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■初代は軽のスペシャリティカー、2代目はミッドシップ4WD搭載SUV
1998(平成10)年10月8日、ホンダは1970年にデビューした「ホンダZ」の27年ぶりの復活を発表、発売は翌日から始まりました。
初代Zは、軽自動車初のスペシャリティカーでしたが、2代目ホンダZはミッドシップ4WDという、スペシャルな仕様の軽SUVに変貌したのです。
●初代ホンダZは軽初の本格スペシャリティカー
初代ホンダZは、クーペのようなスポーティなスタイリングを持つ軽自動車初のスペシャリィカーとして1970年に誕生。ヘッドライトを独立させた低いノーズに、傾斜させたAピラー、大胆にカットしたリア、その斬新でキュートなスタイリングと余裕のある室内空間が特徴でした。
パワートレインは、360cc直2空冷エンジンと、4速MTおよび3速ATの組み合わせ。追加された最上級グレードには5速MTが用意され、スペシャリティカーらしい俊足ぶりをアピールしました。
ホンダZは大ヒットにはなりませんでしたが、その後、スポーティなダイハツ「フェローMAX」や三菱自動車「ミニカスキッパー」、スズキ「フロンテクーペ」などが登場して、軽のスペシャリティカーブームの火付け役となったのです。
●2代目は、ミッドシップ4WDを搭載したSUVスタイルに変貌
2代目ホンダZは、初代とはコンセプトも機能もまったく異なる車に変貌。最大のポイントは、何といっても軽自動車としては贅沢な“ミッドシップ4WD”を採用したことです。
これは、エンジンを横置きにフロア下中央よりやや後ろ側に搭載し、ビスカスカップリング式センターデフによって前後輪を駆動するシステム。スーパーカーで採用されるようなシステムですが、もともとは軽トラ「アクティ」の4WDを改良したものでした。
パワートレインは、660cc直3 SOHCエンジン、およびインタークーラー付きターボ仕様の2種類のエンジンと、4速ATの組み合わせ。ミッドシップレイアウトで前後重量配分50:50の理想的な重量配分により、優れた走行性能と操縦安定性を実現。さらに4WDとの組み合わせによって、オフロード走行や雪道走行での走破性は、軽らしからぬ威力を発揮しました。
軽自動車として抜群の性能を発揮したホンダZでしたが、車両価格は114.8万円(無過給)/128.8万円(ターボ)で、当時の大卒の初任給が19.6万円(現在は約23万円)程度だったので、軽としてはやや高めの設定でした。
当時は、スズキの「ワゴンR」が開拓した実用性の高いハイトワゴンブームが市場を席巻していましたが、ホンダZは特異の性能で注目を集めました。とはいえ、販路で広く人気は浸透せず2002年に生産を終了しました。
●日本では消えてしまったミッドシップモデル
卓越した走行性能が特徴のミッドシップは、レーシングカーやフェラーリ、ランボルギーニといったスーパーカー、日本でも高性能スポーツカーや軽のスポーツカーで採用されてきました。
代表的なところでは、トヨタ「MR2&MR-S」、マツダ「オートザムAZ-1」、ホンダ「ビート」、初代&2代目「NSX」「S660」などです。ホンダZ以外にも、ホンダ「アクティ」「バモス」、トヨタ「エスティマ」、三菱自動車「i(アイ)」なども、ミッドシップレイアウトを採用していました。
しかし、最近まで販売されていたアクティシリーズは2021年、S660と2代目NSXは2022年をもって生産を終了し、2023年秋現在、日本で販売する日本車にはミッドシップの車は存在しません。
現在の日本市場における日本車は実用性重視の傾向が強く、スポーツカーのミッドシップならではのメリットを味わうことができないのです。
スポーツカーでもないホンダZのミッドシップ4WDの採用は、唐突なように思えますが、実は1963年にデビューしたホンダ初の4輪自動車「T360」は、ミッドシップレイアウトでした。以降、ホンダはスポーツカーや商用車に継続的にミッドシップを採用していたのです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)