カワサキモータース、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機などからなる「HySE」が水素エンジン搭載車で「ダカール2024」に挑む【ジャパンモビリティショー2023】

■世界一過酷なラリーで小型モビリティ向けの水素エンジンの課題を洗い出す

欧州での合成燃料の容認をはじめ、トヨタがレースの現場で挑戦している水素エンジンや、マツダのバイオディーゼル燃料、合成燃料をレースで使うなど、カーボンニュートラル実現に向けて、バッテリーEV以外の選択肢も模索されています。

カワサキモータース、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機の正組合員からなる技術研究組合「水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE: Hydrogen Small mobility & Engine technology)」は、特別組合員である川崎重工、トヨタ自動車とともに、2024年1月5日から1月19日までサウジアラビアで開催される「ダカール2024」の新カテゴリー「Mission 1000」に、水素燃料エンジン車「HySE-X1」で参加すると表明しました。

水素燃料エンジン車「HySE-X1」。写真はイメージ
水素燃料エンジン車「HySE-X1」。写真はイメージ

「Mission 1000」とは、水素エンジンをはじめ、電動化やバイオフューエルを使ったハイブリッドなど、カーボンニュートラルに向けた次世代パワートレインの技術開発を自動車メーカーに促す「Dakar Future Program」の一環として、新たに導入されるカテゴリーです。

「Mission 1000」に参加するHySEは、世界一過酷なモータースポーツといわれる同ラリーで、研究中の水素燃料エンジンが搭載された「HySE-X1」で挑みます。二輪、軽四輪、小型船舶、建設機械、ドローンなどの小型モビリティで現在分かっていない課題や、容易に想像できない問題点を早期に抽出。

過酷な条件下で、水素エンジンの基盤技術構築を加速する狙いも込められています。また、全世界で注目されるダカールラリーへの参加を通じ、HySEの存在感や取り組みをアピールする狙いも込められています。小型水素モビリティの実現に向けたグローバルで業界の垣根を超えた仲間づくりを図る構えです。

今回、出走する「HySE-X1」は、協力会社であるオーバードライブレーシング社(ベルギー)の車体フレームがベース。水素燃料タンクや燃料供給系統の設置のためのレイアウト変更が行われた車体に、HySEによるモーターサイクル用水素燃料エンジンを搭載。出走にかかる水素充填やメンテナンスなどの作業も、同社の協力のもと行われます。

なお、「ジャパンモビリティショー2023」のモータースポーツプログラムブースに、モックアップの「HySE-X1」が展示される予定になっています。

ヤマハ発動機の小松賢二(HySE理事長)氏は、「研究の成果を分かりやすい形で伝えたいという想いがあり、ラリーに参加します。過酷な環境下での課題を洗い出すのが狙いです。技術を磨くことで、水素エンジン小型モビリティ成立に必要な技術テーマを解決したいと考えています」とコメントしています。

■水素燃料エンジン車「HySE-X1」
全長×全幅×全高:3530mm×2070mm×1700mm
車両重量:約1500kg
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク直列4気筒スーパーチャージドエンジン/DOHC 4バルブ
総排気量:998cc

(塚田 勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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