日本最大級のカメラショー「CP+」でモーターショーの課題を再確認【週刊クルマのミライ】

■ロイヤリティの高いファンを生み出す意識が強い

生産終了品を展示するメーカーもあった。愛あるファンを増やすブランディングが感じられた。
生産終了品を展示するメーカーもあった。愛あるファンを増やすブランディングが感じられた

日本最大級のカメラショー「CP+(シーピープラス)」がパシフィコ横浜にて開催されました。

筆者はカメラを趣味にしているわけではないのですが、入場無料なおかつ4年ぶりのリアル開催ということもあって会場に足を運んでみたのです。

思えば、カメラという工業製品は日本のお家芸ともいえる状況で、今回のCP+においてもカメラ本体を作っているメーカーの大きなブースが並んでいました。

加えて、アフターパーツやアクセサリー類のメーカーがブースを構えるというショー会場の眺めは、規模は違えどモーターショーにも通じるところがあると感じたのでした。

ですが、カメラメーカーのスタンスは、自動車メーカーのそれとは微妙に温度感が違うようにも感じたのです。

一般ユーザー向けの商品としては、自動車よりも趣味性が強いせいかもしれませんが、メーカーの説明員の方が持つ自社製品への思いが強いという印象を受けました。

たとえば、某社でレンズ一体型デジカメについて伺うと、販売終了間近というのにサンプル品を用意しており、触らせてもらうことができました。生産終了で買えなくなることを嘆くと「カメラショップなどに市中在庫は残っていますし、中古でも入手できますよ」とアドバイスもしてくれました。

●「ジャパンモビリティショー」に生まれ変わって何が変わるか

東京モーターショーは2023年から「ジャパンモビリティショー」に進化することを発表済み。
東京モーターショーは2023年から「ジャパンモビリティショー」に進化することを発表済み

ひるがえって、モーターショーで自動車メーカーの説明員が「中古なら買えますよ」などと話をすることは考えづらいのも事実です。

総じて、カメラメーカーは顧客のロイヤリティを高めて、ユーザーをファンにしようという意識が強いと感じました。

自動車メーカーの顧客は大半が道具としてのクルマを求めているのは事実かもしれませんが、もっと愛を実感できるようなアピールをしていってもいいのかもしれません。

まもなく社長からは退任しますが、トヨタの豊田章男氏は常々「クルマは愛が付いて呼ばれる唯一の工業製品」といった発言をしています。しかし、筆者的にはCP+においてカメラメーカーのほうが愛を前面に押し出していると感じたのです。

そういえば、東京モーターショーは2023年から「ジャパンモビリティショー」に生まれ変わります。具体的にどのようなショーになるのか、まだわからないことも多数ですが、クルマだけでない移動体験全般を示すショーになるのでしょう。

●カスタマイズやアクセサリーは愛情を深くしてくれる

本文とは異なるが、筆者が気になったのは最大11.5mという長さの一脚「BiRod(バイロッド)」。専用の無線式電動雲台を使えばクルマの撮影でも幅が広がりそうだ。
本文とは異なるが、筆者が気になったのは最大11.5mという長さの一脚「BiRod(バイロッド)」。専用の無線式電動雲台を使えばクルマの撮影でも幅が広がりそうだ。

カーボンニュートラルは抗えないトレンドですし、持続可能な移動手段をどうやって確保していくのかということは社会的には注目すべきですが、個々のユーザーが愛を感じられるようなテーマでないかもしれません。

むしろ、クルマ趣味についてはドレスアップやチューニングといったカスタマイズに特化した、東京オートサロンのような伝統的なショーのほうが、ユーザーやオーナーのディープな愛が実感できるのも事実です。

だからといって、ジャパンモビリティショーが東京オートサロン的世界観を取り込む必要はないとは思います。それでも、モビリティショーではクルマを愛車として捉えたくなるような演出・仕掛けを期待したくなります。

たとえば、自動運転テクノロジーにしても、単に便利な移動手段というのではなく、AIとの対話が楽しめるとなれば、愛車を超えて相棒と呼べる存在になるかもしれません。

2023年10月26日(木)に開幕予定のジャパンモビリティショーが、愛車精神を感じられるショーになることを、大いに期待したいと思います。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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