目次
■西武なのに地下鉄の車両をリバイバル?
2023年10月1日に、西武有楽町線が開業40周年を迎えました。西武鉄道はこれを記念して、開業時から相互乗り入れをしている営団地下鉄(現・東京メトロ)7000系の黄色い帯を再現した「西武有楽町線開業40周年記念車両」の運行を、10月1日から開始しました。
なぜ、西武の車両ではなく、営団・東京メトロの車両の帯色をリバイバルしたのかというと、実は、開業時の西武有楽町線は営団7000系を借り入れて(事実上は片乗り入れ)運用していたからです(後述)。
開業時に自社の車両ではなく、他社の車両を借り入れる例は他にもありましたが、リバイバルで借り入れ車両を再現したのは珍しいことだと思います。
そんな西武有楽町線とは一体どんな路線なのでしょうか?
●西武有楽町線という路線名の由来は?
西武有楽町線は、池袋線の練馬駅を起点として、東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原までの2.6kmを結ぶ路線です。全区間が東京都練馬区内にあり、そして「有楽町駅」は通っていません。
では、どうして西武有楽町線という路線名になったのでしょう?
西武有楽町線は、運輸省(現・国土交通省)の都市交通審議会による都市計画第8号線の一部として計画されました。第8号線のうち、小竹向原〜新木場は営団地下鉄有楽町線として開業しました。
練馬〜小竹向原間は、西武鉄道の路線として建設。第8号線=有楽町線の一部ではありますが、地下鉄の有楽町線と区別するため、会社名を冠した西武有楽町線としました。路線名に鉄道会社名が冠する例はそれほど多くありませんが、西武鉄道には西武秩父線という例があります。
●新桜台駅はやむを得ない事情で誕生?
西武有楽町線には、途中駅として新桜台駅が設置されています。最初の計画では、西武有楽町線の開業と同時に、池袋線練馬駅を高架化。営団地下鉄有楽町線も、営団成増〜小竹向原〜池袋間を延伸開業させて、池袋線・西武有楽町線・有楽町線の直通運転を開始する計画でした。また、新桜台駅を設置する予定もありませんでした。
しかし、池袋線の高架化工事が大幅に遅れていたため、西武有楽町線に新桜台駅を設置することとして、1983年10月1日に新桜台〜小竹向原間を開業させました。新桜台駅は池袋線桜台駅との乗換を考慮して設置しましたが、両駅の距離が離れていたこともあり、実際には乗換駅とは機能していなかったようです。
また、西武鉄道としては例のない地下駅となったため、駅の建設は営団地下鉄に委託。そのため、駅のデザインは地下鉄有楽町線に準拠していました。現在もホーム壁面の黄色いラインや乗車位置案内などに、その名残が残っています。
新桜台駅と終点の小竹向原駅は地下駅ですが、小竹向原駅は東京メトロが管轄しているので、西武直営の地下駅は今のところ新桜台駅だけ。ただし、2027年3月には、新宿線の新井薬師駅と沼袋駅が地下化される予定です。
●開業から11年間は営団地下鉄7000系で運行
西武鉄道は、有楽町線乗り入れ用車両の6000系を1992年から導入していました。しかし、西武有楽町線と池袋線の線路がつながっていなかったので、前述のように、営団7000系を借り入れて運行を開始しました。そのため、西武有楽町線は、まるで地下鉄有楽町線の支線のようでした。
西武有楽町線・練馬〜新桜台間が開業したのは1994年12月7日。同時に、池袋線練馬付近の下り線の高架化が完成し、西武有楽町線と池袋線下り線の線路がつながりました。そして、西武6000系が西武有楽町線・地下鉄有楽町線の直通運転を開始。開業11年後に、ようやく西武の車両が西武有楽町線を走るようになりました。
しかし、池袋線上り線はまだ高架化されていなかったため、西武有楽町線・練馬〜新桜台間は単線で開業。西武有楽町線と池袋線の直通運転は、この時点では行われませんでした。1998年3月26日に池袋線上り線も高架化され、池袋線と西武有楽町線・有楽町線の直通運転がスタート。同時に、西武有楽町線は全線が複線化されました。
実は、西武鉄道で全区間が複線となっている路線は、西武有楽町線が最初です。意外に思えるかもしれませんが、西武鉄道の本線である池袋線は池袋〜吾野間の路線で、飯能〜吾野間が単線となっています。また、もうひとつの本線である新宿線も、終点の本川越付近が単線です。
いろいろな意味で特徴がある西武有楽町線。2008年6月14日には東京メトロ副都心線との相互乗り入れも始まり、西武鉄道の車両が渋谷駅に直結するようになりました。
2013年3月16日からは、東急電鉄東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線との相互乗り入れも始まり、西武の車両が横浜方面へ直通するようになり、同時に東横線とみなとみらい線の車両が西武に乗り入れるようになりました。
2017年からは、有料座席指定列車「S-TRAIN」の運行も開始。西武有楽町線内には停車しませんが、平日は有楽町線に直通する通勤列車、土・休日は元町・中華街と埼玉を結ぶ行楽列車として好評です。
西武有楽町線はたった2.6kmの路線ですが、輸送ルートとしてはとても重要な存在となっていて、今後の発展にも期待したいところです。
(ぬまっち)