ヤマハがタンザニアでバイク配送事業の実験を開始。アフリカ向け働くバイク「クラックス レヴ」の活躍やいかに?

■経済成長する東アフリカでのバイク配送サービス第2弾

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)のグループ会社「クーリメイト(CourieMate)」は、アフリカで事業を展開するスタートアップ企業「ワッシャ(WASSHA)」と、アフリカ東部タンザニアでのバイクを使ったラストマイルデリバリー事業化に向けた協業契約を締結したと発表。

ヤマハのクラックス レヴ
ヤマハのクラックス レヴ

ヤマハのアフリカ向け110ccバイク「クラックス レヴ(CRUX Rev)」を使用し、EC商品などの近距離デリバリー事業に関する実証実験を行っていることを明かにしました。

クーリメイトは、従来から、同じく東アフリカのウガンダでバイクを使ったデリバリーサービスを展開。今回は、新たにタンザニアでも事業を開始することで、現地でプロライダーなどを育成するなどの雇用創出や、最終的にバイクの需要拡大を目指すといいます。

●現地の小売店「キオスク」への配送サービス

今回ヤマハのクーリメイトが実証実験を行うタンザニアは、近隣のウガンダやケニアなどと共に、著しい経済成長を続けていることで注目されている、東アフリカの国です。

ヤマハによれば、現在のタンザニアは、ちょうど日本の経済成長期である1960年代〜1970年代くらいの経済規模だそうで、まだまだお金がない人も多いのだとか。でも、少子化で悩む今の日本と違い、10代や20代の若い世代が多いこともあり、今後さらなる経済成長が見込まれているといいます。

また、現地では、スマートフォンなどの携帯電話がかなり普及していて、ネットを使ったショッピングも増加。特に、ひげ剃りやクルマなどの洗車用品、懐中電灯など、便利グッズの人気が高いそうで、今回の実証実験は、そうしたEC商品の宅配サービスについて現地での可能性を探るというものです。

ウガンダでは、約100名ほどのプロライダーと契約しているという
ウガンダでは、約100名ほどのプロライダーと契約しているという

従来、クーリメイトは、これも前述の通り、すでにウガンダでバイク配送の事業を展開。ウガンダでは、顧客の自宅へ直接配送するサービスを実施していますが、タンザニアでは、別の方法を試すといいます。

それは、現地にある小売店「キオスク」を利用し、顧客が注文した商品をそこに届けるという方式。いわば、「コンビニ受け取り」のようなサービスです。

●お店で受け渡しする理由は?

なぜ、キオスクを利用するのか? それは、まだ現地にはちゃんとした住所がないため。日本であれば、「○○町○○丁目○○番」など、きちんと地域毎に番地まであります。ところが、東アフリカでは、住所がかなりざっくりとしていて、どこが顧客の自宅なのか、現地の人に案内してもらうなどでないと分からないのだそうです。

タンザニアのキオスク(写真は2019年当時)
タンザニアのキオスク(写真は2019年当時)

そこで、配送を効率化するために、利用するのがキオスク。しかも、今回協業するワッシャは、以前からアフリカ各地の電気がない地域などで、自社開発のLEDランタンをレンタルするサービスを行っており、その起点としてキオスクを利用。

ワッシャによれば、同社が事業を行っているタンザニア、ウガンダ、モザンビーク、コンゴ民主共和国の4ヵ国で、契約キオスク数は5000店舗以上(2023年2月現在)。

こちらはウガンダにあるキオスク。東アフリカでは各地にこうした小売店がある
こちらはウガンダにあるキオスク。東アフリカでは各地にこうした小売店がある

そのうちのタンザニアにある契約キオスクに荷物を届けることで、確実で効率的なデリバリーサービスを行うというのです。また、決済システムについても、ワッシャがすでに構築しているため、クーリメイトが新しく作る必要がないのもメリット。

ヤマハによれば、将来的には、「自宅配送」か「キオスク受け取り」かを選べるようにしたいとのことですが、まずはキオスク受け取りの実証実験を開始し、それが上手くいき事業が本格化すれば、サービス内容を拡充する方向性だそうです。

ちなみに、東アフリカでの宅配サービスは、代引き決済が主流。スマートフォンを使ったモバイルマネー決済も技術的には可能なのですが、アカウントにお金が入っていない人が多いそうで、おのずと商品を渡す際に現金をもらう代引き決済になるのだといいます。

●クラックス レヴってどんなバイク?

そんな現地のデリバリーサービスで活躍しているのが、ヤマハのクラックス レヴ。2017年に、ヤマハが初のアフリカ戦略モデルとして発表したバイクで、110cc・空冷4ストロークエンジンを搭載。

ヤマハのクラックス レヴ
ヤマハのクラックス レヴ

高い動力性能と優れた燃費性能を誇る独自の「ブルーコア(BLUE CORE)」エンジンは、インド向けに開発した「クラックス(CRUX)」用がベースで、燃費を約18%向上しているといいます。

また、タンデム時でも快適なフラットシートやボード型タンデムフットレストを採用。積載性に優れたリヤキャリアや高荷重に対応するサスペンションなども装備することで、高い実用性も誇るモデルです。

ヤマハでは、このモデルを使い、現地のライダーと契約して配送を依頼しています。そして、こうしたビジネスモデルを成功させることで、現地でプロライダーなどを増やすなど、雇用の創出を図りたいといいます。

タンザニアの中心地、ダルエスサラームでバイクのデリバリーサービスを行うライダーたち
タンザニアの中心地、ダルエスサラームでバイクのデリバリーサービスを行うライダーたち

さらに、それが結果的に、まだバイクが買えない人も多い東アフリカで、お金を持つ人を増やすことに繫がり、将来的に現地で数多くの「ヤマハ製バイク」が売れることも目指したいといいます。

なお、実証実験は2023年1月からすでに開始しており、6月までの半年間で行う予定。また、タンザニアでの事業が軌道に乗れば、次はケニアにも進出し、東アフリカの経済成長に貢献したいといいます。

こうした新たな試みにより、近い将来、数多くのヤマハ製バイクが、アフリカ大陸を縦横無尽に走る姿がみられるかもしれませんね。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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