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■人気はAWDモデルで、上級の「Limited」が75%に達する
すでに納車がスタートしているSUBARUの新型クロストレックは、2022年11月に受注が開始されました。
約5ヵ月で1万2000台を受注し、ディーラーに試乗車が配備された3月中旬から約1ヵ月で約3000台と、順調にオーダーを重ねているそうです。AWDが72%、FWDが28%と、スバルらしくAWDの人気が高くなっています。
グレード別では上級の「Limited」が75%、「Touring」が25%で、初期受注らしく上級仕様が売れています。新型車は、高いグレードから売れるという一般的な傾向もあり、モデルライフを通じれば、もう少しFWD(XV、クロストレックを通じて初設定)やTouringの比率が高まるかもしれません。
ボディカラー別では、「オフショアブルー・パール」が一番人気で36.9%。次いで「クリスタルホワイト・パール」が22.5%と支持を集めています。
以下、「マグネタイトグレー・メタリック」が11.3%、「クリスタルブラック・シリカ」が7.3%、「アイスシルバー・メタリック」が6.4%、「ホライゾンブルー・パール」が5.7%、「サファイアブルー・パール」が4.0%、「オアシスブルー」が3.8%、「ピュアレッド」が2.1%となっています。
●注目装備は、オプションのナビに付く「what3words」
走りなどをご紹介する前に、新型クロストレックの注目機能を紹介します。
メーカーオプションのナビゲーション機能がそれです。11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステムが「Limited」に標準、「Touring」にメーカーオプションで用意されています。つまり、11.6インチのセンターディスプレイはグレードにより標準かオプショで、純正ナビ機能は全車オプションということになります。
メーカーオプションのナビ機能を選択すると、日本車では初採用となる「what3words」という機能(アプリ)が使えます。車載において音声操作できるのは世界初だそう。筆者は、メルセデス・ベンツで同機能を試したことがあります。メルセデスでは、手持ちのスマホに同アプリをインストールし、3つの単語(ワード)をMBUXに入力すると、ピンポイントで目的地を設定するという流れになっています。
新型クロストレックでは、純正ナビにアプリとして用意されているため、より手間をかけずに、たとえば広大な駐車場の一地点を目的地に設定することができます。
なお、「what3words」とは、世界を3m四方のメッシュに区切り、各区画に固有の3つの言葉(3つのキーワード)をランダムに割り当てた住所のようなもの。なお、3つの言葉自体に意味はなく、日本には日本語で割り振られていて、日本語として不適切な言葉は排除されています。
同アプリは、たとえば広大なアメリカのキャンプ場に集合する際などにピンポイントで位置情報を共有することができます。日本でもスタジアムやショッピングモールなどで集合する際、あるいは大きな駐車場や公園などのある地点にピンポイントで向かったり、集合したりする際も便利。花見をする際などにも使えそうです。
「what3words」のアドレスは、最近ではガイドブックや旅行ガイド、Webサイトなどで表示されているほか、無料の「what3words」アプリ、NAVITIMEアプリでは、場所をタップするだけで、そのスポットの3つの単語が表示されます。
なお、「what3words」は新しい住所のようなもので、ナビ機能ではないため別途ナビを使う必要があります。実際にプレス向けの試乗会会場まで使ってみましたが、ピンポイントで会場の入口を指定し、純正ナビで到着できました。
●ボディサイズはほぼ踏襲しつつも、荷室容量は若干減少
さて、新型クロストレックのサイズやパッケージや走りなどに戻ります。先代やライバルも含めてボディサイズからチェック。
●ボディサイズサイズ(全長×全幅×全高mm/ホイールベースmm/最小回転半径m)
先代SUBARU XV:4485×1800×1550mmmm/2670mm/5.4m
新型SUBARUクロストレック:4480×1800×1575mm/2670mm/5.4m ※ルーフレール装着車の全高は1580mm
トヨタ・カローラクロス:4490×1825×1620mm/2640mm/5.2m
クロストレックのボディサイズで唯一近いのが、カローラクロス。新型になり、1550mmの高さ制限のある機械式立体駐車場には入庫できなくなりましたが、1.8mに収まる全幅、全長がわずかに短くなるなど、日本でも取り回しのしやすいサイズに収まっています。ただし、最小回転半径では、全幅が25mmワイドなカローラクロスよりも0.2m大きくなっています。
乗降性も上々です。リヤドアが大きく開くだけでなく、後席足元のサイドシル部はフラットになっていて、足の運びが楽に感じられます。
また、高効率なパッケージングも美点です。少し高めの位置に座らせるフロントシートは、設計の刷新により快適性が向上。後席は、先代と同様に足元が広く、Cセグメント級としてはトップクラス(全長の長いホンダ・シビックはのぞく)といえるでしょう。
身長171cmの筆者の場合、頭上まわりにも十分な余裕が残ります。なお、荷室容量は先代XVの340L(1.6Lは385L)から若干小さくなり、315Lとなっています。ルーフラインが後ろに行くほど下がるなど、攻めたエクステリアデザインによるものか分かりませんが、ワイドな開口部を確保するなど、実用性の高さは同等レベルといえます。
●フラットな乗り味や高い静粛性が光る
新型クロストレックのプラットフォームは「SUBARU GLOBAL Platform」の進化版で、フルインナーフレーム構造の採用をはじめ、ウェルドボンド(構造用接着剤)の延長、高減衰マスチック(弾性接着剤)がルーフが採用されているほか、サスペンション取付剛性の向上、フロントシートの構造変更、エンジンのひねり剛性とトランスアクスル接合部の曲げ剛性向上など、多岐にわたっています。
新型クロストレックを一般道で走らせると、先代よりも音・振動対策が念入りに施されているのが分かります。
高減衰マスチックにより不快な共振を止め、音の収束性を高めるだけでなく、音からも感じられる乗り心地の向上感にも寄与。いわゆるドラミングと呼ばれる、40km/h程度くらいまでの速度域での共振によるノイズやこもり音も、ほとんど伝わってきませんでした。
パワートレーンでは、先述したようにエンジンやトランスアクスルの剛性向上、アルミマウントの採用やクランク軸受けからマウントに伝わる振動を低減させるなど、エンジンコンパートメントからの音・振動対策も施されたことで、乗り味や静粛性の向上に寄与しています。
また、背骨の下にある仙骨を支えるステーが設けられたフロントシートの座り心地も上々。短時間の試乗ではありましたが、姿勢を容易に維持できることで、乗り心地の向上にも寄与しています。
サスペンションはストローク量などは基本的に変わらないものの、ボディ剛性が高まったことで、バネレートを落とし、しなやかな乗り味、質感が高められています。
バネレートを下げるとロール量は増えそうですが、操舵からロールまでの一体感にこわだり、単に足を柔らかくするのではなく、クオリティの高さが追求されています。操舵に対してリニアにロールするため、より扱いやすくなっています。ロールと揺り戻しの流れが把握しやすく感じられます。
とはいえ、決してソフトなワケではなく、スバルらしく芯が一本通ったすっきりした乗り味で、軽快なハンドリングと両立。ハンドリングの良さは、2ピニオンの電動パワーステアリングも利いています。2ピニオン化により初期からリニアなフィーリングが得られるほか、ステアリングの操舵角度に応じてギヤ比が変化するバリアブルギヤレシオの採用も含めて、タイトな山道でもスムーズなハンドリングが可能なほか、高速道路での直進安定性も印象的でした。
●17インチと18インチ車の乗り心地の差は?
なお、筆者は、「Limited」と「Touring」のAWD同士を乗り比べました。タイヤサイズは、前者が225/55R18、後者が225/60R17サイズで、ともにオールシーズンタイヤを装着。17インチの方が路面の当たりがややマイルドで、乗り心地も若干良く感じられます。ただし、それで18インチの「Limited」を避けるほどの差はありません。
なお、走行モードは「I」と「S」から選択できます。「S」にすると回転数が高まり、より分厚い最大トルクを享受できるようになります。ただし、エンジン音も当然高まりますので、山道や高速道路への合流時などスポーティに走らせたい時などに向いています。パワーステアリングや足まわりは、いずれのモードでも変わりません。
また、新型になりスムーズな出だしも好印象。アクセルを踏んだ際のエンジン回転数の上げ方を変えたことで、リニアな加速フィールが得られています。なお、CVTのステップ変速は変わっていないそう。
パワートレーン自体のスペックなどは変わっていないものの、強靱なボディとしなやかな足まわりを手に入れた新型クロストレック。そして乗り心地も静粛性も高まったことで、より上質な乗り味を享受できます。
毎日の運転はもちろん、広角単眼カメラも追加された最新世代のアイサイトも含めて、ロングドライブでの快適性、安全性も高まっています。
走りのブラッシュアップが際立つ新型クロストレック。より快適なドライブを楽しむのであれ、先代XVからの買い替えはもちろん、ほかのCセグメント級モデルからの乗り換えにもオススメできるモデルに仕上がっています。
(文:塚田 勝弘/写真:塚田 勝弘、SUBARU)