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■量産初のロータリー搭載車コスモスポーツ誕生
1967年(昭和42年)5月30日、マツダ(当時は、東洋工業)から世界初のロータリーエンジン量産車「コスモスポーツ」がデビューしました。
ロータリーエンジンは、おむすび型のローターが回転して動力を発生する画期的な機構のエンジンであり、量産化に成功したのはマツダだけです。
●ロータリーエンジンを考案したフィリックス・ヴァンケル技師
ロータリーエンジンを考案したのは、ドイツ人のフィリックス・ヴァンケル技師で、NSU社と共同でロータリーエンジンの開発を進めました。多くの自動車メーカーから。 注目を集めましたが、中でも東洋工業は、いち早くロータリーエンジンへの挑戦を決めて、1961年にNSU社とロータリーエンジンの技術提携を締結。耐久性に問題があったロータリーエンジンですが、マツダは全社を上げて改良に取り組み量産化に成功したのです。
ロータリーエンジンは、三角おむすび型の「ローター」とまゆ(楕円)型の「ローターハウジング」で構成されます。ローターの回転とともに、ローターとハウジングで形成される空間が容積を変えながら、吸気、圧縮、爆発、排気行程の4行程を繰り返します。
一般的なレシプロ(ピストン往復)エンジンに対して、爆発によって直接ローターを回転させるロータリーエンジンは、軽量コンパクト、低振動・低騒音、高出力というメリットがあります。一方で、その機構から燃費と排ガス性能がレシプロエンジンより劣るという課題がありました。
●鮮烈なデビューを飾ったコスモスポーツ
ロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツは、1964年の東京モーターショーでデビューし、その美しいシルエットと量産初のロータリーエンジン搭載車ということで、世界中に衝撃を与えました。その後、3年間徹底した実車による実証試験を行い、1967年ついにコスモスポーツは市場に放たれたのです。
NSC社が開発したのは、ローターが1つのシングルローターでしたが、性能が十分でなかったので、マツダはローターを2つに増やした2ローター(491cc×2)12A型に改良。その結果、コスモスポーツの最高出力は110PSに達して最高速度185km/h、ゼロヨン16.3秒という圧巻の走りを誇りました。
まさに、キャッチコピー「走るというより、飛ぶ感じ」を体現させるスポーツカー、さらにロータリーエンジンのデビューを飾るにふさわしい流線型のシャープなシルエットが、多くの人を魅了しました。
ただし、コスモスポーツの価格は当時のクラウンより高い148万円、現在の価値にすれば1000万円を超える破格のスポーツカーだったので、1972年までの5年間で累計生産台数は1176台にとどまりました。
●ロータリーの栄光と衰退、そして復活
その後、マツダは「ファミリア」、「ルーチェ」、「カペラ」、「サバンナ」、「コスモAP」、「サバンナRX-7」と次々にロータリー搭載車のラインナップ展開を行い、ロータリーの一時代を築きました。しかし、年々厳しさを増した排ガス/燃費規制への対応が困難となり、2003年発売の「RX-8」を最後にロータリーエンジンは市場から消えてしまいました。
その後、ロータリーエンジン待望論は根強く、幾度となく復活の噂が流れましたが、今年(2023年)初頭に復活が正式に発表されました。マツダが、ロータリーエンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド方式のプラグインハイブリッドSUV「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を初公開したのです。
具体的な発売日は未定ですが、新しいロータリーエンジンに期待するところ大ですね。
今現在、ロータリーエンジンの素晴らしさを体現している人は少ないはずです。それでもいまだにロータリー伝説が語り継がれ、復活を望む声が大きいのはなぜでしょうか。レシプロエンジンとは、何もかもが違う、孤高のエンジンだからかもしれません、思わず応援したくなる人間の心理かもしれません。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)