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■「NISMO」を知らないユーザーにブランドを認知してもらう戦略によりジュークを第1弾に指名
2023年8月1日には、日産・フェアレディZ NISMO。そして同月8日には日産・スカイラインNISMOが発表され、NISMOロードカーはすでに販売されているGT-R、ノートオーラ、リーフの全5モデルとなりました。
ここでは、これまで販売されたNISMOロードカーを振り返りつつ、最新の中古車事情について紹介していきます。
NISMOロードカーは『クルマをドライブする歓び、クルマを所有することの喜び。それらをすべての人に味わって欲しい。』というコンセプトのもと、最先端のモータースポーツで磨かれたレーシングテクノロジーがフィードバックされ、日々のドライビングにかつてない興奮を提供できるように開発されています。
NISMOロードカーの歴史は、2013年2月に販売開始となった日産・ジュークNISMOからスタートしました。自動車メーカー直系のワークスブランドであるNISMOが手掛けたコンプリートカーの第1弾が、コンパクトSUVのジュークというのは正直驚かされました。
なぜNISMOブランドで販売するモデルの第1弾がジュークになったのか。その理由を当時、ジュークNISMOの開発責任者を務めた田村宏志さん(GT-R、フェアレディZのブランドアンバサダー)にインタビューしていますので紹介します。
●NISMOブランドをパフォーマンスシーカーだけでなく、ハイライフシーカーの方たちへ贈るために
『NISMOは、歴史あるものづくりのブランドです。モータースポーツという「クルマを楽しむ文化」を育てながら、ル・マン24時間レースや現在参戦しているスーパーGTという戦いの場、最先端の技術の世界でものづくりを研ぎ澄まし続けてきたのがNISMOです。
そのNISMOのDNAであるパッション&テクノロジーを日産のラインナップに注いだら、これまでとは異なる魅力を生み出せるのだろうと思いました。NISMOは日産自動車の究極のエッセンスで、日産が目指すその先の具現化するブランドだと考えています。
そして今回、日産自動車がNISMOブランドを立ち上げる際に2つのお客様像を考えました。
1つ目がパフォーマンスシーカーです。これは、従来からのNISMOブランドが好きな人たちで、すなわちクルマ好き。ペトロヘッドとも言います。でも、この人たちばかり相手にビジネスしていても儲からないのです。
そしてもう1つがハイライフシーカーという人たちです。この人たちは、人生を豊かにするために道具を揃えていくという人たちで、クルマが大好きではなくて、オシャレでかわいい、ポップなクルマが欲しいという人たちなのです。この人たちに乗ってもらえたら、ブランドとして確立できる可能性は高まります。
NISMOブランドとして最初のモデルがGT-RやZではなくジュークになったのかという理由は、従来のパフォーマンスシーカーに加えて、新しいターゲットである、女性をメインとしたハイライフシーカーにNISMOブランドを知ってもらい、注目してもらいたいからです。
こういった人たちはNISMO=レースという意識がないですから、これまでとは違った目線で、NISMOブランドを認知してくれると思っています。
そうなると、GT-RやZではかなり敷居が高いですよね。ハードルが高すぎて、ノックするのもおこがましい店のようになってしまいます。私はその敷居を下げたいと思っています』。
これが、2013年当時開発責任者の田村宏志さんが、NISMOロードカーの第1弾にジュークを選んだ理由ということでした。
2013年に登場した日産・ジュークNISMOは、1.6L直列4気筒ターボエンジンを搭載した、ジューク16GT FOUR Type Vがベースで、新車時価格は285万750円でした。
日産・ジュークNISMOの外観は、専用フロントバンパーをはじめ、リアバンパー、オーバーフェンダー、専用エンブレムなどを採用。当時、国内最高峰のスーパーGTに参戦する日産GT-Rにも採用されている、NISMOならではのエアロダインミクステクノロジーを導入することで、ダウンフォースを約37%向上させ、走行安定性を高めています。
日産・ジュークNISMOのインテリアは、サポート性を向上させ、滑りにくいスエード調の素材を採用した専用シートをはじめ、赤いセンターマークを配置した日産車初の本革・アルカンターラ巻きの専用ステアリング、赤い文字盤にロゴを配した専用メーター、レッドリングの専用プッシュエンジンスターターを採用しています。
専用のデザインや素材を採用したシートやステアリングを装備することで、ドライバーがスポーティドライビングに集中できる環境を提供しています。また、全体をブラックで引き締めながら、随所にレッドのアクセントを用いることにより、統一感と質感の高いコクピットを演出しています。
日産・ジュークNISMOに搭載されている1.6L直列4気筒ターボエンジンは、ターボチャージャーの過給圧制御をよりスポーティにチューニングすることで、最高出力200ps(+10ps)、最大トルク250Nm(+10Nm)に向上。
組み合わされるトランスミッションは、マュアルモードのギア比をクロスレシオ化した7速マニュアルモード付のCVTです。
そして日産・ジュークNISMOは、運転が楽しいスポーティな専用のサスペンションと、コーナリング時のグリップ性能を向上させる225/45R18というワイドタイヤを採用しています。
加えて日産・ジュークNISMOは、日本と比較して常用速度が高く、長距離走行や石畳、荒れた路面での走行が多い欧州で徹底した走り込みを行い、スポーティなハンドリングと上質な乗り心地、高速安定性のトータルバランスを高めました。中高速度領域におけるパワーステアリングのアシスト量を強くすることで、より安定感の高いステアリングフィールを実現しています。
●ジュークシリーズの頂点といえるジュークNISMO RSを追加
そして、2014年11月には日産・ジュークの頂点を極め、クラストップレベルのパフォーマンスを実現する日産・ジュークNISMO RSを追加しました。日産・ジュークNISMO RSの新車時価格は343万4400円でした。
日産・ジュークNISMO RSは、従来のジュークNISMOからさらなるエンジン出力の向上を実施したのをはじめ、車体剛性の向上、ブレーキ性能の強化、サスペンションや電動パワーステアリングの専用チューニングを行っています。
さらに、その高いパフォーマンスに見合うシート剛性とホールド性を両立したレカロ製スポーツシートにも、NISMO専用チューニングを実施しています。
ジュークNISMO RSに搭載されている1.6L直列4気筒ターボエンジンは、最高出力214ps・最大トルク250Nmに向上。組み合わされるトランスミッションは、パドルシフトを採用した8速マニュアルモード付きCVTが採用されています。
シャシーは、日産追浜工場における車体組み立て段階で、車体各部に補強を追加し、車体ねじり剛性を向上しました。これにより、精緻でクイックなステアリングレスポンスと、しっかりとした質感の高い乗り心地を高い次元で両立しています。
そして、日産・ジュークNISMO RSは、フロントブレーキローター径を拡大し、リアにベンチレーテッドディスクを採用。キャリパーの性能やブレーキパッドの耐フェード性なども向上させることで、スポーツドライビング時の高レベルな制動フィーリングを実現しました。
●ジュークNISMOは約59.8万~、ジュークNISMO RSは約112万~
それでは、最新の中古車事情を見てみましょう。現在、日産・ジュークNISMOの中古車は約45台流通していて、中古車の価格帯は約59.8万~約198万円。一方、日産・ジュークNISMO RSはわずか約7台しか流通しておらず、価格帯は約112万~180万円となっています。
予算100万円以下では日産・ジュークNISMOだけですが、100万円台ならば両モデルが狙えますし、性能が向上、装備が充実した日産・ジュークNISMO RSが見つかればバリュー感は抜群です。
(文:萩原 文博/写真:日産自動車、萩原 文博)