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■ライバルとボディサイズ、取り回しのしやすさを比較
5代目にスイッチしたレクサスRXは、同ブランドを代表するSUVであるだけでなく、ブランドを牽引するグローバルモデルです。1998年から2022年9月末までの世界累計販売台数は、約362万台で、約95の国や地域に送り出されています。
新型は、改良型の「GA-K」プラットフォーム、リヤにマルチリンク式サスペンションを搭載することで、ハンドリングや乗り心地の良さを実感できます。
弟分のNXでも、高い静粛性やフラットライドな乗り味を堪能できますが、兄貴分のRXは、さらに洗練された走りを享受できます。まずは、新型RXとライバルのボディサイズを比べてみます。
●ボディサイズサイズ(全長×全幅×全高mm/ホイールベースmm/最小回転半径m)
新型レクサスRX:4890×1920×1700mm/2850mm/5.5〜5.9m
先代レクサスRX:4890×1895×1710mm/2790mm/5.9m
メルセデス・ベンツ GLE:4930×2020×1780mm/2995mm/5.6〜5.8m
BMW X5:4935×2005×1770mm/2975mm/5.9m
アウディ Q5:4680×1900×1665mm/2825mm/5.5m
ボルボ XC60:4710×1900×1660mm/2865mm/5.7m
新型RXは、全長を先代と同値に抑えつつ、全幅を25mm拡幅し、ホイールベースも60mmも延ばしています。
ライバルでは、GLEとX5が全幅2mを超えています。2mを超えると、日本では狭い道だけでなく、すれ違いなどで大きさを実感するシーンも多くなります。GLEは巨体の割に小回りが利き、最小回転半径は抑えられている方です。
先代RXの最小回転半径は全車5.9mでしたが、新型になり「RX500h “F SPORT Performance”」のみ5.5mに抑えられています。
“F SPORT Performance”には、後輪転舵角が拡大された「ダイナミック・リヤ・ステアリング(DRS)」が搭載されていて、低速域の小回り性、コーナリング時の回頭性、高速域の安定性を実現。取り回しのしやすさも重要であるなら「RX500h “F SPORT Performance”」を指名する手もありかもしれません。
この中で最もコンパクトなQ5は、取り回し性が最も優秀で、アッパーミドルクラスSUVの中では比較的扱いやすいといえるでしょう。
●存在感を発揮しながらも、レクサスらしい上質感を抱かせる内外装
エクステリアは、「スピンドルグリル」だけでなく、フォルム全体を立体感のある「スピンドルボディ」で表現するということで、ボディサイズの拡幅を感じさせないスマートな造形になっています。むしろ、先代よりもスマートな印象を受けるほど。フロントフードの伸びやかさ、前後ホイールアーチの力強さも印象的。
最も目を惹くのは、精緻な「スピンドルグリル」で、グリルのグラデーション表現は、単なる「オラオラ系」ではなく、押し出し感を醸し出しながらも洗練さ、スタイリッシュさを抱かせます。
一方のインテリアは、馬に乗る際に使う「手綱」から着想を得て、ステアリングスイッチからヘッドアップディスプレイまで、操作系と表示計を高度に連携させた設計になっています。
水平基調のダッシュボードに加えて、メーターフードからドアトリムまでの連続感のあるデザインにより、高級車にふさわしい包まれ感もあります。
●3タイプのパワートレーンを設定
用意されるパワートレーンと駆動方式は「RX500h」向けの2.4Lターボを積む「デュアルブーストハイブリッド」の「2.4L-T HEV DIRECT4」。
「RX450h+」には、2.5L NAでプラグインハイブリッドの「2.5L PHEV E-Four」を搭載。「RX350」には、2.4Lターボの「2.4L-T AWD/FF」が用意されています。
なお、世界初公開時点で発表されていた「RX350h」は、2.5Lハイブリッド(シリーズパラレルハイブリッド/旧名称THS II)を搭載。
日本向けの発売時点では、半導体不足などの部品供給問題などもあり「RX350h」は設定されていないそう。売れ筋グレードになりそうなだけに、いずれ日本でもラインナップに加わるのではないでしょうか。
「500h」は、“F SPORT Performance”のみ。新型クラウンにも搭載されているシステムであり、ターボの過給とモーターによるアシストにより全域で力強く、ハイブリッドならではのスムーズさとターボによる力強さを享受できます。
今までのハイブリッド車とはひと味違うスポーティ志向といえる味付け。一般道で全開加速できるシーンはありませんでしたが、中低速域のトルク感、高速域の伸び共に文句なしの速さで、モアパワーを抱かせることはまずないはず。
また、組み合わされるトランスミッションは、6速ATの「Direct Shift-6AT」。トルコンの代わりにクラッチを使う同ATは、小気味よい変速フィールで、文字どおりダイレクト感も味わえます。それでいながら、モーター走行の頻度(割合)も多く、EV度合いも高めに感じられます。
試乗車は「500h “F SPORT Performance”」で、最小回転半径は5.5m。先述したように、撮影のために車両を動かしたり、Uターンしたりした際も、比較的取り回しがしやすいのを実感できました。
フロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンク(前後共にスタビライザー付)というサスペンション形式に加えて、ボディ剛性の強化もあって、路面が良好であれば乗り味も穏やかである反面、235/50R21サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ」を履くこともあり、路面によっては揺すぶられるようなシーンもありましたが、SUVらしく腰が据わったような挙動も印象的です。
●素の「RX350」でも新型レクサスRXらしい上質感、力強い走りが得られる
「RX450h+」の車名は、ハイブリッド車を示す「h」に「+」を付けてPHEVを示しています。個人的にはそのまま、プリウスPHEVのように「RX450 PHEV」の方が分かりやすく、訴求しやすいように感じられます。
なお、グレードは「“version L”」のみで、駆動方式は後輪をモーターが駆動するAWDになっています。また、充電は100Vか200Vの普通充電のみで、急速充電には未対応。
充電時間は、200Vで約5時間半、EV走行距離は86kmとなっています。家などでの充電のみになりますが、近場の買い物や送迎など、日常使いであればEVとしてまかなえることになります。
踏み込めば十分な速さを披露しつつ、比較的穏やかで扱いやすい加速感を引き出せます。モーター走行時の静粛性もとても高く、今どきの最新かつ高級SUVにふさわしい快適な仕上がりになっています。
素の「RX350」には、「version L」と「F “SPORT”」が用意されています。2.4Lガソリンターボで、ハイブリッド車ではありませんが、動力性能はまさに必要十分。「500h」と「450h+」が車両重量2.1tを超える中、FFは1870kg、AWDでも1950kgに収まっています。
試乗車は「version L」のFFで、新型RXでは、最も素直な回頭性とフットワークの良さを味わえました。さすがに弟分のNX350と比べると、軽快感では分が悪いものの、全体にどっしりとした乗り味も示してくれますから、より高級SUVという、いい意味での重厚感も抱かせます。
ちなみに、NXに続きRXにも採用された「e-ラッチシステム」と呼ぶドアハンドルの解除方法は、ドアハンドルを指で押すだけで解除されます。
慣れが必要な反面、慣れてしまうと、とても楽に操作できるメリットも享受できます。とはいえ、オーナーや家族以外のゲストが、説明を聞かずに一発で解除できるのかは疑問。
以前、NXに乗った際に、モデルやカメラマンから「クルマから出られない」という声も実際に聞かれましたので、誰もが使えるユーザーインターフェースとして最適なのか少し考えてしまいます。
出られないと焦り、ドアハンドルを何度か引くと(2回引くと)解除できるのですが、その際はあまりスマートな操作(姿)とはいえません。
●価格
「RX500h “F SPORT Performance”(AWD)」:900万円
「RX450h+ “version L”(AWD)」:871万円
「RX350 “version L”(2WD/FF)」:664万円
「RX350 “version L”(AWD)」:705万円
「RX350 “F SPORT”(AWD)」:706万円
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)