■外観以上に変化したインテリアではシフトレバーが廃止された
スポーティセダンのベンチマークと言われているのが、BMW・3シリーズです。1975年に第1世代が登場して以降、40年以上支持され、世界販売累計1,500万台以上を達成したモデルです。
7代目となる現行型3シリーズは2019年1月に日本市場に導入されました。BMWのアイコンであるキドニーグリルは、従来の2分割されたデザインから1つのフレームで縁取られ、より立体的な造形となっています。
ホフマイスター・キンクと呼ばれているピラー形状は、Cピラーと一体化されたデザインとなり、サイドウィンドウの流線型が強調された伸びやかなスタイリングとなりました。
インテリアには、新型BMW 8シリーズから導入された新しい表示・操作コンセプト「BMW
Operating System 7.0」を採用した、BMWライブ・コックピットを全車に標準装着するなど先進的となっています。
安全装備では、当時、日本で初めての導入となる高性能3眼カメラを使用した最新の運転支援システムを採用。
この高性能3眼カメラ・システムは、長距離、中距離、周辺監視と、個々のカメラに役割を特化させることで、より正確なレーン・キーピング性能と、より離れた場所の危険予測や、広い視野での危険予測が可能となり、実用性をより求められるスポーツ・セダンに相応しい充実した機能となっています。
高い走行&安全性能を両立している3シリーズが2022年9月にマイナーチェンジを行い、改良後のモデルに試乗できましたので、インプレッションを紹介します。
今回のマイナーチェンジのポイントは内外装の変更です。外観デザインは最新のBMW言語を採用しアップデートしています。
デイタイム・ランニング・ライト機能を採用したLEDヘッドライトは、よりシャープな形状となりました。また、BMWのアイコンであるキドニーグリルは、ダブル・バーを採用、フロントバンパーとともにワイド化され、よりパワフルさを強調しています。
リアは、リアコンビネーションライトをより細く水平なラインとしました。またマフラーの出口径を90mmまたは100mmとすることで、パワフルな印象を強めています。
一方のインテリアは、優れた視認性と高い操作性を両立した12.3インチのメーター・パネルと、14.9インチのコントロール・ディスプレイを一体化させた最新のBMWカーブド・ディスプレイを採用しました。
インテリアで注目の変更点は、トランスミッションのシフト・レバーを廃止したことです。なお、シフト・レバーの廃止に伴い、パドル・シフトは全てのモデルに標準装備されました。
今回試乗したのは、PHVの330e Mスポーツ。車両本体価格は710万円となっています。
国からの補助金43万8000円が出ます、さらに、東京都在住で個人の場合は45万円の助成金が出ます。加えて、自動車重量税は免税、環境性能割は非課税となるので、320i Mスポーツよりも安く手に入れることができます。
●専用のシルバー加飾されたキドニーグリルは電動車らしいクリーンさを表現
試乗した330e Mスポーツは、キドニーグリルのダブル・バーがシルバー加飾されており、よりエレガントな印象を受けます。
また、ワイド化されたキドニーグリルとフロントバンパーの形状そして、デイタイム・ランニング・ライト機能により、1,825mmという数値以上のワイドボディを感じさせます。
2つのディスプレイを組み合わせたBMWカーブド・ディスプレイを採用したインテリアは、非常にクリーンでシンプルな印象です。
さらに、シフトレバーがなくなり物理的なスイッチが減少したことで、スッキリとしています。
330e Mスポーツに搭載されているパワートレインは、最高出力184ps・最大トルク300Nmを発生する2L直列4気筒ガソリンターボエンジンに、最高出力109ps・最大トルク250Nmを発生する電気モーターを組み合わせたPHVシステムです。
システム最高出力は292ps、最大トルク420Nmと、非常にパワフルながら、燃費性能はWLTCモードで13.4km/Lを実現しています。また、満充電時のEV走行可能距離は最大で62km。走行中にバッテリーを充電できるチャージモードも備えています。
充電ジャックは、左フロントフェンダーにある普通充電のみ。個人的にはPHVはエンジンで発電を行い、モーターを駆動させるエネルギーの地産地消ができるので、PHVは普通充電のみで構わないと思っています。
330e Mスポーツのボディサイズは、全長4,720mm×全幅1,825mm×全高1,445mmです。車両重量は1,820kg。同じ2Lターボエンジンを搭載した320i Mスポーツが1,550kgなので、270kg増となっています。
またトランクルームの容量は330e Mスポーツの375Lに対して、320i Mスポーツは480Lと、システムバッテリーの影響で105L減少しています。しかし、左右がえぐられており、ゴルフバッグが入るように工夫されているので、全く実用面ではスポイルされていません。
ピュアエンジン車の320iに比べて、車両重量が270kg重くなっているPHVの330e Mスポーツですが、システム最高出力292psのPHVシステムが生み出すパフォーマンスはダイナミックそのもの。優れたハンドリング性能やシャープな旋回性能において、車両重量増によるデメリットを感じるシーンは全くありませんでした。
330e Mスポーツは、0-100km/h加速は5.8秒という圧倒的な加速性能を発揮する一方で、スムーズかつ高い静粛性を両立したインテリジェンスな走行を可能とした二面性が特徴と言えるでしょう。
満充電時のEV走行可能距離は最大で62km。自宅に充電器を設置できる人ならば、駅や保育園などの送り迎えであれば、ガソリンエンジンを始動させることなく、用事を済ますことができます。
PHVのメリットを味わうためには、自宅に充電器を設置できるなどの条件がありますが、補助金などを利用すればピュアガソリン車の320iよりも割安で手に入る、というのは最高のメリットと言えるでしょう。
(文・写真:萩原 文博)