輸入フラッグシップBEV、BMW「iX」とポルシェ「タイカン」。次世代BEVの覇者はどちら?

■最大トルク1000Nmを実現したMモデルがBMW iXに追加

電気自動車(以下BEV)は、国産メーカーに比べると質、量ともに輸入車メーカーがリードしています。その輸入車メーカーの中でも、しっかりとしたブランディングを行っていると言えるのがBMWではないでしょうか。

iX M60の走行シーン
iX M60の走行シーン

BMWのBEVは、車名に“i”が付いているのが特徴です。SUVのX3やスタイリッシュなクーペの4シリーズ、そしてフラッグシップセダンの7シリーズといったモデルの最上級モデルとして、BEVが設定されています。

また、こういった従来モデルのBEVに加えて、次世代電気自動車と呼ばれるiXを2021年から導入しています。

今回は、この次世代電気自動車 iXの最上級モデルM60に試乗できましたので、インプレッションを紹介するとともに、ライバル車といえるポルシェタイカンと比較してみたいと思います。

●BMW「iX M60」をチェック!

一見すると、SUVのBMW iXと4ドアクーペのポルシェタイカンは、ライバルに見えないかもしれません。しかし、この2台はスタイルこそ違いますが、大容量のバッテリーを搭載し、航続距離走行距離を延ばしつつ、高い走行性能を発揮するという点では共通だからです。

iX M60のフロントスタイル
iX M60のフロントスタイル

2021年11月に日本市場に導入されたBEVのBMW iXは、SUVをベースに、コンセプト、デザイン、パワートレイン等、その全てにおいて、BMWが次世代を見据えて開発したモデルです。

そのiXに2022年5月追加されたのが、今回試乗したiXの最上級モデルであり、BMW Mを冠するMモデルであるiX M60です。

iX M60のリアスタイル
iX M60のリアスタイル

iXの外観は、従来のBMWモデルとは一線を画した大胆かつモダンなデザインを採用。

フロントでは、BMWのアイコンであるキドニーグリルを大型化し、キャラクターを強調。一方、リアはヘッドライト同様に薄くシャープなコンビネーションランプを採用。デザインの一体感を表現しつつ、エアロダイナミクスを追求したディフューザーや、リアトレッドをワイドにすることで存在感を表しています。

iX M60のインストルメントパネル
iX M60のインストルメントパネル

インテリアは、現在では多くのBMW車が取り入れているカーブドディスプレイを初採用。また、多くのスイッチ類を廃止し、送風口をスリム化することで、運転席回りをすっきりとさせつつ、BMW特有のiDriveコントローラーを他モデル同様に装備することで、抜群の操作性を誇っています。

また、六角形のステアリングホイールを、BMWモデルとして初めて採用するなど、革新性も表現しています。そして、ヘッドレスト一体型のシートの採用、大人5名乗車でも、後席においてもゆったりとした室内空間を誇るなど、まるで上質なラウンジで過ごすようなリラックスした空間を提供します。

iX M60のフロントシート
iX M60のフロントシート

iX M60の安全装備は、高性能カメラ&レーダー、および高性能プロセッサーによる高い解析能力によって、より精度と正確性が向上した最先端の運転支援システム「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」を標準装備しています。

さらに、標準装備となるパーキングアシスタントには、車両が直前に前進したルートを最大50mまで記憶し、その同じルートをバックで正確に戻ることが可能となるリバースアシスト機能を採用しています。

今回試乗したのは、車両本体価格1,798万円のiX M60です。さすが最上級モデルなので、オプション装備は装着されていませんでした。

iX M60のボディサイズは、全長4,955mm×全幅1,965mm×全高1,695mm。ホイールベースは3,000mmとなっています。車両重量は2,600kg、取り回しの良さの指標となる最小回転半径は6.0mです。

iX M60のリアシート
iX M60のリアシート

iX M60に搭載されているパワートレインは、フロントに最高出力258psを発生する電気モーター。そしてリアに489psを発生する電気モーターを搭載。システム合計で、最高出力619ps・最大トルク1,015Nm(スポーツモードでは1,100Nm)を発生します。

駆動方式は4WD、ボディ床下に搭載されているリチウムイオン電池の総エネルギー量は111.4kWh。0-100km/h加速はわずか3.8秒というハイパフォーマンスを発揮すると同時に、満充電時の走行可能距離は約615kmとなっています。

iX M60のフル乗車時のラゲッジスペース
iX M60のフル乗車時のラゲッジスペース

システム合計の最高出力619ps・最大トルク1,015Nmを発生する2モーターシステムは、V12気筒のような高い静粛性とスムーズな加速性能が特徴です。車両重量2.6tのiX M60ですが、その重さを全く感じさせないスムーズな加速は、内燃機関車ではなかなか味わえないフィーリングです。

iX M60は圧倒的なパフォーマンスとともに、マジックカーペットのようなフラットな極上の乗り心地が特徴です。これは、採用されている4輪アダプティブエアサスペンションの効果と言えます。走行状態に合わせ、常に最良の車両地上高を保ち、乗り心地、敏捷性、安定性といった様々な側面にメリットをもたらします。

リアシートを倒して最大化したiX M60のラゲッジスペース
リアシートを倒して最大化したiX M60のラゲッジスペース

また、高いライントレース性と優れたハンドリング性能は、前後輪統合制御ステアリングシステム「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」の効果によるもの。

これだけボディサイズの大きなiX M60ですが、ワインディングでは鋭く頭が入るターンインが可能で、鋭い身のこなしが特徴。新感覚の“駆け抜ける歓び”をドライバーだけでなく、乗員に提供しています。

SUVらしく利便性も抜群で、ラゲッジルームの容量はリアシート使用時が500L、リアシートを全て畳むと1,750Lまで拡大します。

●BEVの特性を活かし前後にトランクを確保、高い実用性を誇るポルシェ「タイカン」

BMW iXのライバルとしてピックアップしたのはBEVのポルシェタイカンです。車両本体価格は1,226万円~2,507万円。価格的には、車両本体価格1,841万円のタイカンGTSが該当します。

タイカンターボSの走行シーン
タイカンターボSの走行シーン

タイカンGTSのボディサイズは、全長4,963mm×全幅1,966mm×全高1,381mm。ホイールベースは2,900mmとなっています。ラゲッジ容量はフロントが84L、リアが407Lの合計で491Lを確保しています。

搭載されているパワートレインは、ローンチコントロール時のオーバーブースト出力が598ps、最大トルクが850Nmを発生。車両重量2,370kgのボディを3.7秒で100km/hまで加速するハイパフォーマンスを発揮。満充電時の走行可能距離は、WLTCモードで492kmとなっています。

ビッグトルクを活かした、圧倒的な加速性能と優れたハンドリング性能は、さすがポルシェという高い実力を発揮します。鋭い加速中でも乗員は無駄な動きをすることなく、高級セダンに乗っているようです。

スポーツカーブランドのポルシェらしく、ドライバーのマインドを刺激するサウンドが流れます。が、このサウンドがなければ、BEVらしい静寂に包まれた室内空間となります。

室内空間も広く、ラゲッジ容量も前後で491Lと、高い利便性も確保しているタイカン。ただ、高い走行性能を実現させるためバッテリー容量を減らしたことで、走行距離が492kmというのは少々物足りなさを感じますので、この点ではBMW iXが大きくリードしています。

どちらのモデルも、新東名高速のサービスエリアに最近設置された150kWの急速充電器に対応しており、これまで以上に走行距離に対する不安が払拭されています。

2000万円級の輸入車BEVのライバル比較ですが、いち早くBEVを市販化したBMWらしく、iXはBEVに求められる航続距離走行距離、利便性をすべてクリアしており、全く隙がないモデルと言えるでしょう。

【Specification】

■BMW iXM60:全長4,955×全幅1,965×全高1,695mm、ホイールベース:3,000mm、車両重量:2,600kg、モーター種類:交流同期電動機、フロント最高出力:258ps、最大トルク:365Nm、リア最高出力:489ps、最大トルク:650Nm、WLTCモード電費:615km、タイヤサイズ:275/40R22、車両本体価格:1738万1000円

■ポルシェ タイカンGTS:全長4,963×全幅1,966×全高1,381mm、ホイールベース:2,900mm、車両重量:2,370kg、モーター種類:交流同期電動機、最高出力:517ps、最大トルク:850Nm、WLTCモード電費:504km、タイヤサイズ:フロント265/35R21、リア305/30R21、車両本体価格:1841万円

(文・写真:萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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