「ヤマハ発動機」グループが、癌やコロナを駆逐する…かも? 医療分野の新会社「チューニングフォーク・バイオ」を設立

■ヤマハ発動機が設立した新会社「チューニングフォーク・バイオ」って何?

表面実装機(産業用ロボット)の技術を医療に応用した「セルハンドラー」。
表面実装機(産業用ロボット)の技術を医療に応用した「セルハンドラー」

今どき、企業の異業種進出は珍しくありませんが、あのヤマハ発動機が医療分野に関わっていることをご存知の方はそれほど多くないかと思います。

端緒は、2017年に発表した表面実装機(産業用ロボット)の技術を医療に応用した「セルハンドラー」という、細胞ピッキング&イメージングシステム。この際にヤマハ発動機は、福島県立医科大学 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター(以下、TRセンター)とタッグを組み、医療・健康技術開発の礎を築きました。

そして今回、ヤマハ発動機はTRセンターが開発した「タンパク質マイクロアレイ(タンパク質を高密度でスライドガラス上に転写する技術を活用したもの)」のデータを、「独自の生命情報科学技術(バイオインフォマティクス)によって解析し、健康状態や診断などの指標(バイオマーカー)として適した抗体を選び出し、診断に適用できるシステム」を構築する新会社「チューニングフォーク・バイオ」を米国のデラウェア州に設立しました。

●健康状態を可視化し、発症前に病気を未然に防ぐ

チューニングフォーク・バイオ設立
抗体プロファイリング事業が目指す課題

ヤマハの象徴である音叉、すなわちチューニングフォークを社名に冠したこの新会社は何をするのか? 超簡単に言えば「血液中の抗体を分析して健康状態を可視化する」というもの。

ヒトは現在、健康な状態か病気の状態で大別されています。それは、疾病発症までのどの段階にあるのかわかりにくいためです。しかし、ここに抗体プロファイリングを導入すると、健康な状態と病気の状態に加え、「未病の状態」を把握することが可能となり、疾病発症を未然に防ぐことができるというわけです。

●将来的には癌や認知症、コロナなどの疫病の発症を防止する

チューニングフォーク・バイオ設立
抗体プロファイリングの流れ

具体的には、総計2万種類を超える「マイクロアレイ上のタンパク質(抗原)と、血液中に含まれる抗体との結合状態を計測することで、個人が持つ抗体を網羅的に探索」し、「健康状態や診断などの指標(バイオマーカー)として適した抗体を選び出し、診断に適用できるシステムを構築」。

さらに、「個人の抗体を疾患データや健常データと比べることで、健康上のリスクを可視化。疾患の発症の抑止や、個人の状況に合わせた最適な薬の選択に貢献し、人々の前向きな人生設計を支える診断サービスの提供」を行うとのこと。

中枢系疾患に特異的な抗体を搾りん込んだ解析例。
中枢系疾患に特異的な抗体を搾りん込んだ解析例

つまり、どんなことが可能になるのか? なんと中枢系疾患(認知症など)や癌、さらに新型コロナ後遺症などの原因を探りあて、これに対処、あるいは未然に発症防止を目指しているというのです。

新型コロナ後遺症に特異的な抗体を絞り込んだ例。
新型コロナ後遺症に特異的な抗体を絞り込んだ例

こうした目的をもつ抗体プロファイリング事業を行っている企業は世界的にみても数社しか存在せず、その中でも最高の技術を持つと自負しているのがチューニングフォーク・バイオというわけです。

●抗体プロファイリング事業が実現する未来

チューニングフォーク・バイオのロゴにもヤマハの象徴である音叉が付される。
チューニングフォーク・バイオのロゴにもヤマハの象徴である音叉が付される

難しい専門用語がバンバン出てきましたが、要はヤマハ発動機が培ってきたデータアナリストとしての技術が、医療を飛躍的に発展させる可能性を秘め、それを本格的にビジネスとして展開するということです。

事業規模としては2024年度で数億円、さらに数年後にその規模は数十億円にまで成長する見込みですが、当面はBtoBとしてであり、我々一般人がその恩恵を直接享受するのは早くても2年は必要だとか。

ともあれ、認知症などの中枢系疾患や癌の予防が実現する未来が見えてきたのは嬉しいですね。

(文:甲斐 貴之/画像:ヤマハ発動機)

【チューニングフォーク・バイオ 事業紹介】

 

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