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■マツダの竹内 都美子氏が執行役員に!
2023年3月17日、マツダのトップが変わるという人事情報が発表されました。新社長に内定したのは、毛籠 勝弘(もろ まさひろ)氏。
すでに多くの報道があるように、毛籠 氏は2004年には欧州・現地法人の副社長を務め、2008年からは執行役員に名を連ね、2016年にはアメリカ現地法人のCEOに就任、2019年に取締役専務執行役員になるなど次代のトップとして期待されてきた人物です。
しかし、ここで注目したい、もうひとつの役員人事は同日に発表された執行役員に関する発表です。
新・執行役員として2名が加わるという発表があり、グローバル人事・安全・病院担当、人事本部長の執行役員として「竹内都美子」氏の名前があったのです。
マツダファンのみならず、自動車業界ウォッチャーであれば、ご存知のように竹内氏はMX-30の主査を務めた人物。
2019年の東京モーターショーにおいて、MX-30がお披露目したときには、”マツダ初の女性主査”ということで多くの記事で紹介されたことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
女性であり、開発ドライバー出身の竹内氏が執行役員に加わるというのは、ジェンダーギャップ(男女格差)が大きいと指摘されることの多い日本の自動車業界にとって大きな意味を持つと感じます。
●トヨタの内情を描くノンフィクションを読むと…
一方で、トヨタ自動車は次期社長として佐藤 恒治 氏を内定していますが、新体制における執行役員は全員男性となっているように見えます。
じつはトヨタも現体制においてはChief Sustainability Officer(CSO)という役割の大塚友美氏が執行役員を務めていたのですが、新体制ではCSO職はそのままにシニアフェローとなることが発表されています。
ジェンダーギャップの解消という意味では、トヨタは逆行しているわけですが、マツダは着々と多様性のある執行役員体制に向かっているといえそうです。
トヨタといえば、講談社より出版された『どんがら トヨタエンジニアの反骨』(清武英利・著)が自動車業界では話題を集めています。このノンフィクションにおいて主人公となっているのは初代86やGRスープラの開発主査として知られる多田哲哉さん。
筆者も86やGRスープラの取材を通して、聞いたことのある話や、当時はオフレコとされていたことなどがドラマチックにまとめてあり、非常に興味深く読み進めることができました。
クルマを生み出すまでのフローも大まかにイメージできますから、クルマ好きだけでなく、自動車業界への就職希望者も必読といえるでしょう。
●日本の自動車メーカーに女性トップは生まれるか
ただしジェンダーギャップ的な視点で『どんがら トヨタエンジニアの反骨』を読むと、トヨタのみならず日本の自動車業界にある男性優位な体質にガッカリするかもしれません。
仕事のストレス発散のために子どもの教育費を使いこんだり、夫婦であっても女性がキャリアを犠牲にするといったエピソードがそこかしこに出てきます。
著者の清武英利氏は美談として描いているのでしょうが、リアリティのあるノンフィクションだからこそ自動車業界の悪しき体質がまざまざと感じられるのも事実です。
日本経済において自動車産業というのは非常に大きな存在ですが、このままの体質では自動車業界は魅力的な就職先とはなり得ないと感じますし、『どんがら トヨタエンジニアの反骨』を読んでそう感じる人も少なくないのでは、と思います。
そうした状況を打破するためにも、ガラスの天井を打ち破り、日本の自動車メーカーにも女性トップが誕生する日が来てほしいと願うばかりです。
そのためにも執行役員のジェンダーギャップを解消することは本当に大事なことであり、マツダの新・執行役員に竹内氏が就くというのは同社にとって大きな一歩になると期待したくなるのです。