目次
■ベースモデルは363万円、CEV補助金で実質298万円です
先日プロトタイプの試乗レポートをお届けしたBYDの新型車ドルフィンながら、その時は価格を公表しておらず評価を定められなかった。クルマという商品、価格で魅力度や商品力が大きく左右されます。果たしてドルフィンの価格やいかに? まず航続距離400kmと紹介されているベースモデルだけれど、363万円となった。65万円のCEV補助金対象車のため実質298万円になる。
早い段階で「補助金を使えば300万円を切る」と言われていたのはベースモデルでした。ちなみにベースモデルといっても文字通りフル装備! ADASは現在実用化されている全ての機能が付く。
具体的に書くと、自動ブレーキは当然のこと、ブラインドスポット警告や前後のクロストラフィック警告&ブレーキ等々。衝突安全性だって日本車では普及していない運転席と助手席の間のエアバッグまで付く。
さらにシートは電動だし、縦にも横にもなる大画面液晶のナビだって標準。ほぼ同じサイズで100万円高いリーフ(40kWh)の最上級グレードと比べても装備内容は50万円分くらいの上乗せだと思う。電池は燃えずクルマの寿命と同じ耐久性持つリン酸鉄リチウム電池を使っている。これが日本車であれば飛びついていい価格だ。いや、韓国車であっても商品力は抜群に高い。BYDとしちゃ自信満々かと。
●BYDドルフィンは、おすすめか? いや、ちょっと待て!
それなら「おすすめ」かと聞かれたら「もう少し待った方がいい」と応えておく。一番の懸念は信頼性。付いていると言っても、機能するかどうか不明。実際、試乗したプロトタイプは厳しかった。いくつかの機能は「試さないでください」状態。電子制御の場合、一番難しいのが限界時の味付け(調整と言い換えてもよい)。キチンと機能してくれれば何の問題もないけれど、日本仕様はやや不安残ります。
とはいえ『ATTO3』はユーロNキャップの試験車両としてピックアップされており、上の動画を見て頂ければ解る通り事故回避能力や衝突安全性で現在販売されている日本車の平均を超えている。ドルフィンも同じ機能を持つとカタログに記載されているため、市販車は問題ないのかもしれない。プロトタイプはADASの反応が心許なかったですけど。試乗する機会あれば、いろいろ試してみたい。
●「私はもう少し見守りたいと思う」
航続距離476kmになるロングレンジは407万円。欧州で電気自動車選びの時に皆さん参考にしている「EVデータベース」を見ると、実用航続距離で340kmとなっている。ほぼ同じ量の電池を積む日産リーフe+も340km。私はe+に乗っているけれど確実に走れる妥当なデータだと思う。参考までに書いておくとベースモデル255km。ロングレンジもCEV補助金が65万円なので、実質342万円だ。
44万円差で航続距離が30%以上長く、0~100km/h加速が10秒から7秒になる大出力モーターになる。自分で買うのなら迷うこと無くロングレンジを選ぶだろう。では国沢光宏は欲しいかと聞かれれば「いいえ」だ。クルマって命を乗せるもの。今まで接したBYDのスタッフを見ると、いろんな隠し事をしているように感じてしまう。何でもホメるメディアもあるけれど、私はもう少し見守りたいと思う。
日本で信頼性を勝ち取ればBYDは売れる可能性を持つ。
(国沢光宏)