■佐川急便は、日本のベンチャーと組み中国製EVを導入予定
国土交通省によると、日本における運輸部門のCO2排出量は、2020年度で17.7%を占めるそうです。
CO2を減らすには、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーEV(BEV)など、幅広い選択肢の中からニーズに応じて選択する必要があります。大型車であればすでに大型バスなどに採用されているように、燃料電池車も候補になり得ます。
一方で、走行する範囲が狭い個別配送(個人配送)などであれば、BEVという流れが今後進みそう。すでに日本郵便が三菱のミニキャブ・ミーブバンを採用していて、佐川急便もベンチャーのASFと組み、生産を委託する中国製EVを導入すると報じられています。
そんな中、ホンダとヤマト運輸は、ホンダが2024年春に発売を予定している新型軽商用バッテリーEV(BEV)の集配業務における実用性の検証を2023年6月から8月まで行うと明らかにしました。検証には、軽バン「N-VAN」ベースのテスト用車両が使われます。
コロナ禍もあってEC市場が拡大し、物流の需要が高まるとともに、CO2排出量の削減も求められています。
ホンダでは、2050年に同社が関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を掲げています。日本では、2024年春に発売予定の新型の軽商用EVを含め、生活に身近な軽自動車の領域からEVの普及に向けた取り組みを進めるとしています。
一方のヤマトグループは、「2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ」「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)」の実現を目指しています。主要施策のひとつとして、2030年までにバッテリーEV2万台の導入を目標に掲げ、小型トラックを中心にEVの導入を進めるなど、サステナブルな物流の実現に向けた取り組みを推進。
このほど両社は、2024年春の発売予定である新型軽商用EVを活用し、環境負荷軽減効果の検証をはじめ、集配業務における実用性や車両性能の検証を実施します。さらに、充電オペレーションを含むエネルギーマネジメントの各種基礎データを取得し、実用性の高いEVの運用に役立てるとしています。
具体的には、環境負荷軽減効果の検証をはじめ、集配業務における実用性や車両性能の検証、車両の使い勝手や航続距離可能距離など、EVならではの実用性も検証されます。さらに、ドアの開け閉め、乗り降りが多い集配業務を通じた車両の耐久性の検証も行われます。
そのほか、さまざまな特徴を持つエリアでの車両性能の検証、配送荷物が多く乗り降りの機会が多い東京23区エリアも含まれています。一方で、1度の配送における走行距離が比較的長い栃木エリアや、坂が多くアップダウンのある兵庫エリアも実証エリアになっています。
さらに、EV運用における各種基礎データの取得や検証、日々の集配業務における車速、アクセルやブレーキなどドライバーの運転操作、空調による電力消費量、走行後の充電量や充電時間帯などの各種基礎データの取得も行われます。複数台のEV運用を想定した充電オペレーションと、エネルギーマネジメントの検証もされる予定。
先述したように、新型の軽商用EVは軽商用バンであるN-VANがベース。大容量のラゲッジスペースを備え、助手席から荷室までフラットになる低い荷室空間が特徴です。
検証では、ヤマト運輸が導入を進めている小型モバイル冷凍機「D-mobico」を荷室に2台搭載し、冷蔵、冷凍品の配送にも対応するそう。「D-mobico」は、モバイルバッテリーで駆動し、ドライアイスを使用しないため、より環境に配慮した配送に寄与します。
(塚田 勝弘)