■別発想の盗難防止システム登場
見るのが嫌なニュースのひとつに、車両盗難の話題があります。
ここでは車名や詳細内容を控えますが、先日もニュースで、よせばいいのに人気車種の車名を堂々と掲げながらその盗難の手口などを報じていました。
車両標準のセキュリティシステムへのハッキングでシステムをだまし、車をスタート。秘密の場所に移して部品単位にまで分解し、海の向こうに運んで現地で組み立てて売りさばく・・・組織的犯行なのは明白。
いまどきの電子システムで固められた車両システムを突破するデバイスを作り上げるほどならアタマもいいのだから、組織の連中もその優秀な頭脳を世の中に役立つことに活かせばいいのにと思わせられます。
だいたい、盗んだものを売ったカネで悠々自適な暮らしを楽しむ神経が理解できない。あんたが盗んだ品の持ち主はいまごろショックを受けて悲しんでいるんだよ?
筆者がこのニュースを読んだのは夜中だったのですが、読めば「自分の車は大丈夫か?」と、夜中であるにもかかわらず車庫まで無事を確認しに行きたくなる衝動にかられます。
この手のニュースを見ると、自分が車を盗まれたと仮定したときどうなるか、考え込むことがあります。
まずはショックを受ける。
警察を呼んだり事情聴取を受けたり・・・ひとまず所定の動作、手続きを終えたら、心中おだやかでないままひとまず日常に戻ります。違うのは手元に車がないことだけ。
そのときの心理はいかなるものか。
・警察は本気になって探してくれているのだろうか?
・愛車はいまごろどんな目に遭っているのか? いないのか?
・いまこうしている間にもできることはあるのか? ないのか?
・せめて場所がわかれば・・・
いまのところ想像できるのはこの4つです。
自動車用品メーカー大手「カーメイト」は、この「いまごろ」の部分に着眼しました。
ここはジャパンモビリティショー2023のカーメイトブース。
「次世代カーファインダー」。
車は盗まれないことがいちばんで、そのためにセキュリティを施すのがいいのですが安くはないし、つけたところでいたちごっこなのも事実で、盗まれるときは何の対策をしたって盗まれる。
この「次世代カーファインダー」は、盗難防止ではなく、不運にも盗まれた後の車の居場所を手持ちのスマートホンの地図上で表示するシステムです。
さきの「いまごろどこにあるのか」が目でわかるだけでも、心理的なショックはいくらかでも和らぐのではないかと思うわけです。
嫌なニュースを見たばかりだっただけに、筆者が興味を惹かれたのも当然でしょう。ニュースを見て筆者が抱いた、さきの「4つの心理」に対する回答を、たった数日で出してくれたかのようなカーメイト「次世代カーファインダー」から、まるで「こっちいらっしゃぁ~い」と手招きされたような気分です。
機能は次のとおり。
1.リアルタイム位置表示機能
離れた場所からでも車の位置をすぐに確認できる。盗難にあった場合、現在地ばかりか、走行ログによって移動軌跡も把握できる。
2.衝撃検知機能
車上荒らしなどによって車に衝撃が加わると加速度センサーが検知、即座に手元のスマートホンに報知する。
3.移動検知
GPSや加速度センサーなどの併用で、盗難など車の正当ではない移動を高い精度で検知するとスマートホンに報知。
展示モデルで試してみました。
R34スカイラインGT-Rを盗んでみましょう。
そのプロセスをご覧ください。
注意したいのは、あくまでもこの「次世代カーファインダー」は車を盗まれた持ち主に、その愛車の居場所を知らせるだけのもので、「次世代カーファインダー」が持ち主に知らせると同時に警察なりセコムなどの契約した警備会社なりに通知するという機能は持ち合わせていません。
通常、車が盗まれた場合は警察に通報することになりますが、この「次世代カーファインダー」を備えていれば通報時にいまの車の居場所をも知らせることができ、発見を早められる可能性があるわけです。
発売は来年2024年を予定しているとのこと。
価格は未定ながら2万円あたりを想定。
気になるのは月額ですが、こちらも決定していないとのことながら、500~1000円以下/月にしたいと。筆者の想像よりは安かったので好感を持ちましたが、その安さには秘密があり、さきに述べたように連携が「次世代カーファインダー」とユーザー間にとどまっているため。これが最近の任意保険のように、保険会社ないし警備会社とリンクするなどしようものならこの額では収まらなくなると思います。
何度も書くように、盗まれないのがいちばんです。あるいは盗まれたとしてもその瞬間に保険会社や警備会社に通報してくれるシステムを持てばいいのですが、いいものは高いもので、安いとはいえない維持費=月額に難色を示すひとも多いだろうと思います。
盗まれて発見までの時間をいくらかでも早める可能性が上がるにとどまらず、発見までの車の現状が気になり、「いても立ってもいられなくなる」心理をいくらかでも緩和・・・これを安価に実現してくれるなら、この「次世代カーファインダー」、筆者もひとつほしいと思いました。
「次世代カーファインダー」はたぶん展示のための仮称で、発売時はカタカナを羅列した、響きのいい、頼もしいネーミングになることでしょう。
2024年発売を待ちましょう。
(文・写真:山口尚志)