トヨタが燃料電池ユニットを外販。ゼロエミッション軽量スポーツカーに期待大【週刊クルマのミライ】

■トヨタがMIRAIに積む燃料電池ユニットの外販を進めている

トヨタは水素燃料電池ユニットの外販をビジネス化しようとしている。
トヨタは水素燃料電池ユニットの外販をビジネス化しようとしている。

トヨタが、「クルマの未来を変えていこう」をテーマにした技術説明会「Toyota Technical Workshop」を開催しました。

正統派モータージャーナリストではなく、自動車コラムニストを自称している筆者のレベルでは、会場で取材することができず、公開されている資料を見るだけしかできないのですが、それでもトヨタのゼロエミッションについての動きが感じられるもので、その内容も多岐にわたるものでした。

ここでは、トヨタが注力している水素燃料電池ビジネスに注目して、その可能性を考察していきたいと思います。

●東京アールアンドデーは燃料電池スポーツカーを計画中

2023年の人とくるまのテクノロジー展横浜では、燃料電池スポーツカー計画のパネル展示がされていた。
2023年の人とくるまのテクノロジー展横浜では、燃料電池スポーツカー計画のパネル展示がされていた。

結論をいえば、トヨタの水素燃料電池ビジネスは、自社の車両に搭載するだけでなく、水素タンクや燃料電池スタックといった構成要素を外販することでビジネスとして成立させることを考えています。

MIRAIに積んできた水素燃料電池ユニットは、トヨタにとって虎の子で、門外不出と考えてしまうかもしれませんが、むしろ水素を使うモビリティを作る仲間を増やしていくためのキーデバイスとなるというわけです。

トヨタの発表によれば燃料電池ユニットの大半はトラックなどの商用車メーカーに外販されるということです。

しかし、燃料電池というのは高出力で航続距離を伸ばすためのソリューションとしては乗用車でもアドバンテージのあるメカニズムです。

燃料電池システムは少量のバッテリーで成立しますから電気自動車より軽量に作ることもできます。ゼロエミッション時代のスポーツカーにも最適なパワートレインとなり得るのです。

じつは、トヨタの燃料電池ユニットを利用したスポーツカー開発に動きはすでに発表されています。その計画を持っているのは東京アールアンドデーです。

●ヴィーマックを生み出した実績もあるだけに期待できる

上に掲載した写真は、2023年の「人とくるまのテクノロジー展YOKOHAMA(主催:一般社団法人 自動車技術会)」で東京アールアンドデーのブースに展示されていたパネルを撮影したものです。そこには前後に水素タンクを積んだ燃料電池スポーツカーが描かれていました。

東京アールアンドデーといえば、かつてヴィーマックというライトウェイトスポーツカーを開発、GT300マシンにも仕立てたことがあるスペシャリスト集団です。燃料電池スポーツカーの企画は、けっして夢物語ではなくリアリティがあります。

東京R&Dといえば、過去にヴィーマックというミッドシップのライトウェイトスポーツカーを生み出した実績もある。
東京R&Dといえば、過去にヴィーマックというミッドシップのライトウェイトスポーツカーを生み出した実績もある。

同社のスタッフに聞いたところ、このスポーツカーではトヨタMIRAIの燃料電池ユニットを使うことを想定しているということで、最高出力200kW(約268馬力)のリヤ駆動になるということです。目標重量は1300kgというのは電動化時代のスポーツカーとしては驚異的に軽いといえます。

スポーツカーにおいて軽さは重要な価値ですから、この点において多量のバッテリーによって車体が重くなってしまいがちな電気自動車に対して、燃料電池というのはアドバンテージのあるパッケージといえます。

ゼロエミッション時代のスポーツカーは燃料電池が最適解となるかもしれません。

冒頭で記したように、トヨタの燃料電池ユニットが広く外販されるようになれば、そのユニットを利用してスポーツカーを作る小さなメーカー(バックヤードビルダー)が世界中に誕生することが期待されます。

トヨタの燃料電池ユニットが、ゼロエミッション時代のスポーツカー文化を守るキーデバイスになる日がやってくるかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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