スーパーGT第3戦鈴鹿・GT300クラスは完全なるピットイン作戦でStudie BMW M4が優勝【スーパーGT 2023 GT300】

■450kmレースは作戦が大事!

6月3日(土)、4日(日)に鈴鹿サーキットで開催された、2023 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 450km RACE。4日(日)には、その決勝レースが行われました。レースはGT500クラスとGT300クラスの混走です。

この鈴鹿戦は450kmレースで戦われました。スーパーGTの450kmレースは、1人のドライバーがレース距離の2/3以上走ってはいけないというルールに加えて、給油を伴うピットイン義務が2回、というルールがあり、GT300クラスでは、ドライバー2名と3名を登録するチームがあるため、どのタイミングでドライバー交代が行われるかも重要なポイントとなります。

スタートの様子
スタートの様子

13時30分にパレードラップ、フォーメーションラップに続いて切られたスタートでは、ポールポジションの61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTが快調な走りを見せ、2位以下を一気に引き離していきます。

この序盤から奇策を講じてきたのが、予選で16番手だった7号車 Studie BMW M4。なんと、1周目を終えた段階でピットインし、1回目の給油を行います。予選は4番手と好位置につけていた2号車 muta Racing GR86 GTも、2周目の終わりで給油のためのピットイン。

燃費的には、給油1回で450kmを走り切れると考えたこの2台は、早い段階で1回目の給油ピットインを終えてしまえば、先々のピットインに絡んだ順位争いで先んじることができる、という作戦に出たのです。

muta Racing GR86 GTのピット作業
muta Racing GR86 GTのピット作業

実際にこの作戦は、序盤のうちに大成功となります。5周目終わりに早めの給油ピットを敢行した18号車 UPGARAGE NSX GT3は、タイヤ交換も行いましたが、コースに復帰すると右リアタイヤのナットが外れてホイールが脱落! UPGARAGE NSX GT3はコース上でストップします。

このためフルコースイエロー(FCY)となり、さらにセーフティカー(SC)が導入されることになりました。ここで、早めに1回目の給油ピットを行ったチームは一気にギャップが縮まり、序盤の勝負権も得ることに成功します。

SUBARU BRZ R&D SPORT
SUBARU BRZ R&D SPORT

しかし、トップを走っていたSUBARU BRZ R&D SPORTにとっては、せっかくの8秒近いリードがリセットに。それによって、1回目のピットを終えると実質の6番手まで順位を下げてしまいます。

●トップ集団の明暗を分けた2回目のピット

全車が1回目のピットを終えると、トップはmuta Racing GR86 GT、2番手に52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GT、3番手にStudie BMW M4という序列となります。

埼玉トヨペットGB GR Supra GTのピット作業
埼玉トヨペットGB GR Supra GTのピット作業

そして、GT500での39周目に、埼玉トヨペットGB GR Supra GTとStudie BMW M4が同時にピットイン。ともに給油とタイヤ交換を行いますが、ここで埼玉トヨペットGB GR Supra GTはタイヤ交換に時間をかけてしまい、Studie BMW M4が先にピットアウト。Studie BMW M4が2位に浮上します。

muta Racing GR86 GTのピット作業
muta Racing GR86 GTのピット作業

また、ピット作業でのアドヴァンテージを広げるために、2回目のピットインを引っ張っていたmuta Racing GR86 GTも、GT500での41周目にはピットイン。作業を終えてコースに復帰する時には、Studie BMW M4の前に入ることにも成功します。

が、アウトラップの第1コーナーでオーバーシュート! 一瞬コースから外れてしまいます。すぐにコースに戻るも、その背後には十分にタイヤの温まったStudie BMW M4が迫り、その周のデグナーカーブでStudie BMW M4がトップに立ちます。

終盤のトップ争い
終盤のトップ争い

GT500での53周目には、全部のマシンが2回目の給油ピットインを済ませます。この時、トップはStudie BMW M4、2番手がmuta Racing GR86 GT。しかしそのままStudie BMW M4が逃げ切れるほど、muta Racing GR86 GTは甘い相手ではなかったようで、そこに追いついた埼玉トヨペットGB GR Supra GTも絡んでの、3台でのトップ争いとなります。

Studie BMW M4
Studie BMW M4

そんなトップ争いが激しくなる中、GT500での59周目に日立Astemoシケインの手前で、87号車 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3と30号車 apr GR86 GTが争うところを、左側から追い抜こうとしたGT500マシン、23号車 MOTUL AUTECH Zの松田次生選手が、apr GR86 GTに接触。スピン状態からタイヤバリアを飛び越え、フェンスに激突するという大クラッシュが発生。

これによりレースは赤旗中断となり、GT500での58周時点での順位でレースが終了することになりました。

Studie BMW M4
Studie BMW M4

2回目のピットイン後での差がそのまま順位となった形で、優勝は7号車 Studie BMW M4。予選16位からの作戦勝ちと言える優勝です。チームにとっては昨年5月の鈴鹿戦での優勝以来、1年ぶりの優勝です。また、柳田真孝選手は2020年のSyntiumアップルLOTUS以来の優勝になりました。

muta Racing GR86 GT
muta Racing GR86 GT

2位には2号車 muta Racing GR86 GT、3位には52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTと続き、1回目のSC導入以前に給油ピットインを行ったチームが上位を独占したカタチとなります。

埼玉トヨペットGB GR Supra GT
埼玉トヨペットGB GR Supra GT

今回の順位により、ドライバーズポイントトップは4位に入ったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rですが、muta Racing GR86 GTが2位に入ったことでポイント数は同点。次戦富士100LAPレースでのサクセスウェイトも90kgとなります。

優勝したStudie BMW M4のドライバー、柳田選手と荒選手
優勝したStudie BMW M4のドライバー、柳田選手と荒選手

GT300クラスでは、全チームが2回目のピットインを終えていたために、順位に関しては正式結果として発表がなされています。

次戦は8月5日(土)、6日(日)に富士スピードウェイで開催される富士100LAPレース。450kmレース4連戦のうちの3戦目となることで、作戦も一筋縄ではいかなることでしょう。それこそ、予想の付かないレース展開となります。

●スーパーGT2023第3戦 鈴鹿 GT300決勝結果

順位 ゼッケン 車名 ドライバー 周回数
1 7 Studie BMW M4 荒 聖治、柳田 真孝 54
2 2 muta Racing GR86 GT 堤 優威、平良 響、加藤 寛規 54
3 52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 吉田 広樹、川合 孝汰 54
4 56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R J.P.デ・オリベイラ、名取 鉄平 54
5 11 GAINER TANAX GT-R 富田 竜一郎、石川 京侍 54
6 61 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口 卓人、山内 英輝 54
7  60 Syntium LMcorsa GR Supra GT 吉本 大樹、河野 駿佑 54
8 10 PONOS GAINER GT-R 安田 裕信、大草 りき 54
9  30 apr GR86 GT 永井 宏明、織戸 学、小河 諒 54
10 20 シェイドレーシング GR86 GT 平中 克幸、清水 英志郎 54
11 25 HOPPY Schatz GR Supra GT 菅波 冬悟、野中 誠太 54
12 55 LEON PYRAMID AMG 蒲生 尚弥、篠原 拓朗 54
13 31 apr LC500h GT 嵯峨 宏紀、小高 一斗、根本 悠生 54
14 360 RUNUP RIVAUX GT-R 青木 孝行、田中 篤、大滝 拓也 54
15 6 DOBOT Audi R8 LMS 片山 義章、R.メリ・ムンタン、神 晴也 54
16 244 HACHI-ICHI GR Supra GT 佐藤 公哉、三宅 淳詞 54
17 50 ANEST IWATA Racing RC F GT3 I.オオムラ・フラガ、古谷 悠河、小山 美姫 54
18 4 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口 信輝、片岡 龍也 54
19 5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 冨林 勇佑、松井 孝允 54
20 27 Yogibo NSX GT3 岩澤 優吾、伊東 黎明 54
21 88 JLOC ランボルギーニ GT3 小暮 卓史、元嶋 佑弥 54
22 96 K-tunes RC F GT3 新田 守男、高木 真一 54
23 87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3 松浦 孝亮、坂口 夏月 53
24 PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG 阪口 良平、リアン・ジャトン、川端 伸太朗 53
25 48 植毛ケーズフロンティア GT-R 井田 太陽、田中 優暉 53
26 22 アールキューズ AMG GT3 和田 久、城内 政樹  52
R 18 UPGARAGE NSX GT3 小林 崇志、小出 峻 5

(文:松永 和浩 /写真:吉見 幸夫)

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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