新型「LM」が見せる次世代レクサスデザインとは?威厳を持ちながらエレガントな佇まい【クルマはデザインだ】

■もっと大きく、さらに堂々としたスタイルを目指す

一回り大きくなったボディは威厳とエレガンスを融合したデザインコンセプトを持つ。相反する要素は次世代レクサスデザインと共通だ
一回り大きくなったボディは、威厳とエレガンスを融合したデザインコンセプトを持つ。相反する要素は次世代レクサスデザインと共通だ

4月18日に世界初公開された、レクサスの新型「LM」が話題です。

「素に戻れる移動空間」を開発コンセプトとしたフラッグシップのMPVらしく、威風堂々としたボディがその理由のようですが、そのデザインの特徴はどこにあるのか?

レクサスLMサイドビュー
レクサスLMサイドビュー

公開された写真から、エクステリアのファーストインプレッションをお届けします。

●相反する要素を高次元で融合させるレクサスデザイン

新型のデザインコンセプトは「Dignified Elegance」、つまり「堂々とした威厳」と「エレガンス」の融合です。

そこであらためてボディ全体を見ると、トヨタのアルファード/ヴェルファイアそのものだった先代から85mm長く、40mm広く、10mm高い。「長く、広く、低く」が一般的な最近のモデルチェンジを考えると、高くなった新型は「堂々、威厳」を実現するため、明確にサイズ感をひとつ上げたように思えます。

進化したスピンドルbディはボディとの一体感をより強めている。しかし、その迫力は先代から確実に引き継いでいる
進化したスピンドルボディはボディとの一体感をより強めている。しかし、その迫力具合に変化はない

また、新型LMはNXから始まった次世代レクサスデザインとして、「機能的本質や動的性能に根差したプロポーションと独自性の追求」を掲げています。ユニークなのは、この「本質と独自性」に加え、上記の「威厳とエレガントさ」という、相反する要素の融合をふたつの点で掲げているところです。

では、フロントから具体的に見てみます。まず、注目はさらに進化したスピンドルボディで、外板色を使うことでボディとの一体化を図り、実にシームレスな表現となっています。ただ、一方でボンネットフードやランプ類、あるいはAピラーのつけ根などには意外にラインが多く、「スッキリ」というのとはちょっと違うようです。

●トヨタブランドと異なるレクサスの独自性

前後から引かれたキャラクターラインはナナメに交差し、複雑な面構成を作っている。張り出したフェンダーはタイヤの存在感を際立てている
前後から引かれたキャラクターラインはナナメに交差し、複雑な面構成を作っている。張り出したフェンダーはタイヤの存在感を際立てる効果がある

ボディサイドに目を移すと、「抜けのよい開放的キャビン」としてAピラーをブラックアウトし、リアピラーも途中でカットされています。5mを超す長さを持っていれば、いずれもボディ色でいいのでは?と思いますが、ここはトヨタのノアなどと同様、やはり今の時流を優先したのでしょうか。

一方、フロントからドアミラー、リアからフロントフェンダーへ引かれた2本のキャラクターラインも特徴的。前後フェンダーのふくらみを強調して、「タイヤの存在感」を出す役割は一般的ですが、2本をナナメに交差させることで、意外なほど複雑な面を作っているのがわかります。

この広大なボディの側面で「何を描くか」「どう埋めるか」、あるいは「何をしないか」は、まさにデザインコンセプトに依るところですが、ここでは「独自性の追求」というフレーズが頭に浮かびます。

リアから見るとフェンダーの張り出しの強さがよく分かる。U字型のランプと下半身の台形ボディの組み合わせは比較的シンプルだ
リアから見るとフェンダーの張り出しの強さがよく分かる。U字型のランプと下半身の台形ボディの組み合わせは比較的シンプルだ

リアビューでは、U字型のコンピランプとナンバープレートを囲む、台形表現の組み合わせこそ定番ですが、リアホイールアーチからボディの「合わせ目」をリアランプ下まで持ってくる手法は新鮮です。先代やノアなどのような、縦の「合わせ目」を消すことによって、重心を低く見せる効果があるのかもしれません。

さて、今回はあくまでも公開された写真によるファーストインプレッションでしたが、印象的なのは、トヨタブランドが新型のシエンタやプリウスなどで、明快なシンプル路線に舵を切る中、次世代レクサスデザインでは、ある種の勢いや動きなどをストレートな表情で見せている点です。

その分かりやすさの理由はどこにあるのか? たとえば、この新型が上海で初公開されたところにも、大きな意味や意図があるのかもしれません。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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