日産のVCターボ(可変圧縮比機構付きのガソリンエンジン)が「第55回 市村産業賞・貢献賞」を受賞

■世界初の技術で高出力化と省燃費性能を両立

日産自動車のVCターボ(可変圧縮比機構付きのガソリンエンジン)は、日本向けとしてはエクストレイルの「e-POWER」用として実用化されています。

日本向けには、エクストレイルのe-POWER用にVCターボエンジンを搭載する
日本向けには、エクストレイルのe-POWER用にVCターボエンジンを搭載する

このほど、同社の「可変圧縮比機構付き自動車用ガソリンエンジンの開発」が、「第55回 市村産業賞」の「貢献賞」を受賞しました。

「市村産業賞」は、日本の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野や学術分野の進展に多大な貢献をした個人またはグループに表彰される賞です。

日産は2020年に、電動パワートレイン「e-POWER」で「第52回 市村産業賞・貢献賞」を受賞しています。

日産自動車のVCターボが「第55回 市村産業賞・貢献賞」を受賞
日産自動車のVCターボが「第55回 市村産業賞・貢献賞」を受賞

今回の受賞テーマは「可変圧縮比機構付き自動車用ガソリンエンジンの開発」。

省燃費性能が求められるエンジン開発において、熱効率を向上させるためには、理論的には圧縮比を上げる必要があります。一方で、高出力を出すためには、空気を多く入れる必要があり、ターボなどで過給するのが一般的です。

近年は、小排気量エンジンにターボで加勢するダウンサイジングターボが主流になり、さらに最近では、排気量を最適化(過度な小排気量化を避ける)するライトサイジングターボが増えています。

ガソリンエンジンは、圧縮比を上げると異常燃焼であるノッキングが発生するという問題があります。高出力化にはノッキングを抑制するために圧縮比を下げる必要があり、出力が不要な運転領域でも圧縮比が低い状態で運転するため、熱効率を高くできないというジレンマに陥ることになります。

同社は、この相反する熱効率向上と高出力化の両立という内燃機関の根源的な課題を解決するべく、20年以上前に可変圧縮比機構の研究を開始し、世界で初めて量産に成功しています。

日本向けには、エクストレイルのe-POWER用にVCターボエンジンを搭載
日本向けには、エクストレイルのe-POWER用にVCターボエンジンを搭載

2018年には、2.0Lの可変圧縮比機構付きのガソリンエンジン「VCターボ」の量産をスタート。従来の3.5Lエンジンに対して、同等の動力性能を確保しながら、約30%もの燃費改善を実現しています。

「VCターボ」は1.5Lエンジンにも拡大され、2022年には100%モータ駆動の「e-POWER」用の発電エンジンとしても採用、優れた燃費性能と高い動力性能の両立を実現しています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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