を搭載した2024年モデルも発表。
発進/停止はもちろん、シフトアップ/ダウンなどでもクラッチレバー操作が不要な最新機構を採用することで(通常のクラッチレバー操作による変速も可能)、ライダーの疲労軽減などを実現した注目モデルです。
●CRF1100アフリカツイン/アドベンチャースポーツ
一方、アドベンチャーツアラーの「CRF1100アフリカツイン」と、電子制御サスペンションなどを装備した上級モデル「CRF1100アフリカツイン アドベンチャースポーツ」の新型モデル。
これらモデルでは、いずれも1082cc・直列2気筒エンジンの圧縮比、バルブタイミング、吸気ポート、ECUセッティングを変更することで、最大トルクを7%向上(従来よりも750rpm低い回転域で発生)させています。
また、「ATモード」と「MTモード」が選べるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様車では、新しいエンジン性能に合わせて、ダウンシフトが早まり、コーナリング検出性能も向上。さらに、発進や1〜2速間のシフトがより自然になるなどの改良が施されているといいます。
加えて、チューブレスタイヤの採用や、大型で5段階の調整が可能なスクリーンの追加などで、実用性もアップしています。
なお、CRF1100アフリカツイン アドベンチャースポーツでは、フロントホイールを21インチから19インチに変更し、ワイドなフロントタイヤも採用。オンロード走行性能を向上させていることも注目です。
●新型モデルの日本導入に期待
これら新型モデルは、日本での導入などについては現在アナウンスされていません。でも、日本にもラインアップがあるCBR1000RR-Rファイヤーブレード/SP、CBR600RR、CBR650R、CB650R、CRF1100アフリカツイン/アドベンチャースポーツあたりは、新型が国内導入される可能性も十分にあります。
また、完全ブランニューで、現在は国内設定なしのCB1000ホーネットも、かつて日本で販売されていた人気シリーズの後継モデルといえますから、ひょっとすると、ひょっとするかもしれませんね。
ともあれ、これらモデルの続報に期待大です。
(文:平塚 直樹)