スズキ「ワゴンR」デビュー。今も続くハイトワゴンブームのパイオニア、標準グレードは79.8万円で登場【今日は何の日?9月3日】

■軽の常識を変えた背の高いハイトワゴンというジャンルを開拓

1993年にデビューしたハイトワゴンのワゴンR
1993年にデビューしたハイトワゴンのワゴンR

1993(平成5)年9月3日、スズキから「ハイトワゴン」という新しいジャンルを開拓した軽自動車「ワゴンR」が登場しました。

ハイトワゴンは、従来の軽自動車の常識を覆す車高の高さによって圧倒的な居住空間を実現。現在も軽の主流となっているハイトワゴン&スーパーハイトワゴンの火付け役となりました。


●軽ながら圧倒的な居住性を実現した革命児ワゴンR

ワゴンRは、車高を「アルト」より頭一つ分(255mm)高くした1680mm、さらにホイールベースをクラス最大の2335mmに設定して、従来の軽自動車になかった圧倒的なサイズ感を実現しました。

ワゴンRのリアビュー
ワゴンRのリアビュー

右側1ドア、左側2ドアの個性的な左右非対称の3ドアで、サイドシルの高さを低くしてフロアとの段差をなくし、さらにシートの背もたれの角度を立てて自然な姿勢での乗降を可能にしたことが、大きな特徴でした。

パワートレインは、660cc直3 SOHCエンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ、1995年にはインタークーラー付ターボモデルを追加。車両価格は、ベースモデルで79.8万円、ハイグレード(4WDターボ)で119.5万円。ちなみに、当時の大卒初任給は約18万円(現在は約23万円)でした。

爆発的な人気を獲得したワゴンRは、発売から3年2ヶ月の1996年に累計販売台数50万台、1998年に登場した2代目も好調をキープして、2001年には累計150万台を達成。なんと2008年まで販売台数のトップの座に輝いたのです。

●熾烈な競争の場は、ハイトワゴンからスーパーハイトワゴンへ

ワゴンRの大ヒットを受けて、ライバルのダイハツからは1995年に「ムーヴ」、1997年のホンダ「ライフ」、1998年には三菱自動車「トッポBJ」が追走しました。

2005年に登場したスーパーハイトワゴンのダイハツ・タント
2003年に登場したスーパーハイトワゴンのダイハツ・タント

特に初代ムーヴは、完全にワゴンRを意識したハイトワゴンで、その違いはワゴンRが左右非対称の3ドアでしたが、ムーヴは使い勝手のよい4ドア、またムーヴはワゴンRにないターボモデルをラインナップするなど、ライバル心むき出しで、その後も長く、そして現在も熾烈なトップ争いを演じています。

さらに、2003年には、ダイハツが全高を1725mmまで上げた「タント」を発売。ハイトワゴンよりさらに全高を上げたスーパーハイトワゴンという新たなジャンルを確立させ、その後スズキ「パレット」「スペーシア」、ホンダ「N-BOX」、日産「デイズ」が続き、今やスーパーハイトワゴンが軽の主流となっています。

●軽のトップ10の上位6位までは、スーパーハイトかハイトワゴン

2022年度の軽新車ランキング1位のホンダのN-BOX
2022年度の軽新車ランキング1位のホンダのN-BOX

現在、新車販売における軽自動車のシェアは、ほぼ40%に達し、その中でハイトワゴンとスーパーハイトワゴンを合わせると、軽乗用車の7割を超えるシェアを占めています。

2021年登場の新型ワゴンR、現在もスズキの看板モデル
2021年登場の新型ワゴンR、現在もスズキの看板モデル

ちなみに、2022年度の新車ランキングは、
1位:ホンダ「N-BOX(SH)」
2位:ダイハツ「タント(SH)」
3位:スズキ「スペーシア(SH)」
4位:ダイハツ「ムーヴ(H)」
5位:スズキ「ワゴンR(H)」
6位:日産「ルークス(SH)」
7位:スズキ「ハスラー(SUV)」
8位:スズキ「アルト(S)」
9位:ダイハツ「ミラ(S)」
10位:ダイハツ「タフト(SUV)」です。

SHは、スーパーハイトワゴン(車高1700mm以上)、Hはハイトワゴン、Sはセダンを示します。

ベスト3はすべてスーパーハイトワゴンで、トップ10の上位6まではスーパーハイトか、ハイトワゴンです。主流というよりも、もはや軽の標準的なモデルと言っても過言ではありません。


ワゴンRは、それまで“軽自動車は狭いからちょっとね”と考えていた人たちを振り向かせ、軽自動車をファミリーカーへと格上げさせた、軽自動車の歴史を変えた革新的なモデルなのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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