カワサキが発売する電動スポーツモデルは原付二種で販売されるか?【バイクのコラム】

■カワサキ初の電動バイク「Ninja e-1」と「Z e-1」を発表

フルカウルのスポーティなスタイリングは、まさに「Ninja」シリーズらしい。
フルカウルのスポーティなスタイリングは、まさに「Ninja」シリーズらしい。

モビリティのカーボンニュートラルは世界的なテーマであり、トレンドです。ゼロエミッションや電動化は二輪業界においても未来において重要な技術要素となっています。

そうした中、9月21日にカワサキモータースは、同社初となる電動モーターサイクルが発表されました。単なる発表ではなく、量産品としての発売を前提としたもので、2023年10月以降の発売開始もアナウンスされています。

あらためて、カワサキ初の電動モーターサイクルについての情報を整理すると、車種としてはフルカウルのスポーツモデルである「Ninja e-1」と、ネイキッドタイプでいわゆるストリートファイター的スタイルの「Z e-1」の2モデルでローンチするということです。

ひとまずは欧州からスタートするようで、現地法人のホームページを見ると、すでに「Ninja e-1」と「Z e-1」が量産モデルとして掲載されていることが確認できました。

●欧州では125cc以下と同等の扱いになるスペック

ネイキッドタイプの「Z e-1」。公表されているサイズは、全長1980mm×全幅730mm×全高1035mm。車両重量135kg(バッテリー含む)。
ネイキッドタイプの「Z e-1」。公表されているサイズは、全長1980mm×全幅730mm×全高1035mm。車両重量135kg(バッテリー含む)。

いずれも、欧州でのA1ライセンス(日本でいう小型二輪免許相当、最高出力11kW以下の二輪に乗れる)に対応した125ccクラスの性能を持たせた電動モデルです。

取り外し可能なリチウムイオンバッテリーを2個搭載するというのが、共通の基本設計となっています。両モデルとも駆動モーターは空冷タイプで、定格出力5kW、最高出力9kWというスペックです。

モーターと駆動輪(リヤタイヤ)をつなぐのは、オーソドックスにチェーンとなっているのも、モーターサイクルぽいスタイリングに貢献しているといえます。このクラスの電動バイクでは、インホイールモーターを採用するケースも少なくありませんが、やはりチェーンがあったほうが、見た目がバイクらしくて引き締まると感じるライダーも多いのでは?

なお、バッテリーのスペックは電圧が50.4V、容量が30Ahと発表されています。

交換型バッテリーの電動バイクで先行しているホンダとカワサキは、交換型バッテリーについてのコンソーシアムを組んでいますが、公表されているスペックを見る限りは、カワサキ独自のバッテリーパックとなっているようです。

●日本で原付二種とするための課題とは?

400ccクラスの車体を使うことでスポーツモデルとしての風格も実現している。
400ccクラスの車体を使うことでスポーツモデルとしての風格も実現している。

交換型バッテリーは、家庭用コンセントで充電できる仕様となっており、1個あたりの充電時間はフル充電(0%から100%)で約3.7時間と発表されています。

そして、いずれのモデルも2個のバッテリーがフル充電で走りだした際の航続距離は72kmということです。立派な体躯からすると物足りない気もしますが、原付二種相当のモーターサイクルとしては、十分な航続距離といえるのかもしれません。

ちなみに、最高速度はNinja e-1が88km/h、Z e-1は85km/h。航続距離を稼ぐECOモードにすると、Ninja e-1:64km/h、Z e-1:62km/hに最高速度は制限されるということです。

ところで、気になるのは日本での販売計画。カワサキモータースのニュースリリースには『国内での発売時期や販売価格、諸元等の情報については、決定次第カワサキモータースジャパンより発表します』という文言がありますので、時期は未定ながら日本での発売は確実といえます。

そこで気になるのは、日本では125ccクラス=原付二種のレギュレーションに合致したスペックとなるのかどうかという点。

日本において電動バイクが原付二種となるためには、定格出力が1000W以下であることが条件となります。現時点で発表されているスペックでは、定格出力が原付二種のそれを大きく上回っていますので、このままでは軽二輪(125cc超250cc以下相当)となってしまいます。しかしながら、最高速度を考えると高速道路を走れる軽二輪とするのは適切でない印象も受けます。

日本での発売時には、原付二種のレギュレーションに合わせてモーターの定格出力を絞ってくるのか、それとも軽二輪相当の電動モーターサイクルとして販売するのでしょうか。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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