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■ジウジアーロがデザインしたスタイリッシュクーペ
1971年(昭和46)年9月18日、スズキから軽自動車初の2シータークーペ「フロンテクーペ」がデビューしました。“二人だけのクーペ“のキャッチコピーとともに、ジウジアーロデザインのスタイリングで若者を魅了しました。
●スズライトの流れを汲むフロンテの歴史
フロンテクーペの源流は、日本初の軽乗用車「スズライト」の流れを汲んだ、1962年にデビューした「スズライト・フロンテ」です。
1967年には、スズライトの名前が取れた「フロンテ360」が登場。駆動方式をそれまでのFFからRRに変更、軽量ボディと360cc直3空冷2ストロークエンジンを組み合わせた軽快な走りによって、人気モデルとなりました。
さらに高性能スポーツバージョンの「フロンテSS360」は、最高出力が25PSから36PS(100PS/L)まで引き上げられ、最高速度は125km/h、0-400m加速は19.95秒と、軽自動車初の20秒切りを達成。小さな軽自動車でも、これだけ走れるということを実証して、軽のモータースポーツブームの火付け役になったのです。
●世界で最もコンパクトな2シータークーペ
フロンテ360に続いて、さらにスポーティなクーペとして登場したのが、フロンテクーペでした。
注目されたのは、イタリア人デザイナーの巨匠ジウジアーロのデザインをベースにしたスポーティなスタイリングでした。低いノーズに角型ヘッドライトを組み合わせた、全高が軽自動車の中で最も低いスタイリッシュなフォルムを採用し、軽ながらスペシャリティカーと呼ぶに相応しいモデルでした。
パワートレインは、37PSを発揮する356cc直3水冷2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はRRです。軽量なボディに加えて前後重量配分が優れていたため、性能は軽自動車の中でも際立ち、0-400m加速は、19.47秒を記録しました。
“二人だけのクーペ”というキャッチコピーとともに、ベースグレードの車両価格45.5万円で鮮烈なデビューを飾ったフロンテクーペ。ちなみに当時の大卒の初任給は、4.6万円(現在は約23万円)程度でした。
今でも軽の名車として取り上げられますが、2人乗りのクーペでターゲットが限定的であったために、販売は期待通りには伸びず、半年後には4シーターが追加され、2年後には2シーターは廃止されました。
●1970年代に出現した軽のスペシャリティカーとは?
スペシャリティカーの定義は曖昧な部分がありますが、一般的にはスポーツカーのようなスタイリングで、スポーツカーほどではないが、実用性にも配慮した高性能のクーペスタイルの車を指します。
かつて1970年代後半~1980年代にかけて、トヨタ「セリカ」やホンダ「プレリュード」、日産自動車「シルビア」などが有名ですが、軽自動車も1970年代スペシャリティカーブームが起こりました。
パイオニア的な存在は、1970年代に登場した「ホンダZ」とされ、続いたのが軽初の2ドアハードトップのダイハツ「フェローMAX(1970年~)」、三菱のファストバックに仕上げた「ミニカスキッパー(1971年~)」、そして2ドアクーペのスズキ「フロンテクーペ(1971年~)」などです。
当時はまだ車は高級品、比較的安価な軽のスペシャリティカーが、走り好きの若者から人気を集めていたのです。
近年の軽自動車は、実用性を重視した車が主流であり、特に軽についてはフロンテクーペのようなスポーティな車が復活するのは難しいと思われます。がしかし、スタイリングと性能を追求していた良き時代の名車は、いつでもすぐに思い出されるのです。ダイハツ・コペンは2代目となっていまでも販売中ですが、ホンダS660は生産終了となりました。いまこそ、個性的なパーソナル軽自動車が現れても良いのかも知れません。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)