30代サラリーマンがカッコだけで70年代アルファロメオに手を出したら【アルファロメオ・アルフェッタGT(1977)日記】

■1977年式アルファロメオ・アルフェッタ1800GT

●勢いだけのマイナー車購入&維持記録

これは都内在住の普通の30代サラリーマンが、“ほぼノリ”で1977年式アルファロメオ・アルフェッタGTを購入して維持する(orできなかった)様子を記録していく記事です。お暇な方はバカだなあと笑いながら見てやってください。

●都内の生活では、クルマは不要?

国内外メーカーの新車情報が溢れる自動車メディア「clicccar」でこんな事を言うのもどうかと思いますが、すくなくとも僕が都内で暮らす上では、クルマは必需品ではありません。

勿論、東京都在住でもクルマが必要な生活を送っている人は多いでしょう。常に大荷物で国内出張を繰り返すなら圧倒的にクルマがあるほうが楽ですし、子供が元気すぎて混雑した電車に乗せられないという声も聞きます。育児に関して言えば、フラフラしながら2人乗り3人乗りの自転車を漕ぐよりも自動車の方が遥かに安全でしょう。地図を見ている限り、都内にだって公共交通機関のアクセスが悪い地域もある様子。

でも僕の暮らしに限定すると、クルマが必要な日は多くありません。平日は都市部のオフィスに電車出勤して1日が終了します。勿論オフィスビルには従業員用の駐車スペースなんて存在しません。そもそもここ数年は在宅勤務が増え、家から一歩も出ない日が増えています。じゃあ休日はどうなのか?となっても、日常の買い物は徒歩で問題ない距離です。たまに都心に買い物に行くにしても、繁華街のコインパーキングは料金が怖くて使用できません。

都内のコインパーキング
筆者最寄り駅のコインパーキング料金。都心から離れた場所ですらこれだけの費用がかかってしまう。

でも僕の暮らしに限定すると、クルマが必要な日は多くありません。平日は都市部のオフィスに電車出勤して1日が終了します。勿論オフィスビルには従業員用の駐車スペースなんて存在しません。そもそもここ数年は在宅勤務が増え、家から一歩も出ない日が増えています。じゃあ休日はどうなのか?となっても、日常の買い物は徒歩で問題ない距離です。たまに都心に買い物に行くにしても、繁華街のコインパーキングは料金が怖くて使用できません。

じゃあ僕がなぜクルマを持っているのかというと、もっとしょうもない理由としか言いようがない。カッコイイ。気分転換。カッコイイ。ドライブ楽しい。旅行がラク。カッコイイ…。

●ガソリン車を取り巻く環境の変化

というヨコシマな考えを持つ筆者が30歳から8年間乗り続けたクルマがローバーミニ。clicccar読者には今更説明の必要もないですが、1959年にアレックス・イシゴニスの設計によりオースチン社とモーリス社から発売され、2000年にローバー社で生産が終了したあとも世界中で人気が続く、自動車史の中でも重要だとされている車種。休日のドライブを中心に金沢・京都などへの旅行を含めて5万キロほど過ごしましたが、その間トラブルに見舞われることも一切なく、ローバーミニとの暮らしを楽しんできました。

8年乗ったローバーミニ
8年乗ったローバーミニ。東京→京都旅行も問題なく利用できていた。

しかし、このまま一生をミニと共に過ごすこともいいんじゃないか?と考えてきた一方で、最近では別の気持ちも頭によぎるようになっていました。ガソリン車に乗れるタイムリミットが目前まで迫っているんじゃないか?好きな旧車が手の届かない相場になってしまうんじゃないか?他の車を経験せずに死んでいいのか…?

御存知の通り、この10年程で旧車を取り巻く環境はガラッと変わりました。まず空冷911の高騰を皮切りに、欧州の主要なメーカー・車種が次々に値上がり。さらに25年を基準とする米国の法規制や映画「ワイルド・スピード」の影響なのかはわかりませんが、GT-Rやスープラなどの90年代国産スポーツ車も、気がついたら庶民の手の届かない世界へと変わってしまいました。国産旧車も、スーパーカー並の相場で取引されるようになっています。

これらの中には一時的な投機バブルとしか考えられない値動きの車種もありますが、「100万200万でしかニーズがなかった時代と違い、手間をかけてレストアしても商売になるようになった」という背景もあり、大枠として一昔前の価格に戻ることはないとも言われています。

そんな事を考えながら過ごしていたある日、大学時代をともに過ごし今は某自動車メーカーに勤める友人が、池袋の居酒屋で決定的な一言を投げかけます。

西くんに詰められた池袋
西くんに詰められた池袋

「ローバーミニなんて守備的な選択をするとは思わなかった。もっと変なクルマを選ぶと思ってた。」

そうでした。僕の原点はビッグスクーター全盛期、高校卒業と同時に漢のフルローンで購入した、自分とほぼ同年齢のDUCATIにありました。西くんありがとう。残り少ないガソリン車ライフ、前のめりに過ごすことに決めました。

そうなるとあとは動くだけです。イメージを整理しつつ、中古車情報サイトを眺め続ける日々のスタートです。

●911かジュリア(初代)かはたまた…

まずは必要な条件と希望を整理します。

条件面はシンプル。ローバーミニはMTだしウインドウは手動だしパワステも無かったけど、気軽に利用できていた理由は「タフ」で「クーラー付き」だったから。自分の個体に限って言えば、エンジン・ミッション共用のオイルさえマメに交換していれば全く壊れる気配はありませんでした。まあミニは丈夫すぎたからもうちょっと気を使ってもいいかな。他に「一応4人乗り」「ミニより荷物が乗る」という条件もありますが、ここは変態過ぎるチョイスをしなければあまり気にしないでよさそう。

つぎは希望。希望を短く表現すると「古くてカッコいい車」。カッコいいを具体的な車種名で言い換えると、ポルシェ911(ビッグバンパー)、BMW2002シリーズ(マルニ)、MGB-GT、シトロエンCX、同GSやGSA、ボルボP1800ES、いすゞ117クーペ、アルファロメオジュリア(初代)。もう少し新しくなるとシトロエンBXやプジョー309GTiあたり…。

なかなかヤバそうな候補が並んでいます(笑)。この中で費用的に難しそうなのは911。またジュリアも近年では相場が上がり、メンテがきちんと施された車両は500万円超の値札がつくのが当たり前になっているようです。CXの形は大好物ですが、初心者が手を出してはいけないという噂もちらほら…。

●そういえばアルフェッタがあったじゃないか

おおよその候補出しが完了し、中古車情報サイトや旧車専門店のWEBサイトを見る生活が過ぎて1年が過ぎましたが、希望と予算(300万円まで)を兼ね備えた物件が全く出てきません。どうやら人気車種以外も、全体的に相場が上昇傾向の様子です。

そんな中でいつも通りネットサーフィンをしていると、一台のクルマが目に付きました。それが後に愛車となる1977年式のアルフェッタ1800GTです。初代ジュリアシリーズの後継として作られ、その後のアルファ75やSZまで続く、トランスアクスルFR時代の始祖となったクルマです。まずセダンが1972年にデビューし、3ドアのアルフェッタGTはジョルジェット・ジウジアーロによってデザインされて1974年にリリースされています。

アルファロメオ・アルフェッタGT
アルファロメオ・アルフェッタGT。最初は軽い気持ちで見に行きました。

そういえば雑誌ばかりで実車なんてほぼ見たことないのに、昔からこの形、大好きだったなあ。

ただし、この車種についても良くない噂が流れています。粗悪な鉄と防錆処理が原因でどんどん進行する錆、主にマーケティング戦略上の理由から1950年代レーシングカー(ティーポ158/159|愛称アルフェッタ)を踏襲した複雑なメカニズムを採用した事によるメンテ費用、エンジンと等速で回転するプロペラシャフトの振動、曖昧なシフトフィール…。以前古いアルファロメオ専門店の在庫を見に行った際も、「75やアルフェッタより古いジュリアのほうが維持しやすいよ」とのことでした。

一方でスマホに表示されているアルフェッタは、すくなくとも画面上は稀に見る美車。走行距離は6万キロ以下で助手席には吊り下げ式クーラーも後付されています。値札も予算内。

とはいえこの時点ではあまり期待しておらず、どうせ実際に見たらガッカリするんだろうなと思いながら、お店にメールし翌日見に行く予約を入れました。

●実車確認、からの決断

「普段は縁のないエリアだし、ドライブの目的地としては丁度いいか」程度の気分で妻と訪れた某中古車屋。そこには低い期待とは裏腹に、空冷911、ローバーミニ、サーブなどがひと目で良好だとわかる状態でストックしてありました。そしてそれらの横でオーラを放っている(ように僕は感じた)のが、アルフェッタGTでした。

店主いわく、神戸のコレクターの方がガレージに大切に保管していた車両で、プロペラシャフト周りも含めてメンテナンスは手間をかけているとのこと。たしかに現車は歪みはなく、ピカピカなわけではないけど塗装は綺麗で、ダッシュボードのひび割れもほぼ無いように見えました。

はい。一目惚れです。

アルフェッタGTのエンジンルーム
アルフェッタGTのエンジンルーム。ファンネル仕様でした。

ただ1点、錆に関しては、下回りは完璧な一方で助手席ドア下部に大きめの塗装の浮きがあり、他にもいくつか気になる箇所がありました。とにかくこの時代のアルファロメオは、錆については悪評が目立ちます。やはりこの車両もか…と思う一方で、応力がかかる部分は大丈夫な様子。気持ちの揺れを店主が察知したのか「錆びている箇所をすべて板金してコミコミ予算内で納車する」と追加提案して退路を断ちにきます。

結局、「検討します」と振り切るように退散したのも虚しく、お店近くのファミレスで妻を説得。そのままローバーミニの見積をとり翌日には購入する意思を伝えました。

こうしてほぼ勢いで決めた愛車選びでしたが、気になる部分はいくつかあります。まずは錆の噂。メンテナンスされていると言う一方で整備履歴をまとめた書類はありません。そもそも購入店舗はあくまで販売店のため、主治医を別に探す必要があります。予算内とはいえ半分はローンですし、修繕費用に余裕があるわけでもありません。まあでもイタリア車ってそうやって難しく考えたら負けだよねって事で、購入編を締めたいと思います

高橋 幸宏