目次
■アウトドアやツーリングで楽しそうな2モデルの実力を検証
最近のホンダ製バイクといえば、1950年代から続くビジネスバイク「スーパーカブ」シリーズや、1980年代から1990年代に一斉を風靡したクルーザーモデルの「レブル」シリーズなど、「往年の名車」で使われた車名を冠したモデルも人気です。
ほかにも、ロードスポーツでは1970年代から人気の「CB」シリーズ、1980年代から1990年代半ばのレーサーレプリカ・ブーム時代に生まれた「CBR」シリーズ、2022年には1970年代のスポーツバイクを復活させた「ホーク11」も登場するなど、さまざまなジャンルで、さまざまな名車の車名が与えられたバイクが目白押しです。
そんなホンダが、新型の「CL250」と「XL750トランザルプ(XL750 TRANSALP)」を国内販売することを正式発表しました。
CL250は250ccのスクランブラーモデル、XL750トランザルプは750ccのアドベンチャーバイクと、それぞれ排気量やジャンルは違うものの、いずれもかつての名車で使われた車名を冠している点では同じ。
では実際に、これら新型2モデルは、どんな名車を先祖に持ち、どんな最新装備が施されているのでしょうか? また、これらモデルには、どんな乗り方や使い方が期待できるのでしょうか?
●CL250の元祖ドリームCL72スクランブラーとは?
まずは、CL250から。車名に使われている「CL」は、1960年代や1970年代に人気を博したスクランブラーモデルというジャンルに属するバイクを復活させたものです。
元祖は、1962年に登場した250ccの「ドリームCL72スクランブラー」です。スクランブラーとは、オンロードモデルをベースに、ダートなどでの走破性も両立したオン・オフ両用モデルのこと。
当時、オフロード専用モデルがあまりなかったこともあり、ロードバイクを使い、マフラーをアップタイプにしたり、サスペンションのストローク量を増やすなどで、悪路走行向けにモディファイしたのが始まりといわれています。
実際に、ドリームCL72スクランブラーも、1960年登場のロードスポーツ「ドリームCB72スーパースポーツ」をベースとし、フロントホイールを19インチ化したり、アップタイプのマフラーなどを装備。
国産スクランブラーの草分け的なモデルとして人気を博し、450ccや250cc、125ccや50ccなど、さまざまな排気量のモデルがシリーズ化されて登場し、長年多くのファンを虜(とりこ)にしました。
●街乗りからキャンプまで楽しめそうな軽二輪モデル
そんな往年の名車CLを現代に蘇らせたのがCL250です。アップタイプのマフラーや上体が起きる自由度が高いポジション、フロント19インチ・リヤ17インチのホイールやセミブロックパターンタイヤなど、まさにスクランブラー的なスタイルや装備を採用。
アウターレンズ内に4つの直射式LEDライトを配したヘッドライトなど、現代的な装備もマッチングさせることで、クラシカルながら現代風なテイストも持つネオレトロなモデルに仕上げられています。
エンジンには、最高出力24ps/最大トルク2.3kgf・mを発揮する249ccの水冷4ストローク単気筒を採用。低回転域から高回転域まで扱いやすい出力特性とすることで、オンからオフまで幅広いシーンに対応させています。
車体には、リヤ後端でループ状につながる美しいパイプワークを描くダイヤモンドフレームを装備。レトロなスタイルを一層引き立てる形状ながら、剛性と重量バランスを最適化することで、軽快な走りにも貢献します。
ほかにも、直径41mmの正立フォークにはフォークブーツも装備。クラシカルな外観に貢献すると共に、ダート走行ではフォークのインナーパイプを飛石や泥から守る役割も果たします。
このバイクは、高速道路を走れることで長距離ツーリングにも使え、車検がないため維持費が比較的安い軽二輪モデルというのも魅力。車両重量も172kgと軽量で、免許取り立ての初心者ライダーや、久々にバイクに乗るリターンライダーなどでも取り回しがしやすいことがうかがえます。
また、ラウンドシェイプした燃料タンクなどが醸し出すスタイリッシュなフォルムは、街にベストマッチ。通勤・通学や買い物などの普段使いには、最適な1台といえるでしょう。
加えて、オン・オフ両用ですから、テントを積んでキャンプを目的地にしたツーリングなどでも、キャンプ場などにあるダート道なども楽に走れそう。近年人気のアウトドアにも、十分使えることにも期待したいですね。
なお、価格(税込)は62万1500円。2023年5月18日に発売される予定です。
●XL750トランザルプの元祖はラリーマシン
一方のXL750トランザルプ。こちらは、1987年に登場した583cc・V型2気筒エンジン搭載の「トランザルプ600V」を元祖に持つモデルです。
このモデルは、当時、アフリカ大陸の広大な砂漠を何日間も走り、世界一過酷な競技といわれた「パリ・ダカールラリー(現在のダカールラリー)」に参戦していたワークスマシン「NXR750」の技術をフィードバックしたことが特徴。
激しいラリーの現場で培った技術を活かすことで、オンロードからオフロードまで幅広い道を走破できるツアラー、いわゆる「アドベンチャーモデル」として誕生しました。
大陸横断ツーリングなど、長距離走行でも快適な走りなどが欧州を中心に大ヒット。日本でも一定の人気を博し、1991年には当時の自動二輪中型限定免許(今の普通二輪免許)でも乗ることができる、398cc・V型2気筒エンジンを採用した「トランザルプ400V」も発売されました。
●低・中回転域で力強いトルク特性
そんなトランザルプの後継となるのが、新型のXL750トランザルプ。
エンジンには、軽量コンパクトで高出力な新開発の754cc・水冷直列2気筒を搭載。最高出力91ps/最大トルク7.6kgf・mを発揮するエンジンは、低・中回転域でパルス感のある力強いトルクにより、オフロードでも扱いやすい特性となっています。高回転域ではスムーズな吹け上がりを持たせることで、高速道路などの合流などでも余裕ある加速感を味わえます。
また、クラッチレバーの操作荷重軽減とシフトダウン時の後輪のホッピングを抑制するアシスト&スリッパークラッチを採用。制動時の車体安定性に貢献します。
さらに、スロットルバイワイヤなどの採用により、さまざまな走行シーンに応じ、エンジンの出力特性やフィーリングの変更が可能なライディングモードも用意。「SPORT(スポーツ)」「STANDARD(スタンダード)」「RAIN(レイン)」のほかに、オフロード走行に最適な「GRAVEL(グラベル)」、好みの設定ができる「USER(ユーザー)」といった5つのモードを選べます。
●オールラウンドな走りを追求した車体まわり
車体では、レイアウトの最適化と各部の軽量化を施したリヤフレーム一体型のダイヤモンドフレームを採用。ショーワ製SFF-CA倒立フロントフォークや、プロリンク式リヤサスペンションとのマッチングにより、市街地から未舗装路までオールラウンドで快適な乗り心地に寄与します。
また、防風性能と空力性能を兼ね備えた機能的な大型ウインドスクリーンは、走行時における疲労軽減とクルージングにおける高い快適性を両立。
車両とスマートフォンをBluetoothで連携することで、ハンドルスイッチや音声入力により音楽再生や通話などの操作を可能とする「HSVCS(Hondaスマートフォン・ボイスコントロール・システム)」も備えることで、ロングツーリングなどでの高い利便性なども誇ります。
ほかにも、メーターには、5.0インチTFTフルカラー液晶を使ったマルチインフォメーションディスプレイを採用。ユーザーの好みに応じて、4パターンの画面表示と2色の背景色を選択可能とすることで、高い視認性や使い勝手の良さに貢献します。
●世界一周も可能なバイク?
このバイクは、なんといってもどんな道でも走れてしまう高い走破性と、長距離ツーリングなどでの高い巡航性能や快適性が魅力でしょう。
ホンダは、このバイクのコンセプトについて「Adventure Touring」をキーワードとし、「日常から世界一周までを叶える、新世代ジャストサイズオールラウンダー」を目指して開発したといいます。バイク好きにとって、世界一周ツーリングなんて、とってもロマンがありますよね。
でも、大半のユーザーにとっては、世界を巡る時間もお金もないのが現実。それでも、このバイクは、バイクでの長旅を楽しむために作られたことは注目点です。
XL750トランザルプには、たとえば、北海道や日本一周など、ロングツーリングに最適なことが期待できます。日本各地の大自然などを、レトロなスタイルのバイクにまたがり走る。しかも、最新の装備で乗り心地は快適なんて、きっと最高でしょうね。
なお、価格(税込)は126万5000円。発売は2023年5月25日の予定です。
(文:平塚直樹)