目次
■ミニバンの使い勝手を左右する「内装」に注目!
トヨタ・ノア、ホンダ・ステップワゴン、日産セレナの3台を多角的に比較検証する特別企画。デザイン編、走り編に続いてお届けする第3回のお題は、ずばり「内装の作り」です。
シートアレンジの工夫やメーター周りのデザイン、空間の使い方までを徹底チェック。自動車ジャーナリスト、レーシングドライバー、モデル女子という個性的な3人のレビュアーが見て乗って使って気づいた、ここが好き!な部分と、もうちょっと!なポイントをご紹介します。
●トヨタ・ノアの内装の作り
・工藤貴弘「3列目の跳ね上げ格納の工夫で荷室が広大」
格納した状態(左右跳ね上げ)の3列目がコンパクトに収まり、荷室が広く使えるのがいいですね。ただし、3列目の窓を大きくふさぐのが惜しい。同じ跳ね上げでもセレナは窓がここまで隠れないですから。
一方で、セレナは跳ね上げたシートの張り出しが大きくて荷室を狭めてしまうので、“広いけど窓が隠れるノア”と“窓が残るけど狭いセレナ”と、考え方の違いが面白いし、買う人はよく比べていいと思ったほうを選べばいいと思います。「どっちをとるか」であり、「どっちがよくて、どっちが悪い」という話ではないですよ。
・井出有治「1発でスッキリ収まる3列目の仕組みに感服」
ノア、この3列目シート収納方法は素晴らしい! セレナと同じ跳ね上げ式だけど、ちゃんとサイドガラスの窪み部分にスッポリ収まって、出っ張り感も無くスッキリしますね。しかも1発でバンと跳ね上げられるし。これ、多分旧型の使い勝手からフィードバックして収めるようになった気がします。じゃないと、こんなうまい具合の窪みなんか作れませんよ!
インパネのスイッチ類は、けっこう昔っぽいというか、スタンダードというか、トヨタっぽいというか。使い勝手は良さそうですけどね。シートレイアウトも2列目までは独立シートだからアルヴェルっぽい感じ。子育て中の自分としては、2列目はベンチシートが理想かな。
ミニバンすべてに言えることかもしれないのですが、インテリアの使い勝手って、ずっと使い続けて気付くことが多そう。カタログで見逃している機能とかがきっとあって、「え、こんなところにこんなのが♪」っていう感じで、使い続けてこそ良さが見つけられる、みたいな。だから、今日だけちょっと体験したからって、まだまだ見逃しているところもあるでしょうね。
・久保まい「小物やドリンクを収納できる空間が豊富!」
シフトレバーが、センターディスプレイのすぐ下にあることで、運転席と助手席の間のスペースが広くとられていました。小さいカバンやスマホなどだったら軽く置けると思います。また、ドリンクホルダーも運転席、助手席それぞれの前にひとつずつと、運転席と助手席の間にもふたつ、ドアにもひとつずつと沢山あり、いいなですね。ドリンクホルダーって意外と沢山使いますよね(私だけ?笑)!
アームレストは、シートと一体型で少し幅が狭いかなと感じました(個人的には、アームレストは幅がある程度あって安定感が欲しいです)。
●ホンダ・ステップワゴンの内装の作り
・工藤貴弘「居心地がいいシンプルなリラックス空間」
昔、「デラックスよりリラックス」というクルマに関するCMキャッチコピーがありましたが、ステップワゴンのインテリアはまさにソレ。これ見よがしなラグジュアリーさは排除する一方で、シンプルながら居心地がよくてリラックスできるインテリアを実現していますね。ホント、居心地いいです。
・井出有治「キャビン全体でスペースの使い方が上手い!」
ステップワゴンのシフトって、全部ボタン式なんですよね。初めて乗る方は迷うかも? でもコクピット周りは今っぽくていいですね。スイッチ類もスッキリしているし、モニター画面も大きくて見やすい。運転席に座っても、腰回りが今日の3台中で一番広いから、ゆったり運転するには1番。
それに、なんといってもステップワゴンの推しドコロは、3列目シート。スッキリと床下に納まってくれるのはポイント高し! シートが収まるスペースは収納空間としても使えるので、3列目を使用していても、荷物がたくさん入れられる。よく言う“ゴルフバック何個積める?問題”も、4人+4セットは問題なくいけますね。ミニバンっていうからには、やっぱり荷物はたくさん載せられないとね。容量は多いに越したことないです。
他にも、ゴミ袋用のフックやサングラス入れ、USB、コンセントなど、パッと感じたところ、ステップワゴンが1番使い勝手は良さそうな感じ。だけど、オプションのドラレコは後付け感たっぷりで…イマイチ! メーカーオプションなら、もっとスッキリ収まるように装着したいところです。
・久保まい「シフトセレクターやエアコンの操作性が◎」
シフトは全てボタン操作です。バックギアも、ボタンを下に引くような動作で簡単に入るので、最初は慣れませんでしたが、慣れたらレバー操作よりも楽なのかなと思います。
ディスプレイ下のシフトボタンや、エアコンの操作ボタンがある位置は、他の車種よりも少し角度が付いているので、かなり見やすく使いやすかったです。ドリンクホルダーは引き出しタイプでした。
●日産セレナの内装の作り
・工藤貴弘「セパレートにもベンチにも変身する2列目シートが独創的」
ノア&ヴォクシーやステップワゴンにはないセレナのインテリアの魅力は、2列目の変形。通常は2人掛けのセパレートシート(左右が独立したシート)でゆったり座れる一方、必要とあれば3人掛けのベンチシートに早変わりする仕掛けはなかなかのアイデアですね。
ただ、ノア&ヴォクシーのような2列目の超ロングスライド機構がないのは悩ましい…(ただし、今回の撮影車両「ルキシオン」の2列目は2人掛け専用ですね)。
・井出有治「3台の中でコクピット周りが一番今っぽい」
セレナは、インフォテインメントモニターがバーン!としていて、横長で大きくて見やすくて、メーター類も1番かっこよく、3台中では1番今っぽいですね。
それに、オプションのドラレコの収め具合は3台中で1番! フロントガラス上部のルームミラーのところ(なんていうんだろ?)の中に収納されているから、どこについているか分からないようになっています。絶対にコレでしょ! 他2台がホント、残念…。
それと、セレナだけステアリングが円形じゃなくてDシェイプ。コレ、乗り降りの際に足が引っ掛かりにくくていいですよ。
しか~し! 3列目シートの収め具合、これは3台中ビリですね。この出っ張り感は狭さを感じさせるし、ベルト固定もやり辛い。1発で収められて出っ張りも無いノアのように、ぜひアップデートしてもらいたいところです(ボクの旧型セレナも同パターンで残念)。
・久保まい「大ぶりのセンターコンソールボックス兼アームレストに花丸!」
ナビとメーターのディスプレイがつながっていて大きく、表示も見やすかったです。ハンドルも丸い円形ではなく、ハンドルの下部分が直線のD型と呼ばれるデザインだったので、膝や脚が当たらなくていいなと思いました(セレナは足元が広いのでハンドルに脚が当たる感覚は、私は全くなかったです)。
運転席と助手席の間には、大きなコンソールボックスがあり、そこがなんと、アームレストも兼ねています! 広くて大きくて非常に良い! 3車種の中で1番良かったです♪ 助手席の方と兼用なので、仲良く使ってください(笑)。
【レビュアー紹介】
工藤貴弘:若手フレッシュ自動車ライターがいつの間にか大御所のひとりに。大雑把な部分から重箱の隅まで、走りの車種からのんびり車種まで、あらゆる知識と興味が豊富。
井出有治:元F1ドライバーにして現在一児の父。子どもが生まれるまではミニバンに興味なかったものの、もっか愛車セレナを子守り仕様へと改装するのに夢中。
久保まい:車、タイヤへの愛があふれる長身モデル。運転大好きで、愛車のミッドシップスポーツカーが修理不能になって、次の購入車には再び同じ車種のMTを選択!
●トヨタ・ノア ハイブリッド S-Z E-Four 主要諸元
全長×全幅×全高:4695×1730×1925mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1710kg
エンジン:直列4気筒
総排気量:1797cc
最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
フロントモーター最高出力:95ps(70kW)
フロントモーター最大トルク:185Nm
リヤモーター最高出力:41ps(30kW)
リヤモーター最大トルク:84Nm
駆動方式:4WD
トランスミッション:電気式無段変速機
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/60R16
車両本体価格:389万円
●ホンダ・ステップワゴン e:HEV スパーダ プレミアムライン 主要諸元
全長×全幅×全高:4830×1750×1845mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:1840kg
エンジン:直列4気筒
総排気量:1993cc
最高出力:145ps(107kW)/6200rpm
最大トルク:175Nm/3500rpm
モーター最高出力:184ps(135kW)
モーター最大トルク:315Nm
駆動方式:FWD
トランスミッション:電気式無段変速機
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/55R17
車両本体価格:391万2700円
●日産セレナ e-POWER ルキシオン 主要諸元
全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1850kg
エンジン:直列3気筒
総排気量:1433cc
最高出力:98ps(72kW)/5600rpm
最大トルク:123Nm/5600rpm
モーター最高出力:163ps(120kW)
モーター最大トルク:315Nm
駆動方式:FWD
サスペンション:前ストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/65R16
車両本体価格:479万8200円
(写真:萩原 文博/まとめ:クリッカー編集部)