真のラグジュアリSUVはどちら? 価格帯やパワートレインも酷似するBMW「X7」とメルセデス・ベンツ「GLS」をチェック

■マイナーチェンジを行い内外装の変更と電動化を行ったBMW X7

国産メーカーだけでなく、輸入車メーカーでもSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のバリエーションは増えています。ガソリンエンジンだけでなく、PHEVやBEVなど、輸入車のほうが様々なパワートレインを搭載しているのが特徴です。

BMW X7の走行シーン
BMW X7の走行シーン

今回は、エントリーモデルのX1からBMW M社が手掛けたXMまで、Webサイト上には13車種が設定されているBMWの最も大きなサイズのSUVであるX7のマイナーチェンジモデルに試乗することができました。

そこで、X7とそのライバル車であるメルセデス・ベンツ「GLS」を比較してみたいと思います。


●BMW X7をチェック!

最上級ラグジュアリーシリーズの1つであるBMW X7は、2019年6月に現行モデルが登場しました。最上級ラグジュアリーSUVとして存在感あるデザインと、4輪エアサスペンションによる上質な乗り心地により、BMWが誇る本格的なSUVとしての性能を備えながら、BMWのラグジュアリーな世界観を両立させたモデルです。

BMW X7のフロントスタイル
BMW X7のフロントスタイル

2022年11月に実施したマイナーチェンジでは、外装の変更に加えて、ディーゼルエンジンとMパフォーマンスモデルにも48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載しています。

さらに、ラグジュアリーに相応しい快適性を高めるエグゼクティブドライブプロを標準装備。そして、日本初認可のハンズ・オフ機能など、充実した安全機能・運転支援システムを搭載したのがポイントです。

BMW X7のリアスタイル
BMW X7のリアスタイル

マイナーチェンジしたX7の外観デザインは、同じラグジュアリーモデルのBMW7シリーズ同様、ヘッドライトは上下2分割のツインサーキュラー&ダブルライトを採用。

上部にはターンインジケーターを含むLEDデイタイムランニングライトを配置。そして、下部にはアダプティブマトリックス機能を使用し、コーナリング機能も併せ持つLEDヘッドライトとなっています。

BMWのアイコンであるキドニーグリルは、存在感と力強さを主張するデザインに進化しました。クロームで縁取ることで、斬新かつ高級感に溢れています。さらに、暗闇で発光し、存在感を増すアイコニックグローキドニーグリルを採用しています。

BMW X7のインストルメントパネル
BMW X7のインストルメントパネル

一方、インテリアでは、12.3インチのメーターパネルと14.9インチのコントロールディスプレイを一体化させ、ドライバー側に湾曲させた最新のカーブドディスプレイの採用により、優れた視認性と高い操作性を実現しています。

マイナーチェンジでシフトレバーが廃止された
マイナーチェンジでシフトレバーが廃止された
シフトレバー廃止に伴いパドルシフトは全車標準装備化
シフトレバー廃止に伴いパドルシフトは全車標準装備化

トランスミッションのシフトレバーを廃止し、BMW特有のiDriveコントローラー回りをすっきりとさせる事で、運転席まわりの空間を広くし、モダンな印象となりました。シフトレバーの廃止に伴い、パドルシフトは全てのモデルに標準装備しています。

さらに、ナビゲーションシステムで目的地をセットした場合、14.9インチのコントロールディスプレイには、AR機能により前方のリアルタイムでの映像が映し出され、さらに、進行方向を表示する矢印が表示されるのが先進的です。

4.4L V型8気筒ツインターボエンジン
4.4L V型8気筒ツインターボエンジン

X7に搭載されているエンジンは、xDrive40dには最高出力340ps・最大トルク700Nmを発生する3L直列6気筒ディーゼルターボ。これに48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、システムトータルでは最高出力352ps・最大トルク720Nmを発生します。

MパフォーマンスモデルのM60i xDriveには、高効率な最新型の4.4L V型8気筒ターボエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、システムトータル最高出力530ps・最大トルク750Nmを発生。組み合わされるトランスミッションは両エンジンとも8速ATで、駆動方式はxDriveと呼ばれる4輪駆動システムとなっています。

優れた乗り心地と快適で安全なハンドリングを提供するため、X7には「オートマチックセルフレベリング・コントロール付きアダプティブ2アクスルエアサスペンション」と「電子制御ダンパー付きアダプティブサスペンション」を標準装備しています。

BMW X7のフロントシート
BMW X7のフロントシート
BMW X7のセカンドシート
BMW X7のセカンドシート
BMW X7のサードシート
BMW X7のサードシート


さらに、ハンドリング快適性を高める電動パワーステアリング「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」、アンチロールスタビライザーを最適化し、俊敏性、ハンドリング精度を向上させ、特にダイナミックなコーナリング時に効果を発揮する「エグゼクティブ・ドライブ・プロ」、直進走行時の快適性向上に寄与する「アクティブ・ロール・スタビライザー」など、最新テクノロジーを標準装備し、新しい次元の走行快適性と長距離ドライブの快適性を実現しています。

今回試乗したのは、車両本体価格1754万円のX7 M60i xDriveです。試乗車にはオプション装備として、Mブルックリングレーのボディカラー11万円をはじめ、Mスポーツパッケージプロ11万円、23インチアルミホイール29万4000円、スカイラウンジパノラマガラスサンルーフ13万7000円、そしてBowers&Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム60万9000円を装着し、合計で1880万円という仕様です。

X7 M60i xDriveのボディサイズは全長5,170mm×全幅2,000mm×全高1,835mmという、圧倒されるほどの存在感を放つ大きさです。ホイールベースは3,105mmという長さで、室内空間は3列目シートでも大人がくつろげるスペースを確保しています。

フル乗車時のラゲッジスペース
フル乗車時のラゲッジスペース
3列目シートを収納したラゲッジスペース
3列目シートを収納したラゲッジスペース

車両重量が2,610kgというヘビー級のX7 M60i xDriveですが、システム合計最高出力530ps・最大トルク750Nmを発生する4.4L V型8気筒ガソリンターボエンジンのマイルドハイブリッドは、ラグジュアリーセダンのように車内は静寂に包まれたまま、スムーズに加速していきます。

背の高いSUVながら、オートマチックセルフレベリングコントロール付きアダプティブ2アクスルエアサスペンションや、電子制御ダンパー付きアダプティブサスペンションなどの電子デバイスにより、無駄な揺れがほとんど派生しないマジックカーペットのような極上の乗り心地を実現しています。

●広いラゲッジルームをはじめ実用性の高さも魅力のメルセデス・ベンツ「GLS」

BMW X7のライバルと言えるメルセデス・ベンツの最上級SUV「GLS」は、2020年3月に登場しました。GLSはメルセデス・ベンツのSUVを示す“GL”に車格を表す“S”が付くその名のとおり、大人7名がゆったりと乗車できるゆとりあるボディサイズが特徴です。

GLSの走行シーン
GLSの走行シーン

また、48V電気システムを動力に使用したアクティブサスペンション「E-ACTIVE BODY CONTROL」を採用し、オン/オフロード問わず優れた走行性能を備えています。

GLSのボディサイズは全長5,220mm×全幅2,030mm×全高1,825mmで、全長と全幅はX7より大きく、全高は10mm低いワイド&ローのボディを採用しています。

SUVらしい質実剛健なデザインを採用しているGLSですが、Cd値0.32というボディサイズの大きなSUVとしては極めて優秀な空力性能を実現しています。

3L直列6気筒ディーゼルターボエンジン
3L直列6気筒ディーゼルターボエンジン

GLSに搭載されているパワートレインは、400dに搭載されている最高出力330ps・最大トルク700Nmを発生する3L直列6気筒ディーゼルターボエンジン+9速ATをはじめ、GLS580には、最高出力489ps・最大トルク700Nmを発生する4L V型8気筒ツインターボエンジン+9速AT。そして、GLS63に搭載される最高出力612ps・最大トルク850Nmを発生する4L V型8気筒ツインターボエンジン+9速ATの3種類です。

駆動方式は全車4マチックと呼ばれる4WDで、燃費性能はWLTCモードで7.8~11.3km/L。車両本体価格はGLS400dが1420万円、GLS580は1870万円。そしてGLS63が2420万円となっています。

BMW X7とメルセデス・ベンツGLSは、ボディサイズやエンジンラインアップだけでなく、車両本体価格もクロスオーバーしているガチンコのライバル車と言えます。

高級車ライクな乗り味や圧倒的な走行性能を実現するパワートレイン、そして運転支援機能はほぼ互角と言えます。

両車ともに全長5mを超えるサイズながら、取り回しの良さを示す最小回転半径は、BMW X7は6.2m。対してメルセデス・ベンツGLSは5.8mと、ボディサイズが大きいにもかかわらず抑えられています。

また、トランク容量もBMW X7が326~2,210Lに対してメルセデス・ベンツGLSは355~2,400Lと、利便性という点においてはメルセデス・ベンツGLSがリードしています。

しかし、運転する楽しさという点では、BMW X7が上回っていると思いますが、これだけ実力伯仲したライバルは少ないと思います。

【Specification】

■BMWX7M60ixDrive:全長5,170×全幅2,000×全高1,875mm、ホイールベース:3,105mm、車両重量:2,610kg、エンジン種類:V型8気筒DOHCツインターボ総排気量:4,394cc、最高出力:530ps/5,500rpm、最大トルク:750Nm/1,800〜4,600rpm、モーター最高出力:12ps、モーター最大トルク:200Nm、WLTCモード燃費:8.2km/L、タイヤサイズ:フロント275/40R22、リア315/35R22、車両本体価格:1773 万2000円

■メルセデス・ベンツGLS580 4マチックスポーツ:全長5,220×全幅2,030×全高1,825mm、ホイールベース:3,135mm、車両重量:2,660kg、エンジン種類:V型8気筒DOHCツインターボ、総排気量:3,982cc、最高出力:489ps/5,500rpm、最大トルク:700Nm/2,000〜4,000rpm、モーター最高出力:16kW、モーター最大トルク:250Nm、WLTCモード燃費:7.8km/L、タイヤサイズ:フロント275/45R21、リア315/40R21車両本体価格:1870 万円

(文・写真:萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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