■合成燃料をつくるプロセスでの効率化を研究している「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」
ここ数日、EUでの内燃機関車の動向が報じられています。2035年以降のすべての新型車は、ゼロエミッション(ローカルという意味での)車両のみになるという従来の流れを基本として、CN(合成燃料)を使う内燃機関車は例外とするものです。合成燃料は二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成して製造する燃料です。
その中でも、再エネルギー由来の水素を使う合成燃料は「e-fuel」とも呼ばれています。合成燃料は、現時点では製造技術やコストなどの課題があります。
トヨタやスバル、マツダは、合成燃料でレースに挑むなど、内燃機関のカーボンニュートラル化にもチャレンジしているのは周知のとおり。マツダも2023年のスーパー耐久シリーズに、「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept(55号車)」がユーグレナ製の次世代バイオディーゼル「サステオ」を使うとアナウンスされています。
合成燃料だけでなく、バイオ燃料も世界中で研究が進んでいます。ブラジルではサトウキビを原料としたバイオエタノールの生産が盛んで、ガソリンに混ぜた燃料が普及しています。
2022年07月20日には、ENEOS、スズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ、豊田通商の6社は、「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立。同研究組合は、燃料をつくるプロセスでの効率化を研究するために設立されました。
次世代グリーンCO2燃料技術研究組合とマツダは、2023年3月29日(水)、同研究組合にマツダが参画したと発表しました。マツダの参画により、参加企業は7社になります。同研究組合は、カーボンニュートラル(CN)社会実現のため、バイオマスの利用、効率的な自動車用バイオエタノール燃料の製造に関する技術研究を推進しています。
2022年10月25日には、福島県大熊町と「企業立地に関する基本協定」を締結し、地域の諸課題に対し、迅速で、的確な解決に向けた取り組みをスタート。このほど、同研究組合がCN実現の多様な選択肢のひとつとして推進する、バイオエタノール燃料の製造技術の向上、製造時に発生するCO2の活用に関する研究などが、マツダが推進する、マルチソリューション戦略の選択肢を広げる考えと一致し、マツダの参画に至ったそうです。
なお、マツダは、藻類を使った次世代バイオ研究を進めてきました。以前お伝えしたように、筆者は2019年3月5日、6日に、マツダ主催の「技術コミュニケーションミーティング」に参加し、ライフサイクルアセスメント(LCA)に関する学会に参加したり、プレゼンテーションを受けたりする機会がありました。その際、北九州市でJパワーが藻類を使った研究開発施設をバスの中からですが見学したことがあります。
マツダは、大学と微細藻類由来のバイオ燃料の研究を推進しています。また、2023年1月19日には、ユーグレナが実施する次世代バイオ燃料の普及拡大に向けた事業をサポートするため、同社が発行する無担保転換社債型新株予約権付社債を引き受けたと発表しています。
マツダの技術研究を担当する首席研究員の山下洋幸氏は、「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合から声をかけていただき光栄です。同研究組合のもとで、各社とともにバイオエタノール燃料の製造技術などの研究開発を推進し、CN社会実現に向けた有力な選択肢である、CN燃料の可能性拡大に尽力していきます」とコメントしています。
また、次世代グリーンCO2燃料技術研究組合の中田浩一理事長は、「CN燃料は、CN社会を実現するためのエネルギーとして有力な選択肢のひとつです。CN燃料の知見、技術を積み重ねてきたマツダに新たな仲間として加わっていただき、研究組合はバイオエタノール燃料の製造技術、その際に発生するCO2の活用などについての研究をさらに進めてまいります」と、期待を寄せています。
(塚田 勝弘)