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■これこそベストデザイン!という歴代アコード3台を振り返る
2023年9月21日に国内導入が発表された、ホンダの新型アコード。
シンプルで流麗な佇まいながら、5mに届かんとする巨体に「こんなの、もはやアコードじゃない!」なんて声があちこちから聞こえてきます。
そこで、今回は個人的に「これぞアコード!」という歴代3台のデザインを振り返ってみたいと思います。
●偉大な初代はヨーロッパの香り
まずはやっぱり初代。1976年、走りや乗り心地、経済性や安全性など、車に求められる要素をバランスよく調和(=アコード)させた「ヒューマン・カー」として登場。初代というと、どうしても低公害のCVCCエンジンが話題の中心になりますが、優れたスタイリングにも注目しなくてはイケません。
全体を見ると、70年代らしくクラシックカー的な雰囲気が残ったものですが、そのクリーンな佇まいがヨーロッパ調で美しい。フロントグリルは丸形4灯以外に無駄な要素がなく、シンプルかつスポーティ。適度に使われたメッキモールが、巧妙に車格感を示しているのも要チェック。
ハッチバックのカーブしたベルトラインは、MM思想によるビックキャビンを巧く取り込みつつ、躍動感を感じさせるもの。片や直線的なセダンは実に落ち着いており、一見同じ車に思えないくらいです。いずれも長方形のテールランプがモダンであり、実に端正な後ろ姿でした。
●歴代でもっともスタイリッシュと称される3代目
次は、やっぱり3代目(CA型)を取り上げましょう。80年代初め、ホンダはアメリカの若者に向けた「ヤング・アコード」の研究を通じ、リトラクタブルヘッドランプやフラッシュサーフェス、プレスドアといった要素を抽出。初代のデザインも手掛けた岩倉信弥氏の「4ドアのプレリュード」という着想により、1985年に登場したのが3代目です。
そのリトラクタブルランプによる低いフードや薄いボディは、プレリュードに準じるけれど、セダンらしく広いグラスエリアのビッグキャビンを合体させた手腕はお見事。なるほど、ここは強いカタマリ感を与えるプレスドアがいい仕事をしていますが、それでも全高はわずか1355mmというから驚きなのです。
さらに、ワンダーシビックに次ぐ超ロングルーフのエアロデッキは、高いベルトラインや見切り線で開口するリアハッチなど個性全開。ツートンのボディカラーも斬新でした。一新されたエンジンやシャシーも含め、3代目が日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのは必然だったのかもしれません。
●アコードのサブネームを持った異端児
3台目は1989年に登場した初代アコード・インスパイアです。「おいおい、それアコードじゃないだろう!」と突っ込まれそうだし、実際、本家4代目アコードは並行して販売されたのだけど、その存在感の強さは他の歴代アコードを一蹴するほど。ということで、今回はあえてベスト3に入れてみました。
レジェンドより一回り小さい4ドアハードトップボディは、トヨタのマークIIが牽引するハイオーナーカーブームに乗った格好。けれども、希有なFFミドシップレイアウトが2805mmという超ロングホイールベースと、アッと驚くショートオーバーハングを生み、ライバルとはひと味もふた味も違うプロポーションを獲得しました。
大型のコーナーランプを組み合わせたフロントグリルを初め、広いグラスエリアやサイドのプロテクター、横長の大型テールランプなど、効果的に配されたメッキモールが手伝って、従来のホンダ車にはない高い質感に。さらに、低く薄いボディの凝縮感がその品質感を倍増、3代目とはまったく異なる個性を得た点がキモなのです。
今回は「これこそベストデザイン!」と思える3台のアコードを振り返ってみました。
80年代の2台は、いわばホンダデザインのピークとも言える時期の傑作だけど、逆に言えばそれ以外のモデルは少々影が薄いかも? だから、シンプルデザインで登場した11代目が、新たな歴史を作ることができるかに注目なのです。