ホンダ「インスパイア」4代目発表。技術志向を追求した高級セダンは283万~367万円【今日は何の日?6月18日】

■運転支援技術や可変シリンダーなどの先進技術満載

2003年にデビューした4代目インスパイアインスパイア
2003年にデビューした4代目インスパイア

2003(平成15)年6月18日、ホンダ・インスパイアがモデルチェンジして4代目を発表、翌日から販売が始まりました。

4代目インスパイアは、スポーティな走りと洗練されたスタイリングの高級セダン、運転支援技術や可変気筒システムなどの先進技術を満載したモデルでした。


●初代は5気筒エンジンのフロントミッドシップのハイソカー

バブル景気で迎えたハイソカーブームの1989年、その流れに乗るためにホンダが投入したのが、高級セダンの初代インスパイアである「アコード・インスパイア」です。

1989年にデビューした初代インスパイア。世界初の縦置き5気筒エンジンのFFレイアウトを採用
1989年にデビューした初代インスパイア。世界初の縦置き5気筒エンジンのFFレイアウトを採用

注目は、アウディやボルボが採用している希少な直列5気筒エンジンを縦置きにして世界初のFFミッドシップレイアウトを実現したこと。

直6では縦置きが難しいので5気筒として、また4気筒と6気筒の良いとこ取りができるエンジン性能を狙ったものです。

しかし、エンジンが2.0Lでボディも5ナンバーサイズであったため、他のハイソカーと比べると見劣りは否めず、ヒットを記録できませんでした。その後、3ナンバー化やエンジンの2.5L化と商品力強化を図り、車名をインスパイアと単独ネームとして、1995年に2代目へとバトンを渡しました。


●4代目は、追突軽減ブレーキや可変シリンダーなどハイテク化を追求

4代目インスパイア
4代目インスパイア

米国生まれのワールドカーとなった3代目に続いて、2003年のこの日、4代目インスパイアがデビューしました。4代目は再び日本生産に戻り、スタイリングはアグレッシブでシャープなデザインを採用。車両価格は標準仕様(30TE)が283万円、ハイグレード(アバンツァーレ)が367万円でした。

4代目インスパイアの特徴は、先進技術満載のハイテク化の追求です。なかでも注目は、追突軽減ブレーキとi-VTECエンジンを利用した可変シリンダーシステムです。以下に、2つの技術について紹介します。

●世界初の追突軽減ブレーキ

4代目インスパイアで採用されたCMS(追突軽減ブレーキ)+E-プリテンショナーシステム構成
4代目インスパイアで採用されたCMS(追突軽減ブレーキ)+E-プリテンショナーシステム構成

ホンダが進める運転支援技術の「ホンダ・プリクラッシュセーフティテクノロジー」の第1弾として、世界初となる「追突軽減ブレーキ(CMS)」と、「E-プリテンショナー」を搭載。CMSは、追突の危険性を察知して警告を与えるとともに、追突速度を落として衝突時の被害を軽減します。

今や一般的となった追突軽減ブレーキ(衝突被害軽減)システムですが、10年も前のこの時期にホンダはすでに実用化していたのです。

またE-プリテンショナーは、CMSと連動して追突の危険性が高い場合に運転席シートベルトを弱く2~3回引き込むことでドライバーに警告。そして、回避が困難と判断した場合にはシートベルトを強く引き込み、追突時の被害軽減を図ります。

●画期的な可変シリンダーシステム

可変シリンダーシステムを採用した3.0L V6 i-VTECエンジン
可変シリンダーシステムを採用した3.0L V6 i-VTECエンジン

搭載エンジンは3.0L V6「i-VTEC」エンジンで、これに可変シリンダーシステムを採用。可変シリンダーとは、運転状態に応じて6気筒のうちの半分の気筒のバルブリフトを極小にし、燃焼させずに休止(休筒)させて、燃費向上を実現する手法。休筒システムとも呼ばれます。

発進や加速時のような負荷が大きいときには6気筒で、クルージングや減速時などではバンク片側の3気筒で走行します。

休筒する3気筒は、燃料供給を停止、ポンピング損失も発生しないことから、燃費を大きく向上させることができます。可変シリンダーシステムによって、3.0Lでありながら2.4L直4クラスの燃費を達成しています。


初代は希少な5気筒、4代目は追突軽減ブレーキや可変シリンダーと、先進技術を追求したインスパイアには技術志向がありありと見えます。とは言え、発売当時はセダン冬の時代でもあったため、実力相応の評価が市場でなされたかどうか。市場評価、販売数というもの、必ずしも希少ないいクルマに微笑むことはありません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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