新型メルセデス・ベンツ「GLC」の乗り味と使い勝手の良さは、日本で乗るメルセデス製SUVの中で最良!

■全長を50mm延ばしても「リヤアクスルステアリング」を装着すれば、5.1mという驚異的な小回り性能を実現

メルセデス・ベンツの屋台骨を支える人気SUVのGLCが2023年3月にフルモデルチェンジを受けました。メルセデスは、日本メーカーも含めてSUVの車種が最も多く、コンパクトなGLAからフルサイズのGLSやEQS SUVまで多彩な品揃えを誇っています。

新型メルセデス・ベンツGLCのエクステリア
新型メルセデス・ベンツGLCのエクステリア

2代目となる新型GLCは全長4725×全幅1890×全高1635mmで、先代の全長4670×全幅1890×全高1645mmよりも50〜55mm長くなり、全幅は同値、全高は5〜10mm低くなっています(全長と全高は、グレードにより異なります)。

わずかに長くなったものの、駐車のしやすさや、狭い道でのすれ違いなどを左右する全幅が変わっていないのは朗報です。全幅が維持されたことで、先代からの乗り換えでも駐車場所の確保に頭を悩ますことは少ないはず。

新型GLCのリヤビュー
新型GLCのリヤビュー

新型GLCの最小回転半径は5.1m〜5.5mで、オプションの「リヤアクスルステアリング」装着車を選べば、コンパクトカー並みの5.1mに収まります。

1.9mに迫る全幅とは思えないほどの小回り性能を披露してくれますので、取り回しの良さを重視するのならぜひ装着したいところです。なお、先代は5.7mでした。

伸びやかなサイドビューが印象的
伸びやかなサイドビューが印象的

エクステリアは、全長が50mm、ホイールベースが15mm延びたことで、伸びやかなサイドビューが印象的です。「AMGラインパッケージ」を選べば、最近のメルセデスでお馴染みのスリーポインテッドスターが散りばめられた、アグレッシブで精緻な印象のフロントマスクを装備できます。シャープな印象をもたらすヘッドライトは、フロントグリルとの連続感が強調されています。

新型メルセデス・ベンツGLCのリヤまわり
新型メルセデス・ベンツGLCのリヤまわり

サイドビューは、力強い前後フェンダーアーチやDピラーに向けて緩やかに上昇するウエストラインにより、躍動感が演出されています。Cd値は0.29(欧州仕様値)とSUVの中でも優秀で、WLTCモード燃費18.0km/Lという省燃費性能に寄与しています。

後ろ姿は、水平基調のリヤバンパー、細くて鋭い新型リヤコンビネーションランプが目を惹きます。スタイリッシュになったエクステリアが目を惹きます。同時に、ルーフレールを標準化するなど、SUVとしての使い勝手にも配慮されています。

●圧倒的に質感が高くなったインテリア

現行Cクラスよりも、上質感を強く醸し出すインテリアもハイライトのひとつ。ひと目で先進的で、しかも大幅なクオリティアップが図られていることが分かります。

メルセデス・ベンツGLCのインパネ
メルセデス・ベンツGLCのインパネ

標準仕様の「ハイグロスアッシュウッドインテリアトリム」「AMGラインパッケージ」の「アンスラサイトライムウッドインテリアトリム」、写真の「レザーエクスクルーシブパッケージ/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ仕様」の「ブラックオープンポアウッドインテリアトリム」のいずれも、インパネ加飾の質感の高さが印象的。

この「ブラックオープンポアウッドインテリアトリム」は、黒のウッドにマット仕上げが施されるだけでなく、垂直方向にアルミニウムのラインが配置され、ワンクラス上の超高級SUV並の世界観を楽しめます。

「ブラックオープンポアウッドインテリアトリム」の加飾
「ブラックオープンポアウッドインテリアトリム」の加飾

タブレットを縦に配置したような11.9インチのメディアディスプレイ、ドライバーの眼前に広がる12.3インチコックピットディスプレイの視認性の高さはもちろん、この2つの大型ディスプレイがもたらす先進性の高さも魅力です。

多機能化、先進化されている各装備もナビやオーディオなどはもちろん、車両設定や安全運転支援システムの設定まで、手元の最新世代のステアリングホイールで完結するほか、お馴染みの対話型インフォテイメントシステムである「MBUX」も用意されていて、慣れれば音声操作だけで容易にナビやエアコン設定など、運転操作に関わる以外の多くのメニューを操作できます。逆に言うと、機能が増えたことで、慣れるまでは音声で操作した方が簡単に感じるほど。

11.9インチのメディアディスプレイ
11.9インチのメディアディスプレイ

さらに、SUV初となる「MBUX ARナビ」のオプション設定もトピックス。ナビ画面に現実の景色が映し出され、進行方向が矢印で表示されます。直感的に把握できやすいように大きな矢印などが表示されるため、初めての道や入り組んだ高速道路のジャンクションなどでも迷わず走行できるはず。

そのほか、ヘッドアップディスプレイの大型化、走行モードをオフロードにすると、ボンネットが透けて見える360度カメラシステムを使った「トランスペアレントボンネット」を搭載するなど、ドライバーの走行アシストや視界の補助メニューも充実しています。

ドライバーの眼前に広がる12.3インチコックピットディスプレイ
ドライバーの眼前に広がる12.3インチコックピットディスプレイ

新開発になる「オフロードスクリーン」も用意されています。車両の傾きや路面の勾配をはじめ、標高や経度緯度、コンパスのほか、車速、エンジン回転数が表示されます。メディアディスプレイには、周辺地形におけるGLCの現在の姿勢やフロントホイールの操舵角、(リヤアクスルステアリングを装備している場合は)後輪の操舵方向などが表示されるなど、オフロードやタフな雪道でもドライバーに安心感をもたらしてくれそう。

●さらに広くなったラゲッジスペース

広大な荷室容量が確保されるのも美点です。先代よりも約70~80L拡大され、VDAで620L~1680Lという容量を確保。通常時の620Lは、新たに用意されたカーゴポジションによるもので、後席背もたれの角度を約10度起こすことで、通常時でもゴルフバッグが3セット積めるとのこと。さらに、トノカバーを荷室床下に格納できるのも魅力です。

新開発の「オフロードスクリーン」
新開発の「オフロードスクリーン」

搭載されるパワートレーンは、2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの「OM654M」で、先代よりも42cc排気量を拡大し、1992Lになっています。48VマイルドハイブリッドシステムのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と組み合わされています。ISGは、エンジン再始動時の音・振動が抑えられ上質感の向上に寄与しています。また、先代の15.1km/Lから19%改善となるWLTCモード燃費18.0km/Lも、ユーザーにとっては朗報になるでしょう。

背もたれを約10°起こすカーゴポジションを新たに用意
背もたれを約10°起こすカーゴポジションを新たに用意

●どこから踏んでも欲しい加速感が容易に得られる

組み合わされるトランスミッションは、発進時からウルトラスムーズな「9G-TRONIC」オートマチックトランスミッションで、先述したようにエンジン再始動時も静かになっているため、より上級なモデルに乗っている印象を受けます。

新型GLCの走り
新型GLCの走り

最高出力は145kW(197PS)で、先代の同エンジンよりも+17kW(+22PS)となり、最大出力は440Nmで、一時的に加勢させるEQブースト時は+205Nmとなります。全域トルクフルという印象の新型は、箱根ターンパイクのような急な登り坂でも2020kgの重量を軽々と加速させます。重いSUVとディーゼルエンジンとの相性は良く、新型GLCも好例といえる組み合わせになっています。

駆動方式は、前後トルク配分「45:55」となる4MATIC(4WD)。先述した「オフロード」モードでは、トランスミッションが同モードに切り替わり、雪道や悪路での走破性を高めるだけでなく、「DSR(ダウンヒル・スピード・レギュレーション)」も備わるため、凍結した急な下り坂などでも一定速でクリアできるなど、雪道を含めた日常使いであれば絶大な安心感が得られそうです。

2.0Lディーゼルエンジンを積む
2.0Lディーゼルエンジンを積む

新型GLCは静粛性だけでなく、乗り心地の良さも光ります。

サスペンションは、Cクラスと同様にフロント4リンク式、リヤはマルチリンク式。標準車には良好な乗り心地と高い静粛性、俊敏なハンドリングをもたらすという「AGILITY CONTROLサスペンション」が装着され、オプションで「AIRMATICサスペンション」を設定。

後者には、伸び側と縮み側にそれぞれ可変ダンピングシステムが用意されます。路面や運転状況、乗車人数や荷物の積載状況に応じて減衰力を常に最適に保つだけでなく、高速走行時や「スポーツ」モード選択には車高を約15mm下げることで、操縦安定性や空力特性を高めることができます。また「オフロード」モードにすると車高が約15mm高くなり、ロードクリアランスの余裕が増すことで、悪路走破性を向上させることができます。

新型GLCの走行シーン
新型GLCの走行シーン

この「AGILITY CONTROLサスペンション」は、先述したリヤアクスルステアリングとのセットになる「ドライバーズパッケージ」に含まれているため、予算が許せば(オプション価格は49万円)ぜひ選択したいところ。先代GLCは、シーンによっては微少な入力(上下動や左右の動き)が気になることもありましたが、より上質な乗り味を堪能できます。

1人で乗っている際は、特に「スポーツ」モード時の振る舞いが見事で、低速域や荒れた路面、高速域を問わず、絶妙なフラットライド感が得られます。「コンフォート」モードだとゆったりした乗り味になり、ストローク感が増す印象。いずれにしても、走行モードによりメリハリが効いていて、状況に応じて積極的に切り替えたいところです。

●大幅な価格アップも納得の進化と充実装備

新型GLCのフロントシート
新型GLCのフロントシート

そのほか、Sクラス譲りの最新の運転支援システムや、片側130万画素の高機能ヘッドライト、64色から選択できる「アンビエントライト」など、全方位隙のない装備や機能が用意されています。

好調な出だしを切ったという新型GLCのセールス。ただし、同モデルに限りませんが、新型GLCも円安や材料費、輸送費などの上昇による新車価格の高騰という影響を受けています。また、Cクラスに対して上級移行した感のある内外装や走りが与えられているのと、2.2Lディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッドのみという導入時の「GLC 220 d 4MATIC」の1グレード構成(セットオプションをのぞく)もあり、先代デビュー時の628万円〜745万円(2.0Lガソリンターボのみ)から大きくステップアップが図られています。なお、2017年2月に追加された「GLC 220 d 4MATIC」系は、628万円〜745万円でした。

新型GLCのリヤシート
新型GLCのリヤシート

魅力的なGLAやGLBも新型にスイッチしたこともあり、先代よりも価格面ではハードルが高くなったのは間違いないでしょう。とはいえ、全長以外はほとんど変わっていないボディサイズは、日本ではストレスなく扱える大きさに収まっていて、「リヤアクスルステアリング」や「AGILITY CONTROLサスペンション」も選択できます。

ボンネットが透けたように見える「トランスペアレントボンネット」
ボンネットが透けたように見える「トランスペアレントボンネット」

サイズ的に「これ以上大きなSUVは無理」というニーズに応えているだけでなく、高級化、高性能化や先進性の向上という大きな付加価値をもたらした新型GLCは、メルセデス・ベンツの屋台骨を支える1台になっています。

●GLC車両本体価格
「GLC 220 d 4MATIC(ISG搭載モデル)」:820万円

●試乗車オプション価格
「AMGラインパッケージ」:60万円
「AMGレザーエクスクルーシブ」:55万円
「ドライバーズパッケージ」:49万円
「パノラミックススライディングルーフ」:22万円
「メタリックペイント(モハーベシルバー)」:8万円
※オプションを含む車両価格:1014万円

(文:塚田 勝弘/写真:塚田 勝弘、メルセデス・ベンツ)

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この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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