スズキ「スズライト・フロンテ」デビュー。38万円から始まったみんなに好かれる軽乗用車は高級品だった!【今日は何の日?3月23日】

■スズキ初の本格軽乗用車スズライト・フロンテ誕生

1962年にデビューしたスズライトフロンテ
1962年にデビューしたスズライト・フロンテ

1962(昭和37)年3月23日、スズキ(当時は、鈴木自動車)から「スズライト・フロンテ」がデビューしました。

スズキは、1955年に日本初の量産軽自動車「スズライト」を世に送り出しましたが、バンタイプの商用車が中心でした。続いて、より大衆に好まれるような軽乗用車として登場したのが、「スズライト・フロンテ」だったのです。

●日本初の量産軽自動車スズライト誕生

1955年スズキ初の4輪自動車、日本初の量産軽自動車「スズライト」がデビューしました。

1955年に発売された日本初の量産軽自動車スズライト
1955年に発売された日本初の量産軽自動車スズライト

軽自動車の正式な規格が制定されて以降、多くの中小メーカーが軽自動車の製造に挑戦しましたが、どれも技術的にはまだ未熟でした。そんな中でスズライトは、定められた規格の中で最高速度80km/h以上を超える性能と、大人4名が乗車できる室内スペースを確保した完成度の高い軽自動車として量産されたのです。

搭載されたエンジンは、空冷の360cc直列2気筒2ストロークで、最高出力は15.1PSを発揮。そのエンジンを横置きに配置した、日本初のFF方式で室内スペースを確保、サスペンションはコイルスプリングを用いた4輪独立懸架など、当時の先進技術を盛り込んだクルマでした。

スズライトには、セダンSSとライトバンSL、ピックアップトラックSPの3モデルがラインナップされましたが、3年後の1958年には、物品税が非課税となり価格が抑えられるライトバンの1車種に絞られました。

●スズライトのライトバンを乗用車にしたスズライト・フロンテ

1959年にデビューした2代目「スズライトTL」も、横開きテールゲートを備えた商用車のライトバンでしたが、1962年に、より大衆に好まれるような軽乗用車として登場してきたのが、スズライト・フロンテです。

1959年にデビューした2代目スズライトのスズライトTL
1959年にデビューした2代目スズライトのスズライトTL

ボディスタイルは、スズライトバンをベースにして、リアには軽乗用車初の小さいながらも独立したトランクを装備しました。そのため乗員は4名でしたが、後席は大人が座るには、今の時代で思えば、ちょっと実用的ではなく厳しいのでは、と思われるほどに窮屈。それでも家族で乗れるという憧れの乗用車なのです。

パワートレインは、空冷の360cc直列2気筒2ストロークエンジンと、シンクロメッシュ機構の3速MTの組み合わせで、駆動方式は当時としてはまだ珍しいFFが継承されました。

当時の日本は、まだ本格的なモータリーゼーションが起こっておらず、軽自動車とは言えど高級品、38万円という車両価格は、とても一般庶民の手には届かい贅沢品でした。

●スズライト・フロンテに続いたフロンテ360は大ヒット

1967年に発売され人気を博したフロンテ360。2気筒→3気筒エンジンとなり、駆動方式もRRに変更
1967年に発売され人気を博したフロンテ360。2気筒→3気筒エンジンとなり、駆動方式もRRに変更

その後1967年には、スズライトの名前が取れた「フロンテ360」がデビュー。こちらは新設計の乗用車モデルで、駆動方式はスズキがそれまで採用していたFFでなく、RR(リアエンジン・リアドライブ)でした。

空冷の360cc直列3気筒2ストロークエンジンと、軽量ボディの組み合わせで実現したRRの軽快な走りが人気を呼んで大ヒット。さらに、高性能スポーツバージョンのビートマシーン「フロンテSS360」は、最高出力が25PSから36PS(100PS/L)まで引き上げられ、最高速度は125km/h、0-400m加速は、なんと軽自動車初の20秒切りを達成しました。

小さな軽自動車でも、これだけ走れるということを実証して、フロンテ360は軽のモータースポーツの火付け役にもなったのです。


モータリゼーションの黎明期でもあり、スズライト・フロンテは、その後登場して人気となった「フロンテ360」にバトンタッチするつなぎ役のようなモデルでした。スズライト・フロンテ自身も第1回日本グランプリ400cc以下クラスで優勝するなどしており、軽自動車ブームに大きな影響を与えたことは間違いありません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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