マツダ「ボンゴ」標準価格38.5万円でデビュー。ワンボックスの代名詞となりマツダの屋台骨を支える【今日は何の日?5月9日】

■エンジンを床下に置くキャブオーバー型商用車/乗用車として一世を風靡

1966年にデビューした初代ボンゴ(ワンボックスバン)
1966年にデビューした初代ボンゴ(ワンボックスバン)

1966年(昭和41年)5月9日、マツダの初代「ボンゴ」がデビューしました。

ボンゴシリーズは、キャブオーバーのRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトで、トラックとワンボックス型バン、および乗用のワゴンと多彩なモデルが設定され、人気モデルとなりました。


●ミニエースやデリカに先行して登場したワンボックスカーのパイオニア

ボンゴシリーズは、RR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトで、商用のトラックとワンボックス型バン、および乗用のワンボックス型ワゴン「コーチ」を設定。コーチは、バンのボディに3列シートを搭載した8人乗りのワゴンで、大人の膝程度の高さの低床によって、アプローチのし易さが注目されました。

パワートレインは、「ファミリア」用アルミ製800cc(その後1.0Lに拡大)直4 OHVエンジンと4速フロア式MTの組み合わせ。エンジンは、低速重視にチューニングされ、ファミリアより最高出力で劣るものの、低中速トルクが高いためフル搭載時にも力強い走りができました。

超低床の多目的車として登場したボンゴバンは、標準車が38.5万円、デラックスが42.5万で販売され、その利便性が評価されてヒット。その後、トヨタ「ミニエース」や三菱「デリカ」が登場しますが、ボンゴは日本におけるワンボックスカーのパイオニアであり、スタンダードになったのです。

●2代目はさらに進化してマツダの中核モデルに成長

初めてのモデルチェンジを迎えて登場した2代目ボンゴでも、初代と同じように1977年にトラック、1978年にワンボックスのマルチバンと乗用のマルチワゴンが投入されました。

1977年に登場した2代目ボンゴトラック
1977年に登場した2代目ボンゴトラック

スタイリッシュなワンボックスのスタイリングと、小型ダブルタイヤと低床荷室にフルフラットシートを継承。エンジンは、1.3L/1.6L直4 OHV、ワゴンには1.8L直4 OHVを搭載し、駆動方式は従来のRRから前席下にエンジンを置き、後輪を駆動する方式に一新することで、力強い走りが実現されたのです。

その後も様々な改良を加えながら、初代と2代目ボンゴは1970年代に堅調な販売を続け、1980年に5代目のファミリアが登場するまで、マツダの屋台骨を支えたクルマとなりました。

●マツダは商用車の自社生産から撤退、ボンゴはOEM車に

その後3代目、4代目とやや販売は下がったものの堅調な販売を続け、2020年まで生産されました。そして、2019年からはボンゴブローニイバンをトヨタのハイエースOEMとして、2020年からは、商用車ボンゴバン、ボンゴトラックをダイハツからのOEM供給による新型車に切り替えて、販売が続けられています。

2021年に登場したボンゴブローニイバン(ダイハツのOEM)
2019年に登場したボンゴブローニイバン(トヨタのOEM)

マツダは、1998年の軽自動車撤退や2018年のミニバン撤退と同様に商用車についても、自社生産から完全撤退し、開発リソースを乗用車に集中することを決断したのです。

ボンゴは、トヨタの「タウンエースバン」や日産自動車「NV200バネット」などと同クラスの長寿商用バンでしたが、実質的には54年の歴史の幕を下ろしたことになりました。


かつては、ワンボックスの代名詞とも言われたボンゴですが、競争の激しい商用車のなかで徐々に台数を減らしました。メーカーとしては“選択と集中”をしなければ生き残れない厳しさがあったりするもの。現在のOEM対応も致し方ないと思われます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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